声なき叫び

サクサク

ホラー 読み切り 

まだ、セミも元気に鳴いてるある暑い日の夏。


明日仕事が早めの時間になる為、職場により近い友人宅に泊まる事になった。


まだ仕事中の友人を待つ為、私は近所の喫茶店で、ゆっくりとお茶を飲み喉の乾きを潤しながら、涼しい場所で時間を過ごす。


電話が入り、仕事終わったから、今から託児所に子供のお迎えに行くと連絡が入った。


私は、すぐ近くに居るからと、喫茶店を出て、友人と一緒に託児所へお迎えに向かった。


今日は、お姉ちゃんが泊まりに来てくれると、終始ご機嫌な様子の子供と一緒に歩きながら、今からお姉ちゃんが、夕飯に大好きなオムライスとハンバーグ作るね!

と、笑いかけると、やった~!と、子供と一緒に喜ぶ友人を見て、口元が緩む。


母娘で頑張ってるから、たまには、ゆっくりしてほしいと、時々お互いの家を泊まりに行ったり来た時は、簡単な料理を作っていた。

こんなに喜んで貰えるなら、こちらも作りがいがあると言うものだ。


今日は、何時も場所が一杯で、駅前にママチャリを停めてあるから、ちょっと暗いけど、すぐだし近道していいかな?と、言う事で、軽自動車が1台通れるかどうかの細い道を入っていく。


ここを真っ直ぐ抜ければ、駅まですぐの距離。

3人でワイワイ歩いていた。


ふと、友人の子供が立ち止まり•••

「猫ちゃんの声がする〜!猫ちゃ〜ん!」

と、外に置いてある小さなコインロッカーの方に向かって呼びかけ始めた。


友人と2人、その時、猫何処ではなく、なんとなく•••

いや、確実に鼻をつく嫌な悪臭いがするね•••

と、言い始めたタイミングで、そう言えばこの辺りは、猫も飲食店も多いから、ネズミの死骸でもあるのだろうか?


そんな会話をしながら、傍らで猫ちゃんが居ないと真剣に探す友人の子供と一緒に、コインロッカーの下に居るのかなぁ~?と、覗きこんだ瞬間、背中を走る悪寒と寒気に、思わず子供を抱きかかえ走った。


友人は、訳がわからないと言う感じで、後ろからねぇ!どうしたの!と、大声で叫びながら走ってくる。


私は、子供を抱き抱えたまま、駅前に停まっていたタクシーに飛び込み、友人は後ろから、ハァハァと息を切らしながら走ってくる。


友人に早くタクシーに乗って!と、大声で促し、タクシーに友人が乗り込んで来た後、そのまま友人宅に向かう道中、自転車は明日取りに来ようと言った。


子供に夕飯を食べさせ、寝かし付けた後に、友人との答え合わせが始まる。


まず、猫の声のようなモノが聞こえていたか?

友人には、聞こえておらず、私が子供に合わせてくれているんだなぁ。程度に感じていたらしい。


私は、下から二段目の左端の所から、声がすると思ったが、鍵が無いと気が付いた瞬間、ここに居てはイケないと、咄嗟に子供を抱き抱え走り出していた。


だが、コレは気のせいだと思いたかったからか、明日も早いから寝ようとお互いに床についた。


朝早く、3人で昨日の自転車を取りに行き、友人はそのまま子供を託児所へ。


私は、昨日のコインロッカーの辺りがやはり気になり、再び通るべく近くまで来た時。


黄色のテープと警察官、沢山の人集りが出来ていた。


それを横目で見ながら、職場に着く。

上司に挨拶と、コインロッカーの辺りに警察官が沢山いましたが、何かあったのですか?と、訊ねてみた。


上司から思いがけない言葉が飛び出してきた。


「生後まもない赤ちゃんの遺体が見付かったらしいんだよ••」


ゆっくりと、タバコをふかしながら、ふぅーと煙を吐き、目見にシワを寄せてつぶやく。


その一言を聞いた瞬間、ブワッと涙が出て、膝から崩れ落ちてしまった。


【もし••あの時まだ生きていたら••••】


そんな考えが、頭の中を駆け巡り、ハァハァと息を上げて、うまく言葉に出来ない


私の肩をガッチリ掴み、上司の呼び掛けに、ようやく重たい頭をユックリ上げ、涙と鼻水でグチャグチャな顔を上げ、嗚咽混じりに昨日の一連の過程を説明した。


昨日の出来事を証言は出来るか!?と、言われコクリと頷く。


上司は、エレベーターを待たずに、階段を駆け下り、暫くしてから渋い顔をして戻って来た。


そして、私の顔をシッカリ見てから


「まず確認なんだが•••お前、この事件の関係者じゃないよな?」


真剣な眼差しでこちらを見据える。


鼻をすすりながら

「いえ、絶対に違いないです。あの時声を聞いて、猫が居ると思ってましたが、違うと分かり走って逃げました。後、一緒に居た友人がその時の事を証言してくれますし、その直後にタクシーに飛び乗りました。」


そう告げると、そうか•••と、何かを考え、ゆっくりと口を開き•••


あまりの衝撃の発言に、驚きを隠せなかった。


見付かった遺体はな•••

死後2週間経っていて、お前が聞いたと言う声は聞こえないはずなんだ•••


私は、頭が真っ白になり、その場にバタリと倒れた••


亡くなった赤ちゃんは、早く自分を見つけて欲しくて、たまたま近くを通った私達に、助けを求めて来たのだろうか••


真相は判らないが、あの時の声なき叫びを、私は生涯忘れる事は出来ないだろう


そして•••

1日も早く赤ちゃんが安心して、天国に行ける事を願い、静かに手を合わせた•••








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

声なき叫び サクサク @sakuya1213

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る