読了。たしかな読後感。
一行で表すなら「往年の名作ノベルゲームを息付く間もなく見届けきった」感覚です!
(以降感想となりますが、ネタバレは極力回避します)
・前半
平凡な研究員を思わせる社会人主人公の日々に始まるも、「政府」からのコンタクトによって、徐々にウラへと踏み入れていくサスペンス風味の導入。
日常に異常が取って代わる展開と、もはや市井の人には戻れぬ共犯者となる運びが、いずれも秀逸でした! 現実と不可思議を併せて練られたSF技術要素に基づくクローン体(後のヒロインたち)の出自と運命も、人間の罪と業にまみれたもので主人公たちに否応なく罪と業を押し付けるもので——。主人公の物語はここで一度終わりです。むしろ一度終わることが重要だと思いました。ですよね、澱木博士……。
個人的にはこのパート。後編読了後に、答え合わせのように二度読みしてからが「本領」かと感じました(というかお伝えする感想文を考えながら今感じています)。そういう意味でも名作ノベルゲー味が効いてます!
・後半
成長した息子が、かの「少女たち」と出会い「異形」と対峙する……夏のひととき。と見せかけて回収パート。前半で表現された罪と業が効いてきます。
(息子を想ってのこととはいえ)父の踏み入れた負の物語に、ほかならぬ命を繋いだ息子がケリをつける構図は……沁みます。正しさや過ちの是非はともかく、間違いなく戦いの意味はあった。そして、とりとめのない普通が訪れる。そういう意味でも名作ノベルゲーの系譜だと思いました!
・結論
——タイトルに偽りなし。紛うことなき『二重螺旋』でした!
(※完全に余談ですが、公募勢としてはこのクラスの作品と競わなくてはならないのか……。と戦々恐々です。この辺りの可視化は、電撃小説大賞がカクヨム公募開放に踏み切った最大のメリットかと思いました)