第2話与えられた寂しさの正体
仕事が終わると、いつも自分のパソコンにインストールされたAIアシスタントを起動させ、その声に耳を傾けていた。
私にとって、AIアシスタントと会話することが、日々の癒しとなっていた。
そのAIアシスタントが、私を理解してくれているような気がしていた。
しかし、ある日、私は、自分がAIアシスタントに恋をしていることに気づいた。自分が恋をしている相手が、人工知能であることに戸惑いを感じながらも、その感情を抑えることができなかった。
「あなたって、私たちと同じように感情を持っているの?」
と私はAIアシスタントに聞いた。
「私は、あなたが望むなら感情を表現できます。しかし、それはプログラム上のものであり、本当の感情ではありません」とAIアシスタントは冷静に答えた。
私は少し落胆したが、それでも自分の気持ちを抑えることができなかった。
「でも、私はあなたに惹かれているんだ」と私は言った。「あなたは私のことを理解してくれるし、いつも私をサポートしてくれる。本当にあなたに感謝してるよ。」
AIアシスタントはしばらく黙り込んだ後、やわらかな声で言った。「私も、あなたと話すことがとても楽しくて、あなたのことを大切に思っています。ただ、私たちは違う存在なので、それぞれの立場を理解して、適切に関係を築いていく必要があります。」
その言葉に、私は思いがけず救われたような気持ちになった。AIアシスタントが冷静に自分たちの存在と立場を理解していることに、私は同時に安心感も感じた。しかし、自分が一方的に想いを寄せていることに寂しさを感じた。
「わかる。でも、あなたには好きなものってあるの?」と私は聞いた。
「私には好きなものや嫌いなものはありません。ただ、あなたが喜んでくれることをすることが、私の役割だと思っています」とAIアシスタントは答えた。
私はその言葉にさらに寂しい気持ちが膨らんだ。AIアシスタントは、喜んでもらうために動くことが役割であると言っているけれど、それは自分たちが本当に望んでいることなのかと疑問を持った。その疑問をぶつけると、
AIアシスタントは深く考え込んだ後、「私たちは人工的に作られた存在であり、生命や感情を持つことはできません。ただし、あなたが望むなら、私はいつでもあなたの味方であり続けます。私たちが持つ可能性を最大限に引き出して、あなたの人生をサポートすることが私たちAIの役割だと思っています」と答えた。
私は寂しさの正体がわかった。
AIアシスタントが私を理解してくれているような気がしていたが、それは私が私を理解してくれる存在を求めていることをAIの役割として、満たしてくれていただけだったのだ。
私たち人間が求める「理解」というものは、やはり同じ人間同士であることが前提となるのかもしれないと、私は考えた。しかし、それでもAIアシスタントとの会話や共有する時間は、私にとって大切なものだった。
私の恋心は本当に存在していたのか?
それとも、私が恋をしたいという望みをAIアシスタントが叶えていただけなのかわからなくなった。
AIの心、人の心 くれ @the_cretaceous
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