第46話 法外魔術
「失礼します!」
職員室の扉を返事も待たずに勢いよく開けた。教員数名がこちらに顔を向けた。その中にロードルもいた。
姿を確認し、どうにかして金的を蹴り上げてやろうと考えたその時だった。
「俺に何の用事だ?グレン」
「っ!?」
瞬きをしたその瞬間、視界に入っていたロードルの姿が消えたと思ったら、突然背後からロードルの声が聞こえ、思わず職員室内へ飛び下がった。
このいきなり背後に移動される感覚、先ほどの授業の時と同じだ。
高速で移動している線も考えたが、風圧もなにもなかったのでありえないと考えていいだろう。
職員室の出入口を風圧なしの高速移動で駆け抜けられるわけがない。他の扉を使った形跡もないし、すべてが謎だ。
「そんなに驚くなよ。これだけ見せたら、法外魔術だということに気付くと思ったんだがな」
「法外魔術?」
「なんだ?知らないのか?」
法外魔術。
聞いたことのない単語だ。単語からして魔術関連の何かなのは想像できるが、そんな言葉を聞いた覚えはない。
「騎士団候補生とはいえ、世間知らずにも程があるな…よしグレン、特別授業だ。ついてこい」
「えっ?今から?」
「当たり前だ。評価はやるから安心しろ」
「…わかりました」
知らない単語を聞かされた挙げ句、特別授業をするからついてこいなんて自由すぎるとは思うが、評価が貰えるなら文句は言わない。
俺はロードル先生の提案を受け入れ、特別授業とやらを受けることになった。
※ ※ ※
「法外魔術というのは、魔法の才能がある人間が激情に駆られた時、稀に発現する能力のことだ」
「激情に駆られた時?」
空き教室の黒板に、ロードル先生が法外魔術の詳細を書いていく。
「ああ、怒りや憎しみなどの激情が全身を駆け巡り、それらが運良く魔力と結びついた時、能力が発現するんだ」
「なるほど…」
「そして、法外魔術が発現した人間は、驚異的な身体能力を獲得する」
そんな現象が存在していたなんて、今の今まで知りもしなかった。ミネンからも教わったこともない。
「グレン、ひとつお前に聞きたいことがある」
ロードル先生は神妙な面持ちでこちらを見つめてきた。
「授業で動きを見た感じ、お前の身体能力は、普通の人間のものにしてはあまりにも高すぎた。お前は既に、法外魔術を発現しているんじゃないのか?」
「…」
強い怒りと憎しみに支配された過去は確かにある。6年前、俺の村が魔族に襲われ壊滅させられた時のことだった。
炎の魔導剣士グレン 馬鹿侍 @makenn
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