第35話 外伝B 執事君達へのヒロインちゃん達の暴走を止めてね
ロレンツィオ君~、そんな嫌~な顔しないでよ。ロレンツィオ君じゃなかったね、本来の君の名は・・・でも、ロレンツィオ君というのがなじんじゃってさ~、君もそうだろう?前回、あんなに悲しませちゃって悪かったと思っているよ、本当に。でも、そういう世界ができちゃったんだから仕方がないんだよ~。だから、今回も頼むから・・・、君しか適任者が見つからなかったんだ。前々回以上に、あの3人とラブラブ生活できるようにするからさ~、お願いするね。じゃあ、頼むよ。
「君!君が探している、ご主人様はここにいるよ。」
と声をかけたのは、トスカーナ王国王太子、ロレンツィオ君だよー。
「ヘルマン!どこに行っていたのよー?捜したのよ!」
スフォルツァ公爵令嬢オルシーナちゃんは、ヘルマン、彼女の執事君に泣きながら、飛びついたんだ。おいおい、彼女~、婚約者のロレンツィオ殿下の前だってこと、忘れていない?ヘルマン君も、“迷子になっていたのはお嬢様でしょう?”なんて顔をする前に、やることがあるでしょう?
「オルシーナ嬢は、君がいないと、とても心配していたんだよ。」
ロレンツィオ君は、優しく語りかけた。その時になってようやくわかったようだ、執事君は。
「こ、これは王太子殿下!あ、ありがとうございます!」
と平身低頭。
「よいから…入学パーティーの会場に、オルシーナ嬢をお連れしてくれ。よろしく頼むよ、なんせ私の大切な婚約者なのだから。」
「?」
なに、その目?こういうことをロレンツィオ君を求めて、頑張っているつもりなんでしょう、君は。まあ、しかたがないか、こうもあっさり…。
とにかく、拗ねるオルシーナちゃんを連れて、執事のヘルマン君はロレンツィオ君の前から消えたんだ。
ご苦労様、ロレンツィオ君。はい、次だよ、忙しいんだから。
と言うわけで、3人の令嬢、オルシーナちゃん、イッポリートちゃん、ヴァーナちゃんだよ、をそれぞれの執事君に引き渡したロレンツィオ君は、後の2人は、弟のジュリアーノ君と側近のボルジア兄妹に任せたけどね、学院の別棟の建物内に入ったんだ。彼の臣下が、
「お待ちになっておられます。」
彼の側近の1人が言って、彼を一室に案内した。
そこには、賢者のミケランジェロ君とハイエルフの騎士のマリオ君、副神官のカルダノ君が座っていた。席から跪こうと立ち上がりかけた3人を、
「今日は無礼講だから…」
と言って押しとどめて、勇者様サルヴィアちゃん、ハイエルフの聖騎士マリエッタちゃん、聖女トルナちゃんの近況を尋ねて、マリエッタちゃんは、主のベアトリーチェちゃんの代理で来ているんだ、彼女らのいる部屋に入っていった。それもしばし歓談という程度に終わり、彼女らを待つ3人を呼んで、彼らとともに帰らせた。
「さすがに、自分の…と一緒だと目移りしないね。ご苦労様、ロレンツィオ君。」
と僕が声をかけてあげたのに、ロレンツィオ君ときたら、実に嫌な顔で振り返って、
「毎日、彼女ら、彼らの面倒は見切れませんよ。」
だって。
「大丈夫い!イベント、心細い時に助けてくれたとかがない限り、むやみに惚れないよ、安心してよ。そのイベントになったら、教えてあげるからさ。」
「まあ…頼みますよ。」
彼は、大きなため息をついて…、全く失礼だよ!
今回は、彼女らの執事君、賢者君、従者君達が異世界転生と信じていて、自分が読んだ小説のざまあされる悪役令嬢とかが推しで、彼女を助けようとするんだけど、彼ら全員が、これまたヒロイン達全員に愛されてしまう、その無理が世界を崩壊させてしまうんだ。だから、主人公?君達は、推しだけと相思相愛にすることなんだ、今回のミッションは。そのためにはまず混乱が生じないように、執事君達が他のヒロイン達に出会っちゃうことを阻止することが必要なんだ。六人がともに六人と6又股していたらどうなる?想像しただけで混乱してくるし、それぞれの組み合わせで成り上がろう、結ばれようとする、ハーレム化しようと動くんだ、この世界は。僕の頭同様に崩壊して当然、だからそれを阻止し、一夫一婦で結ばせて、成り上がりもなしにする。6夫婦が成り上がりの道を進んでも、混乱と無理が目いっぱいだからね。
前回も、この世界ではない世界を担当する幼なじみの女神に泣き疲れて、ロレンツィオ君にまたまた頼んだんだ。でもそこでは、展開が速すぎて、ロレンツィオ君がその世界に降り立った時には、ベアトリーチェちゃんもラウラちゃんもクロランドちゃんも、ヒロイン達の暴走で殺されていたんだ。世界は崩壊寸前、それを強引にロレンツィオ君が超ド級チート能力で救ったんだよ。ロレンツィオ君という存在でないと駄目なんだよ、彼、存在できないほどの屑、性格破綻者のロレンツィオ君という存在が核になっているからね。
寛大な措置は不可能。オルシーナちゃん、イッポリートちゃん、ヴァーナちゃんは得意の絶頂から引きずり下ろされて、自分達の夫の真実を見せつけられて、処刑されたんだ。一瞬での死、それが彼ができた精一杯の寛大な措置だったんだよ。
それでも、マリエッタちゃん、サルヴィアちゃん、トルナちゃんは、奴隷とはいえ、彼の傍で寵愛されるように生かされたんだ。
「殺して下さい!」
と懇願さえしたんだよ、3人とも。もちろん、虐待された訳ではなかったんだよ。傍目から見れば、大切にされた、という感じですらあったんだけどね。ロレンツィオ君は、ため息をついて言ったんだ。
「お前達は、私の愛する者を奪った。私は、お前達から全てを奪った。奪われた者同士、お互いの傷を舐めあってはいけないか?」
3人は涙目になって、
「ロレンツィオ様!」
と抱きついたんだ。
皆、死ぬ間際に、
「どうして、愛し合うものとして、生まれなかったのでしょうか?」
と言ったんだ。
「後世に、また出会ったら、告白してくれ、愛していると。そうしたら、私はお前を妻とし、愛し合おう。」
「はい、きっと。」
なんて・・・。
君も甘いというか、人がいいというか、悪党というか・・・だね。え?僕のせい?違うよ、こういう世界が生まれちゃうのがいけないんだよ。
「ヘルマン。ルイジ。コシモ。これまでの功績により、子爵の位を授ける。」
ロレンツィオ君は、オルシーナちゃん、イッポリートちゃん、ヴァーナちゃんの執事君達への叙任式を執り行った。それぞれ主人を守り、彼女達とトスカーナ王国その他を害する者達を倒すことに貢献したことに対するもの。これで、彼女達の親達に、彼女達と執事君達との結婚を了承させたんだよ、ロレンツィオ君は。オルシーナちゃんの場合などは、将来の王妃の座を捨てるわけだから、公爵はごねてごねて・・・でも娘は泣いて、先手を打ってロレンツィオ君に婚約破棄を宣言しちゃってどうしようもなく・・・彼女と自分が責任をとらなければならない羽目になりそうだったので、ロレンツィオ君の
「相思相愛の者を引き裂くのは、父としても、国王としても恥ではないかね?」
の言葉でようやく諦めたんだ。
「全く、相思相愛に気が付かないとは・・・。」
「ここまでお膳立てしてもらって・・・。」
「本当に、6人ともうっかり屋さんですわ。」
マリエッタちゃん、サルヴィアちゃん、トルナちゃんは、それを見ながらため息をついていた。その場に、ロレンツィオ君のそばにいて見聞きしていたんだ。
「マリエッタ。あなたもですよ、自分の気持ちもラファエロの気持ちもわからないで。」
「勇者も、あれだけの強さだけでない洞察力を持っているのに、自分のこと、賢者ミケランジェロのことがわからないとはな。」
「聖女様の気持ちも、マルコの気持ちも、周囲の誰もが分かっていて、やきもきしているというのに、当人達だけがわからないでいるとは・・・。」
とベアトリーチェ女王陛下、ラウラ魔王様、クロランド聖騎士殿が指摘したんだ。
「え?」
「は?」
「へ?」
はマリエッタちゃん、サルヴィアちゃん、トルナちゃん。すぐに彼女達は真っ赤になり・・・。
これで、ヒロイン達は無事に、彼女らを前世のゲームで推していたと信じている、思い込んでいる執事君達と結ばれてめでたし、めでたし。
「それで~。」
ともじもじし始めた、ベアトリーチェ女王陛下、ラウラ魔王様、クロランド聖騎士殿。もちろん、全てが終わったけど、周囲にはまだ多くの人々がいる中でだよ。彼の耳元で、
「私、嫁に来る準備を終えてきましたのよ。」
「それは我も同じじゃ。いや、嫁にさせてもらうぞ。」
「カリフ、スレイマン陛下より、頑張れ、幸せになと送り出されてきました。」
と囁いたんだ。ロレンツィオ君も鼻の下を伸ばしてー!頷いて、あ~あ、巧みに4人で別室にー・・・!約束どおり、前より長く、そしてもっと熱々のラブラブ生活を与えてあげるから、幸せにね。もうこれでお仕舞だから・・・本当に…多分・・・。
ロレンツィオ君、またですか、という顔しない。大体今回は、マリエッタちゃん、サルヴィアちゃん、トルナちゃんに前々回に言った言葉から生まれちゃった世界なんだから君にも責任の一端があると思わない?・・・。だからなんとかしてよね。頼むよ。もちろん、選択の余地なしだからね。あ、それから、ベアトリーチェちゃん、ラウラちゃん、クロランドちゃん、それから後三人は出てこない世界だけどね。了解してね。ごめんね~。じゃあ、頼んだよ~。
ヒロイン達の暴走を止めてね、頼んだよ!と最高神は頼んだ。 確門潜竜 @anjyutiti
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