第10話 夏休みの宿題は小学生だけのモノじゃない

 ”ピンコン”

メッセージアプリの着信音。こんな夜遅くに誰だろう?

俺がスマホを開くとそこには先輩からのメッセージで「高橋君、ちゃんと宿題おわった?」の文字と首を傾げてはてなマークを浮かべるクマの姿が。


ヤバい、全然終わってない。

夏休み中遊び惚けていたツケがこんな所に回ってくるとは。俺な先輩に宿題が全然終わっていない事、しばらく部活を休むことを告げ、謝りのメッセージを送った。


”ピンコン”

すぐにメッセージの返事が返ってきた。

「まったく仕様がないな~。ここはお姉さんが手伝ってあげます、感謝するんだぞ?

どうせ休み明けの試験勉強もしていないんでしょ、明日から部室で勉強会ね♪」


先輩、サンクスです!

”OK”の文字を掲げるクマのスタンプにほっこり顔の俺であった。


______________


”まだ暑いな~。お盆過ぎてから湿気は大分ましにはなったけど、酷暑から猛暑に代わっただけって感じ。バイトしてる連中凄いよな~。その労働意欲を支えているモチベの元って何なんだろうね~。”

今日も今日とて下らないことを考えている目の前で、ひたすらノートに書きものをしている先輩。


「先輩、もしかしなくても宿題ですか?まだ終わってなかったんですね。」


机に臥せった顔をやや上げ、下から恨めしそうな目で見る先輩。


「時に高橋後輩。ずいぶん余裕な顔をしているが、君は宿題の方はどうなっているのかね。」


「え?そんなもん最初の一週間で終わらせましたよ。野球部の助っ人の話も無くなりましたし。俺ってそう言うやらなきゃいけない事を後回しにしていると、ゆっくり休みを楽しめないタイプなんで。」


”グッ”

まったくの正論に二の句も告げないと言った表情で、悔しげにこちらを見る先輩。

普段の強気な態度はどうした、麦茶入れてあげるから頑張れ。


「でも先輩、ラノベとかで主人公が試験前にヒロインたちと勉強会をする”お勉強イベント”ってあるじゃないですか?あれって無茶苦茶じゃないですか?」


あ、温くなっちゃうんで麦茶早く飲んだ方がいいですよ。コップの周り水滴付いちゃってるじゃないですか。これ放っておくとノート濡れちゃってえらい事になりますから。


「だって主人公もしくはヒロインたちって、二~三回勉強会しただけでめちゃくちゃ成績上がってるんですよ!?家庭教師のト〇イもびっくりですよ、スカウトされちゃうレベルですよ。しかも賑やかしの友人枠は赤点回避で大喜び、”神様、仏様、主人公orヒロイン様”ってなんでこっちはリアル仕様なの?って感じですよ。」


ずるいわ~、あのスペックずるいわ~。しかも普段何もやらないから僕は普通の男の子って、いや、おかしいからなお前ら。


「お、おう。なんか高橋がヒートアップするの久しぶりに見た気がするが、確かにそう言われればそうかもな。だが読者の願望としては”美少女たちと楽しいイチャラブ勉強会をして逆に成績落ちました”じゃ納得せんだろう。私も実際友人と勉強会と称して集まったことはあったが、まったく勉強は進まなかったぞ。返って一人でやった方が効率は良かったがな。」


ですよね~。うん、俺の考えは間違ってはいなかった。これだけ先輩と共感できたの初めてな気がする。


「だが、一人で黙々とやるというのも侘しいというか、もの悲しいというか。

色々と教えてくれなくてもいいから、誰かが傍に居てくれるだけで励みになると言うもんだぞ?」


う、ここで上目遣いは卑怯だろ、さっきまで睨み上げてたじゃないか。

畜生、なんだか先輩がかわいく見える。(気がする)

何かに負けた様で凄い悔しい。

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