エピローグ

 世界で最も大きな大陸の中央に位置する国、ストリー。かつてはマニーラ教の聖地として栄えた国だったが、マニーラ教が他宗教に取り込まれていってからというもの、この国は大きな問題を抱えていた。隣接する国との貿易、政治。他の追随を許さない、大きな産業も無い。聖地としての力を失い、他国に侵略されるのではという噂すら、まことしやかに流れていた。

 防衛拠点を構えることができれば、他国に甘く見られることもなかったかもしれない。しかし、点在する遺跡の取り壊しを良しとしない歴代国王達は、緩やかに衰退していく国に為す術もなく、手をこまねいていた。彼らは歴史を重んじるが故、今に取り残されそうになっていたのである。

 そんな中、国を揺るがす大きな事件が起こる。王女であるフェドラ姫の失踪である。犯人は不明。誘拐、亡命、死亡説まで流れたが、真実は謎に包まれたままだった。もうこの国は駄目かもしれない、国民達の多くはそう考えるようになった。


 そして、本格的に侵略が噂されるようになってから数年。なんと現・ストリー国王は見事に国を建て直したのである。それまでパッとしないと国民に評価されていた国王であったが、フェドラ姫がいなくなってからというもの、人が変わったように新たな政策を打ち出した。

 まずは、これまで保全に留まっていたマニーラ教の遺跡を、防衛拠点とした。それを可能にしたのは、何故か急激に発達した法術である。国王に言わせれば、これらは全てフェドラ姫の為に開発された術だが、その法術は他に類を見ない精度と強度を誇った。遺跡を保護すると同時に、他の呪文を弾き飛ばす力を持つ。フェドラ姫を失ったことにより、法術師達はさらなる研鑽を積み、この技術を確立させた、というのが王の言い分である。

 他国の侵略はせず、しかし決して立ち入らせぬ力を持つ国として、ストリー国は存在感を放った。そして、大陸の中央に位置する国として、貿易にも力を入れた。安全に交易できることから、各地から人が集まったのである。流出していた国民にも歯止めがかかり、この国はますます栄えていくであろう。

 既に歴代最良の王として名高い現ストリー国王だが、彼はこれからも生涯現役で、国のために尽くすつもりのようだ。


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最強の世継ぎは生まれない nns @cid3115

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