第6話

 三日後、しーちゃんの遺体が近所の沼で見つかった。


 近所の小学生が見つけたんだと聞いた。


 遺体発見現場の沼の中にはたくさんのオタマジャクシがいて、それがしーちゃんの肉をついばんで、しーちゃんにあいた穴の中にもオタマジャクシが入り込んで、とにかくしーちゃんの遺体はハスの果実みたいに、ウマバエに寄生されたサルみたいに、オタマジャクシの巣になっていたらしい。


 昔学校でゴミ拾いをしていた時、干上がった用水路に転がっていたジュースの空き缶を拾ったことがある。

 なんだか妙に重くて、水が入っているのだと思ってひっくり返すとその空き缶からは白く湯だったオタマジャクシが腐敗臭と一緒にぼどぼどと大量に出てきて失神したことを思い出した。


 しーちゃんのおばさんとおじさんも行方不明になってしまったと聞いたけど、どういうわけかニュースにはならなかった。そのうち学校でしーちゃんやその家族の話をすることが禁止された。



 あれから一年が経過し、梅雨がきた。

もう学校でも誰もしーちゃんの話をしない。

私くらいは覚えていてあげたいとおもって、しーちゃんの命日に遺体発見現場へお花を供えにいった。



 カエルがたくさん鳴いていた。

 コロコロ、げーげー。

 コロコロ、げーげー。

 孵っ、たーーーーーーーーー。

 孵っ、たーーーーーーーーー。



「あ、しーちゃん」


「あ、しーちゃん」


「あー、しーちゃん!」


「なあんだ!」


「なーんだ」


「そういう事か」


「なあんだ!」



 気が付くと私は沼の中に入っていた。

 私はようやくしーちゃんに何が起こったのかを理解した。


理解した。

理解した。

理解した。


気が付くと息継ぎもせずただひたすらに沼の中でさけんでいた。


なーんだ。そういうことか。なーんだ。



 

オタマジャクシが私の腕をついばんでいた。

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おいしいタピオカ物語 猫文字 隼人 @neko_atlachnacha

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