第34話 外伝A③ 暴走したヒロイン達は

 6人のヒロイン達は、今回はどんなに残酷な取り扱いをしても、八つ裂きにして処刑してもよかったんだ。ぼくも、彼に、ロレンツィオ君に彼女達を幸福にする必要はない、どんなことをしても、皆殺しにしてもいいよ、と明言したからね。でも、彼は、そうはしなかった。


「ロレンツィオ様、陛下。今宵は、本当に私だけと?」

「そのために、今ここにいるんだ。ベアトリーチェ。」

 二人は、ハイエルフ女王国の王宮の一室、つまりベアトリーチェちゃんの寝室だよ~ん。結果として、周辺のハイエルフ王国の自滅等により、ハイエルフはベアトリーチェちゃんの下に統一されたんだ。他のハイエルフ部族や人間・ハイエルフ・ダークエルフ三重王国と和平協定を締結して、緩やかなエルフ族(ハーフエルフ、人間も含むといっても、こちらの方が多いくらいなんだけど)の連合体ができたんだ、トスカーナ王国、いや勇者や魔王をはるかにしのぐ超ド級チート勇者ロレンツィオ君の統治するトスカーナ王国の後ろ盾があったればこそなんだけどね。その第三回会合、全ての代表を集めた会議、があってロレンツィオ君も来賓として出席。その夜・・・あ~あベアトリーチェちゃん、そんなに煽情的な夜着で、自分が選んで身に着けておいて、今頃赤くなっちゃって・・・でもとっても可愛いよ。ロレンツィオ君も鼻をすっかり伸ばして・・・。すぐに、二人は長い長い口付けを始めて・・・。この夜は、ロレンツィオ君を独り占めにしたベアトリーチェちゃんは、何度も何度もベッドの上で・・・。朝日が差し込む中で、ベットの上で幸せそうに二人は、抱きしめ合って・・・目を覚ますと・・・あ~あ、また始めちゃった~、ベアトリーチェちゃん、朝からそんな喘ぎ声をだしちゃって~、この淫乱女王様~!


 ロレンツィオ君は一人、それで3人の恋人を守り、国を救い、海賊・海の魔王殲滅をほとんど同時並行的に進められたのは、3人の居るべき場所と彼のいる場所を転移空間で結びつけたからなんだ。いくつもの場所から、ベアトリーチェちゃん、ラウラちゃん、クロランドちゃんの寝室から4人の共通の部屋にいったり、そこから4人で戦いの場、交渉の場などに移動したんだ。少なくない時間を4人で過ごすことが多かったけど、4人にはそれぞれの仕事があるんだ。どうしてもと言う時に、3人がそれぞれロレンツィオ君を独り占めできるんだ、数日後、魔界の総議会後にロレンツィオ君はラウラちゃんに独り占めされるんだ。

 4人はこうして、前世での思いをたっぷりと楽しむことになったんだ、みんな僕のおかげだよ、感謝してね。


 それで、6人のヒロインはというと…。

 トスカーナ王国王都郊外にある元トスカーナ王国国王の別邸、前国王まで使用していた、国王の別邸でも一番大きかった、にオルシーナちゃんは幽閉されていたんだ。彼女だけではなく、イッポリートちゃんも、ヴァーナちゃんも一緒だ。彼女達の執事君、侍女ちゃん達もいるし、彼女達を助ける男女の使用人達もいる。邸内での行動は自由だし、必要なもの、望むものは、大抵は手に入った。オルシーナちゃん、イッポリートちゃんは実家から、ヴァーナちゃんの場合は、元婚約者と義妹の夫婦からの援助も多いけど、ロレンツィオ君からもかなり多いんだ。

 ロレンツィオ君に敗れて、惨めな姿で、捕虜の身で引き出され、自分が頼りにした夫?達の正体を目にして、自分達の執事、侍女に彼らがした仕打ちを知りショックは、3人とも大きかった。

「私は、陛下をあの様に思い、あの様なことをしたのか…、今になって見ると、全く分かりません。でも、私のしたことを思えば…あまりに、このような寛大なご措置と感謝しても仕切れないと思っています。」

「私も、オルシーナ様と同じですわ。」

「私も…。悪役令嬢を極めるなどと、訳も分からないことをと後悔するばかりです。婚約者や義妹に迷惑をかけ、自業自得ではありますが…。」

 美人さん達だけど、すっかりやつれた、精神的にだけど、感じだった、ロレンツィオ君が様子を見に訪れて、3人とお茶を飲みながら、今はどうだ、と尋ねた時の言葉だったんだ。

 時々、ロレンツィオ君は3人のところを訪れていたんだ。彼女達はどう繕っても、赦すことはできなかったし、ロレンツィオ君も望んでいなかった。それでも、このような措置や心配りをするだけでも、彼は甘々だね、と思うよ。あ、褒めているんだからね。

 

「お前達には苦労をかけている。ありがたく思うぞ。お前達の主人達の様子はどうだ?」

とロレンツィオ君が彼女達の執事君、侍女ちゃん達を前にして頭を下げながら言うと、彼ら、彼女達は慌てて、

「お嬢様は、陛下のご配慮に感謝されております。」

「お嬢様はお元気です。」

「私達への待遇も恐れ多いくらいに、満足なものです。」

「陛下がおいでになると、お嬢様も明るくなられ、元気になられます。」

「勇者様方とも、楽しくお話なされ、次に来られるのを楽しみにされております。」

 彼女らは、彼ら、彼女らが自分の夫?から受けた仕打ちを知り、それでも彼女への忠誠を失わなかったことに涙を流して謝ったんだ。彼女らには、もう切っても切れない絆ができているんだ、ロレンツィオ君。彼は、

「これからも、彼女らのことは頼む。できるだけのことはするから、いつでも申し出るように。」

と言って三人を連れて去っていったんだ。

 奴隷でも外で彼とともに生きられる彼女らと奴隷ではなく、ずっと豊かな暮らしをしているものの外に出られない彼女らとの間には、嫉妬も、蔑みもあるけど互いへの同情も共感もあるんだ。それらがないまぜになって、話が弾んでいるんだ。

 その彼女らも、それから数年を経ずして次々に世を去ったんだ。ロレンツィオ君の手を握り締めてね。奴隷にされた3人は、さらに、抱きしめてもらいながら。


「のう、お前は誰を一番愛した?」

「ラウラ、もちろんお前だよ。」

「あの二人にも同じことを言ったのであろう、この嘘つきめ。だが、うれしいぞ。そう言ってくれて。」

 ベッドの上で横たわり、生命力がどんどん少なくなっているのがわかるロレンツィオ君の右手を両手で握り締め、ほおずりするラウラちゃん。

 長命、信じられているほど長くはないけど、だけどひ弱なエルフのベアトリーチェちゃんが一番早く亡くなったのが、3年前。そして、1年前にクロランドちゃんが亡くなったんだ。ベアトリーチェちゃんがまだ20代に見えるのはハイエルフだけど、クロランドちゃんも、まだ30代前にみえるほどだったんだけど。僕がやった?究極的には、そう言えなくはないけど、故意ではないし、直接関与してないよ、本当だよ。

 そして、ロレンツィオ君は48歳になってしばらくして死の床についたんだ。これは僕が決めたことだ、彼も納得の上だよ。

「あの3人にも愛していると言ったのだろう?」

「言っていない。愛したのは、お前達3人だけだよ。お前達3人を苦しめた奴らを凌辱してやっただけだ。」

「その割には、大切にしてやって、愛でていたではないか?あ奴らは、お前に抱かれて、お前のそばにいることを嬉しく思っていたぞ。」

 ラウラちゃん、少し執拗すぎるよ。

「まあ、弱い者虐めは性に合わないからな。奴隷として大切にしただけだ。」

「まあよい。もう一度だけ訊くぞ。誰を一番愛しておった?正直に言うのだ、今度こそ。」

 じっと、何かを求める様に、それでいて厳しい表情で上から、彼女は見つめた。

 ロレンツィオ君は穏やかな表情を変えることなく、

「ラウラ。お前を一番愛していたよ、当たり前じゃないか。」

「お前という奴は、本当に大噓つきだな。だが、そう言ってくれてうれしいぞ。」

 涙を流しながら、彼女は彼を上から抱きしめた。その翌日、ロレンツィオ君の生命の火を僕は吹き消したんだ。元気だったラウラちゃんは、1カ月もたたないうちに、亡くなったんだ。

 この世界は、普通の世界のように、安定して時間を進めることができるようになったいた。ありがとうロレンツィオ君、よくやった、僕。


 

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