暗殺犬、子育てをする〜子供を拾ったので育てて立派な暗殺者に──え?聖女

すゝ゛め

暗殺犬子共を育てる。


俺は孤高の暗殺者(犬)だ。名前は特に決まってはない。俺は依頼されたことを決して失敗しない。

たとえそれが一国の王の暗殺だとしてもだ。今日も一人俺の手(前足)でこの世を去っていった。そして俺は帰路についた。


───えぇえん!、えぇえん!


何か人の泣き声が聞こえてくるが、俺はさっさと帰ってこの毛皮についた血の匂いを落としたいので、無視をすることにした。


───えぇえん!えぇえん!


それにしてもうるさい。どこから聞こえてくるのだろうか?いっそ殺して黙らせてやろうか?いいや俺は依頼以外では殺しはしない。そう決めたんだ。


───えぇえん!えぇ──


うるさいと思って歩き続けていたら、突然泣き声が止まった。


なぜ急に止まったんだ?親が来たのか、はたまたもう殺されたのか?急に心配になってきた。様子を見に行くだけだから。

泣き声がした方に走って行くと、そこには小さな子供がいた。少し赤みがかった白髪で瞳はきれいな朱色だった。なんで泣き声が止まったのかは来たらすぐにわかった。


寝てる。多分泣きつかれて眠ってしまったのだろう。心配して損した。帰ろ


帰ろうとすると何者かにしっぽを掴まれた。瞬時に後ろを振り返ると、さっきの子供が手でがっしりとしっぽを掴んでいた。


離せ!俺は早く家に帰って血を洗い流したいんだ。離せ!


子供がうるうるした目でこちらを見ている。


なんだその目は、いいか俺は帰るからな、ついてくるなよ!


子供の手を振りほどき、走って家まで帰った。


流石に全力で走ったからついてはこれまい。お前の負けだ子供


前を見ると平然としている子供がいた。


なんでお前が…?まさかお前俺の背中に乗ってやがったな、なんか重いと思ったんだ…


俺はいつもはこんなミスはしない。どうしたんだ俺は


子供を見るとまたうるうるした目でこちらを見ていた。


もういい勝手にしろ!


と言い(吠えただけ)家の中に入った。

………

……

俺の家は空き家だ。でも空き家と言ってもかなり設備が整っていて水は出るし(水道管に穴を開けただけ)かなり部屋もきれいだ。

火は魔法で出せるし、食料は狩りをすればいつでも手に入る。だが暗いのが唯一の欠点だ。


シャワー(水道管の穴)で血を洗い流し、昨日狩ったケンタロスの肉を火魔法を使って焼いて、3週間くらい前に暗殺したやつが持っていたなんか塩っぱいやつ(塩)となんかくしゃみ出るやつ(胡椒)をかけてケンタロスのステーキを作った。我ながら美味そうに作れた。

早速食べようとすると、子供がキラキラした目でこちらを見ていることに気がついた。


どうした?これがほしいのか?


そう言うと子供は首を縦にふった。


少しだけだぞ少しだけ…


少し(4分の1)をあげると子供はステーキにかぶりついた。


よく噛んで食べろよ


自分もステーキにかぶりついた。

何という食感と香り………

何これまっっっず……肉硬いしくっさいし……

子供を見ると子供も肉が噛み切れないようだった。

流石に何も食べれないのは可愛そうなので、作り置きしておいた茹でクラーケンをあげた。これは美味しそうに食べていた。自分は残っていたケンタロスのステーキを食べきった。ほぼ拷問だろこれ…


真っ暗になって来たので寝ることにした。ここらへんは猛毒を持った魔獣が出るが大した問題では──忘れてたこいついるんだったわ。

俺には猛毒無効があるが、こいつが持っているとは思えない。どうするか……

とりあえず猛毒無効を持っていた食獣植物を仕留めたときに採れた葉っぱで子供をぐるぐる巻にして、毛皮の中に押し込んだ。


───翌朝

今日も雨が降っている。子供は顔が腫れている。

どうする?どうする?医者は?だめだあそこの医院長殺してからなんか警戒が強くなったから俺は入れないだろう。

とりあえず応急措置で巻いていた葉っぱを食べされたが、腫れは止まったが、治ってはいない。

街に行ってポーションを買うのは?だめだ街には猛毒消しポーションなんて高位のポーションは売っていない。

教会は?あそこなら俺は入れなくてもこいつだけなら入れるかもしれない。

でもこいつを奪われかねない……

なんで俺はこいつが奪われることを恐れている?それでいいじゃないか、あそこは孤児院も兼ねている。教会に押し付けることができるのに…

毒が回ってきているのか、子供の顔が徐々に青くなっている。時間かないので教会に行くことにした。こいつを背中に乗せて落とさないように走った。

………

……

教会につくと、修道女が庭の掃除をしている様だった。


「なんですか!?この犬、急に吠えて」


おいそこの修道女!こいつをなんとかしろ


「うるさ──あれ?背中に女の子が、この子猛毒になってる!早く状態異常回復魔法を」


修道女がなんか唱えると、子供から猛毒が消えた。


「この子を保護したほうが─」


修道女がなにか言って子供に手を伸ばして来たので甘噛をしておいた。こいつは俺が育てると決めたんだ。


「いったい!この犬め!」


修道女がなんか言っていたが、素早く子供を背中に乗せて家に帰った。

………

……

家に帰るとこいつにシャワーを浴びさせた。ものすごく臭かったからだ。昨日は疲れていたのでそんなに気にならなかったが、今嗅ぐと尋常じゃないほど臭かった。(本当はさほど臭くはないのですが、人より圧倒的に嗅覚が優れているため臭く感じています)


シャワーを浴びせるとましにはなったが、まだ臭かったもうもとからの体臭だと思うことにした。


朝飯の時間になったので、ワイルドボアの串焼きを作ることにした。


材料

ワイルドボアの肉  100グラムぐらい

食獣植物の葉    2枚

なんか塩っぱいやつ 少々

なんかくしゃみ出るやつ 少々

昔暗殺したやつが持ってた竹串  二本


材料は以上だ。

とりあえずいい感じに切って、いい感じに竹串に刺して、いい感じに葉を刺して、いい感じに炙ったら完成。

ワイルドボアはあまり強くないのに癖がなく脂がのっていてかなり美味しい(彼の基準)なぜ人間はワイルドボアを家畜にしないのだろうか?


2セット作って、一つは子供に一つは自分で食べた。やはりワイルドボアは美味しかった。


少しうとうとしていると、暗殺ギルドに行く時間になったので、用意をして家を出ようとすると、子供にまた足を掴まれてしまった。


どうした?また連れてけなんて言うなよ


「ぃっ…しょに…行く」


しゃべっっったーーー。

いや、何言ってるかはわからないが大体顔を見たらわかる。

多分こいつはお腹が空いているのだろう。食いしん坊だな

え?違う?じゃあやっぱり一緒に行きたいのか?


そう言うとこいつは首を縦にふった。


(お届け物でーす)


やっと来たか。ギルドマスターが変わってから少し届くのが遅くなっていないか?


届いたのはギルドハウスへの転送陣だ。魔力を込めると起動する。

連れがいるときは確か一部に触れておけばよかったはずだ。


魔力を流し込むと転送陣は怪しげに光り、一瞬目の前が真っ暗になって視界が戻ると、ギルドハウスについていた。


(お!来たか犬ころ!そっちは連れか?お前もついに子供が…)


(うるさいぞ小僧、こいつは拾ったんだ。後継者にしようと思ってな)


この小僧がギルドマスターだ。馬鹿だ以上

ちなみにいま話してたのは魔語と言う。魔物の共通語だ。


(お前さぁ…こいつじゃなくてちゃんと名前つけてやれよ)


(そういえばそうだな、マイなんてどうだろうか)


(だめだね全然だめ。キラキラしてない。)


(じゃあお主はなんかいい案はあるのか?)


(いやー俺は親じゃないし)


ぺちゃくちゃおしゃべりしていると他のものも集まり集会が始ま──


(あらかわいい。この子どうしたの魔犬?)


(いやこの子は他の人の連れでしょ。あの老犬が子供を連れてくるわけがないでしょう)


(でもギルマスがいってたよ)


(あいつは馬鹿だから)


(お前ら言わせておけば───)


集会が始まらない。こいつが人気なのはいいことだが、集会が始まらないのは困る。やはり連れてこないほうが良かったか?


(ねぇ?魔犬?この子の名前はなんていうの?)


(名前はまだ決まっていないんだ。ていうか早く集会始めない?)


(それもそうだな、じゃあ集会を始めよう。今回の議題はこの子の名前だ)


(真面目にやれ!)


結局最後まで真面目な話し合いはなく、こいつの名前を決めることになり結局マイになった。

集会(名前決め)を終えると小僧(ギルドマスター)に呼び出された。


(お前に依頼がある。)


(珍しいな。俺個人への依頼なんて)


(そうだな。で依頼なんだが────────)


一通り聞いたところ、東の国にあるイヨと言う都市の領主を暗殺しろと言うものだった。非常に簡単な依頼だ。


(わかった。報酬は?)


(ミスリルのインゴット3つだ。)


(了解した)


依頼を受けて、転送陣で家に帰った。

もう暗くなっていたので、さっと作れる薬草サラダを作り、就寝した。今日は獣対策でこっそりサラダに猛毒無効ポーションを入れていたので、大丈夫なはずだ。


────翌朝


俺はマイのステータスを鑑定を使って見ていた。


個体名 マイ 種族 ヒューマン

職業 なし

体力 1200

筋力 45

耐久 70

魔力 740

速度 67

適正 火 水 樹 光 闇 

スキル

猛毒無効 恐怖耐性 全属性耐性 聴力◎ 視力◎ 嗅覚◎ 


異常に魔力の数値が高い。魔力は数値が高いほど高位の魔法が使え、威力も上がる。そして猛毒無効を持っている。ポーションを与えたら何故か持っていた。

比較に俺のステータスは


個体名 なし 種族 魔犬

職業 暗殺者

体力 6700

筋力 890 +200(職業補正)

耐久 1240

魔力 240

速度 3600

適正 火 闇

スキル

状態異常無効 恐怖無効 精神魔法無効 属性魔法無効 腐食無効 即死無効 爆破無効 爆風無効 打撃耐性 斬撃耐性 夜目◎ 聴力◎ 視力◎ 嗅覚◎ 牙◎ 放電 暗黒 骸操術 炎操術 闇操術 空歩

ユニークスキル

闇を司るもの

夜または暗闇にいると全ステータスが上昇する。また闇魔法を使うとあたりが少し暗くなる。闇魔法の威力が上がる。


比べると全体的には俺のほうが上だが魔法に関しては、マイのほうが上手だろう。

ちなみに50を超えると火が出る。水が出るぐらいで100を超えると初級の攻撃魔法が使える。300を超えると中級、500を超えると上級、1000を超えると魔法が作れるといった工合だ。

それはそうとマイには言葉を覚えさせる必要があるだろう。暗殺者として過ごしていくには魔語は必須だろう。人間の言葉はいずれ自然に覚えるだろう。


この世界では本を読むことでスキルや言語を覚えることもできる。

家に置いてある本では魔語を完全に覚えることはできないだろう。

確か次の依頼では領主の館に侵入して暗殺する依頼だったので、館には書庫ぐらいあるだろう少しくすねてもバレまい。

そうと決まったらすぐに出発だ。ん?なんだってマイ?ついてきたいのか?。流石に連れて行くのはちょっとなー


マイが期待の眼差しで小チラを見ている。


仕方ないな…じっとしてるんだぞ


マイは力強く首を縦にふった。


なんか俺の言葉理解してない?人間からしたら吠えてるようにしか聞こえないとおもうんだが…

考えても仕方ない。転移で移動するとしよう。

マイの肩に手を置き、転移魔法を発動する。スクロールで発動しているがなかなか起動が早いので毎回ギルドハウスからくすねている。

転移魔法が起動すると目の前が真っ暗になり、視界が開けると領主の館の近くの森に転移したつもりがその遥か上空に転移してしまった。


は?なんで落ちてるんだ?しっかりと森に転移をするようにしたはず……あ!よく見たらこのスクロール期限が切れてやがる!


スクロールはその属性に適正がない人でもその魔法が使えるが、期限がありそれまでに使わないと誤作動を起こしたりすることがある。


そういえばマイは!マイはどこに?!


マイはなんかの魔法を発動させゆっくりと落下していた。


なんの魔法だよそれ!!どうする、どうすれば……そういえば空歩使えるの忘れてたわ


空歩とはスキルの一種であり、短時間だが空中を歩くことができるのだ。


空歩を使い安全に着地して、あまりにもマイが落ちてくるのが遅いのでスクロールを使って魔法解除パーティクルキャンセル(期限は切れていない)を使い強制的にマイを自由落下させ毛皮で受け止めた。


音が少し大きかったのか館の兵士がこちらに集まってきたが、すぐに闇魔法で気配を消した。

………

……

館の前まできた。ここから慎重に侵入を───


「ブレイスメテオ」


マイがなにかを話した次の瞬間、空から炎をまとった隕石が館に向けて降ってきた。

い、いんせき?!


ま、マイ何をした?!


後々わかったことだが、この魔法はマイがギルドハウスでギルドメンバーに教わったらしい。この魔法はブレイスメテオ…火炎魔法の上級魔法だ。なんてこと教えてるんだあいつらは。


館は盛大に燃え盛りもちろんのことだが領主は焼死体で見つかった。館は潰れた(物理)


どんな形でも領主を暗殺?できたことに変わりはないので、報酬はもらえた。半分だけだったが、代わりに魔語を完全に習得できる本をもらえた。

………

……

家に帰るとマイにその本を渡してすぐに覚えさせた。

マイは驚いたことに魔語を1時間ほどで完全に使えるようになっていた。


(おい犬ころ飯はまだか?)


(少し待ってろ)


ギルドメンバーに影響を受けてしまいこの有様だが…これからが心配だ。

………

……

それからと言うもの俺の暗殺業は効率が上がった。はじめこそブレイスメテオなどの上級魔法をマイがぶっ放してしまうせいで報酬が減ってしまったり、戦利品が全く取れないことが多々あったが、マイが仕事を覚えるとバフや気配検知などを使って支援を行ってくれるようになり(上級魔法ぶっ放しがなくなってるとは言わないが)効率が上がった。そうした生活をいつまでも続くとは限らない。時には追手に追われ死にかけたり、仕事が急にギルドに入らなくなりほとんど狩りだけをしていた時期もあった。

そうして15年が経った。

………

……


「あら犬さんこんにちは」


「こんにちは隣の奥さん」


俺はここ数年この街に滞在している。最初いた街に結局戻って来たがここが一番落ち着くからだろう。あの空き家も正式に買った。そのためご近所付き合いをするために人間の言葉も覚えた。ちなみにまだ名前は決まっていない。


「娘さんはどんなお仕事をされているんですか?最近よく娘さんのお話を聞くので」


「ええとあんさ──協会でお手伝いを」


危ない危ない…危うく暗殺業を…と言ってしまうところだった。俺は暗殺からは手を引いた身だ。ぜひマイには頑張ってもらいたいところである。


そうしてお話をしていると、教会からマイが帰ってきた。あまり顔は変わってはいないが、背丈がかなーり伸びたと思う。我が娘ながらいいスタイルをしていると思う(暗殺者基準)


「お父さーん。助けて追われてるの」


「なんだとそいつはどこに」


少しすると追手いやいつか見た修道女が近づいてきた。


「お前か…マイに何をするつもりだ!」


「何言ってるんですか?そんなことより教会に戻りますよ


????

「今なんだって聖女?」


「はいそうですよ。あなたの娘さんは聖女様ですよ」


俺は立派な暗殺者になるように教育してきたはずだ。心当たりなんて……

光魔法は姿を消せるためカンストさせた

光魔法をカンストさせると神聖魔法が出てきたので面白そうなんで取らせた

教会には何回かお世話になった

その恩返しとして教会のお手伝いをしていた

負傷したときに便利なので回復魔法もカンストさせた

回復魔法をカンストさせたら蘇生魔法が出てきたので面白そうなので取らせた

日常的に聖水を摂取(多分関係ない)


心当たりしかねぇ……


「隠していたつもりはなかったのですが……」


「いや聞かなかった俺が悪い」


スキルも魔法も全部俺が悪い


「それでもお父さんはお父さんでいてくれますか?」


(聖女…聖女かぁ…まぁそれも悪くないんじゃないか)


(答えになっていませんよお父さん)


(決まっているだろう俺はいつでもマイの父さんだぞ)


後継者には未練があるがそれは他の奴らに期待しとこう。俺は今を楽しむことにした。


「お父さんーたーすけーてー」


そんなことを考えているとマイが修道女に連れて行かれてしまった。これもマイへの試練だと思おう。


「お父さん…たすけ…」


「おらぁ!!修道女!その汚い手を離しやがれぇ!!」


─────あとがき──────

お読み頂きありがとうございます

この話は一話だけにしようと思っていますが、要望があれば続きを書きたいと思っています。

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