第11話 文化祭ってなんで食べ物屋ばっかりなの?

「良平君、早く行かないと演劇部の公演始まっちゃうよ?

ほら急いで急いで。」


「先輩~、待ってくださいよ~。

でもいいんですか?いくら文芸部ウチの出し物に人が来ないからって、抜け出して他所の部活見に行っちゃったりして?」


「良いの良いの。

ウチの出し物が閑古鳥なのは毎年の事なんだから。それにちゃんと入り口に休憩中の張り紙してきたでしょ?年に一回の文化祭なんだから、楽しまないと。」


先輩は戸惑う俺の手を握ると、にっこりと優しい笑みを浮かべるた。

その花の咲いたような笑顔が嬉しくて、俺も顔にも笑みが浮かぶ。


「そうですね、少しくらいは良いかもしれないですね。

じゃ、今日は楽しんじゃいますか。模擬店でお好み訳とか焼きそば出てるじゃないですか、演劇部の公演見終わったら一緒に食べませんか?」


「うん♪」


一瞬”このままでもいいかもしれない。”なんて馬鹿な事を考えてしまうくらい、今日の彼女は魅力的に見えた。

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「先輩、文化祭用の短編一応仕上がったんですけど、見てもらっていいっすか?」


”あ~、今日も暑い。夏休みが終わって秋になったはずなのに全然秋らしくない。残暑って何だよ、三十度は”残”じゃないだろ”残”じゃ。立派な猛暑だろうが。猛暑って事は夏だろう、だったら夏休みにしとけよな~。”などと願望垂れ流しにしながら先輩に短編小説の校閲をしてもらう。

”校閲”、文芸部に入らなかったらこんな言葉絶対知らなかった。なんか読むことらしいけどよく分からない。

最初は文字の書き間違いを探す事なのかとも思ったけど、そっちは”校正”と言うらしい。紛らわしい。


「あの先輩、作業をお願いしておいて邪魔して悪いと思いますが、質問いいですか?

何で小説に出てくる文化祭ってあんなに模擬店が多いんですか?ほとんど食べ物屋ですよね?メイド喫茶や執事喫茶、焼きそばお好み焼きにタコ焼き、フランクフルトにクレープってお祭りのテキヤ並みじゃないですか。」


先輩はいったん手を止めこちらを見ると、何か考え込み口を開いた。


「そうだな、実際高校や大学などの文化祭は食べ物屋を中心とした模擬店が主流だったりするから、表現としてはそれほど間違ってはいないんじゃないか?

ここ近年は世界的なパンデミックの影響で、文化祭どころか人の集まりですら規制されていたから高橋は実感が湧かないとは思うが、文化祭と言うもの自体学生のお祭り騒ぎと言う側面が強い。共に一つの目標に向かい協力し参加する、主人公がヒロインと急接近するのにこれほど都合のいい舞台はあまりないんじゃないか?」


えっ、そうだったの?マジで知らなかった。そう言えばずっとマスクしていたからか、中学の時のクラスメートの素顔知らないんだよな~。色々昔の常識とずれてるのかもしれない。


「なるほど、俺が知らなかっただけで文化祭自体そういうものだったんですね。ところで先輩、さっきから顔が赤いようですがやっぱり暑さでやられちゃいました?

俺もなんですよ、今日も暑いですからね。これって残暑じゃないですって、九月の気温?フザケンナって気分ですよ。」


グラスを二つ用意し、水筒の中の冷たい麦茶を注ぐ。暑いときにはやっぱりコレ、さっぱりした麦茶が一番だ。

先輩は何か慌てた様子で麦茶をクイッて…、いわんこちゃない。キンキンの麦茶に悶え苦しんでいらっしゃる。これ前にもやってなかったっけ?

本当に学習しない先輩だ。

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題名が長いのはちょっと…(ある文芸部員の独り言) @aozora @aozora0433765378

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