記憶喪失を逆手にとった傑作

短いながらも非常に満足できる傑作。主人公の「僕」はブロック塀に頭をぶつけて「記憶喪失」になった。介抱してくれた謎の少女・明日香は僕の彼女だという。けれど僕はそれを思い出せないでいる、、。ラストで明かされる衝撃の展開に思わず息をのむ。作者の巧みな仕掛けに感嘆せずにはいられない。ラスト一行も非常に魅力的である。本文には言及されてないが、この作品は一種のループものとしても楽しめる。ラストで明日香の「真実」に気がついた僕は、明日香によって(鈍器かなにかで殴っている?)一時的に記憶喪失になる。そして最初の公園の場面へ。明日香はおそらく僕が彼女を彼女であると認めるまで永遠に鈍器で殴り続けるのではないか?それとも、「産声を上げさせる」のが良いのか?どっちにせよ彼女の恐怖とシニカルがないまぜになった挑戦をこれからも見守りたい。