この世界で暮らす人々には、生まれながらにして「卵」の形をした「相棒」がいる。ただし、中には持たない人間もいて――そんな人々を、新たな「相棒」と廻り合わせて、対価として指定した「音楽」を回収することが、主人公・音廻卓渡(おとめぐり たくと)のお仕事です。
「音楽」の回収に向かった先で、卓渡はさまざまな葛藤や思いを抱えた人たちと出会います。彼らが奏でる音楽は、日々を生き抜いてきた力強さに満ち溢れたものもあれば、自分の存在意義を定めていく途中のものもあり、他者との交流に悩みを抱えた中で生まれた音色もあれば、他者と関わり合ったからこそ生まれた音色もある……優しく温かく展開されていくドラマに、穏やかな気分で聴き入りました。
音を廻る青年が、音を繋ぐように出会いを重ねていった先に、どんなラストが待っているのか……作者様が慈しみを持って描かれたと分かる文章に、耳を澄ませてはいかがでしょうか。
色や音を精細な背景に乗せて、さらに細かい工夫を重ねた演出で作品の魅力が引き上げられており、音が文章から聞こえてくるような感じがします。
主人公は、物語の前半では葛藤を抱えているというキャラクター達が一歩前に足を踏み出す手伝いをしており、後半は皆と同じ目標に向かい、それぞれが一緒になって成長していく構成になっています。
盛り上がりという点では、後半からは止まるとこなくラストまで加速し続けていく感じでしょうか。
読んでいて先の展開が見えてしまったとしても、読みすすめずにはいられない魅力があります。
ぜひ一読してみて下さい。
音楽が好きな人には、必ず読んで欲しいと思う作品です。
人は生まれた時に卵の形をした相棒と共に生まれてくるという世界でのお話し。
稀有な存在である、黒い卵を相棒に持つ青年、卓渡は「回収屋」。
ごく稀に生まれる卵を持たない子供に、機能停止してる卵に命を吹き込んで提供し、そして成長したらその卵を回収…ではなくて、『音』の回収をします。
卓渡はこの仕事を通じて様々な素敵な音楽家と知り合い、彼等の人生と、心に響く音楽に触れて、やがて…
後半、卓渡が知らなかった驚くべき事実が分かって、ビックリしますよ。
それから、たまごちゃん達がとても可愛いので、これも必見ですね♡
でも、何より、このお話で堪能頂きたいのは、『音』!
そう、音楽の描写です!
この作品を読めば、作者様の曲の描写の素晴らしさに必ず感動すると思います!
1曲1曲、流れる音楽を丁寧に描写されていて、読者を音楽の世界に引き入れてくれます。
そして楽器や曲について丁寧な説明もあって、知識を増やすこともできる素晴らしい作品です。
しかもとっても読みやすいんです!
すーっと、体の中に入って来てくれて、とっても楽しく、心地よい感覚にしてくれます!
これは本当に是非1度読んで見て頂きたい、素晴らしい作品だと思います!
生まれてくるとき人はみな「卵」を抱えている。その「卵」は一生涯を共にする唯一無二の相棒。そんな独特な世界観を持った作品です。
回収屋・音廻卓渡の仕事は、「卵」を持たずに生まれた人に、新しい相棒を提供してあげること。その対価として回収するのが、債務者が奏でる「音」なのだ。
ピアノやチェロなど聞いたことのある楽器、名前だけは知っている楽器、名前も形も見たことのない楽器、様々な楽器の登場にわくわくさせられ、新しい知識にも出合えます。
作中で演奏される曲もクラシックや民族音楽などバラエティ豊かで、聞きながら本作を読むとより世界観が広がっていってとても楽しいです。
曲に作曲者の想いが詰まっているように、演奏者一人ひとりにも想いがあります。個性豊かな登場人物たちの魂がこもった素敵な演奏をぜひお聴きください!