「柳と轍」という意味

考察しがいのある作品だった。まずは「柳と轍」というタイトル。この作品のテーマは絞首刑にあるから、ここから考察を開始できよう。けれど、僕自身が不勉強なもので、「柳」の持つ意味合いをこの作品に繋げること能わず。「四谷怪談」を始めとした近世の柳は亡霊・怨霊の出現する場所として「柳」が採用されているが、ひょんなことから他者を殺すことに手を貸してしまったK博士の怨霊を予感させるものだろうか?また「轍」は言葉単体としては深い意味合いを持たないが、想起させる「轍を踏む」という慣用句は「先人が失敗したことを繰り返す」というネガティブな意味合いを持つ点からも、K博士の後悔がよく表現されていると言える。次になぜK博士は自裁したのかという問題。思慮の深い博士ならばL大臣から話を持ち掛けられた時点で拒否しても良かったのではないだろうか?小さな頃から生死を考えてきた「倫理学者」の博士が、「死」に関わる機械を作ったうえで、「自裁」という選択肢を選んだのはなんとも解せないというか、後味の悪い(良い意味で)話だった。