今日も貞操を守っていますか?

淡々と語られる文章の中におぞましいディストピア世界が広がって短編なのに満足感が半端ないです。特に豚の声が伏線になってシュナの喘ぐところと重なる点は文学的な快感を得ることができました。この話は単に金か愛かを投げかけるだけでなく、生命を少しでも維持する為に徹底的な管理社会を迎合すべきなのかという、どこか延命治療にも似た問題を訴えている点が秀逸。「性行為は汚いもの」という思想は今の世界でも存在しますが、そうした既存の思想を利用してここまで世界を広げられる作者さんの技量にただただ感嘆するばかりです。

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