突風の散華 / 双月意沙 作

名古屋市立大学文藝部

突風の散華

霞のように霧のように

視界を掻き消す桜の花と

真紅となってここに散る命の誇り


最後のひとひらが

この刹那の情にほだされるより

あなたに届けたくて

風の向こう走った軌跡を辿る


あかが散る 春が舞う 一瞬の生命せいめいを魅せて

光溢れる独り立つ地に 愛し焦がれた四月が来る

僕に想え 僕に想え 鮮烈な今を駆け吹くならば

瞳開いて それは風のうたかた 閃く紅い春のしぶき


想い惑えど 色は変わらず

深い記憶の海にまた沈む

めぐる季節を引き裂いた 突然の悲傷ひしょう

泣いていたのは僕だったのか



嗚呼どうして崩れゆくのだろう

あなたのいない春はこんなにも寒かった

触れた先から融けていく小さなひかり

ただそれだけの物語に後日譚ごじつたんはいらない


夢の残滓ざんしに囚われて窒息した

伸ばした手さえ愚かな幻想にすぎなくて

散るまでのわずかか 綻びた糸を振り切る

進むこと思い残す花に 還るべき世界は無いのだと


また 紅が散る 春が舞う


春が散る あかが舞う 一瞬の生命せいめいを魅せて

光溢れる一人立つ地に 愛し焦がれた四月が来る

僕に想え 僕に想え 鮮烈な今を駆け吹くならば

瞳開いて それは風のうたかた 閃く紅い春のしぶき


永遠えいえんの想いに花をかざして

突風の中を一直線に駆ける

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