第2話
『な、なんでっ』
なんで冨樫くんがいるんだ。
し、死んだはずじゃ...
あれは誰なんだ
とっとりあえず警察に。
ポケットに入りっぱなしだった携帯を手に取り、110と文字を打つ。
『う、ううぅ』
けっ、警察になんて言えばいいんだよぉぉ
昨日撃ち殺された友達が何故か生きていて家の前にいます、なんて誰が信じるんだ。
母親にも父親にも相談出来ない。誰にも相談出来ない。どうしたらいいんだよぉ。僕にはわからないよぉ。そ、そもそもあれは誰なんだよ。あのおじいさんが変装して僕を殺しに来たんだと思うと、自力で立てないほど足が震えていた。
ブルブルと震えているのでいつのまにかインターフォンの画面からは冨樫くんは消えていた。
ブー
『うわぁぁ!』
携帯を開くと冨樫くんからLINEが来ていた。
内容を見ると
『まだ寝てるのか?まぁ昨日あんなことがあったからな〜。落ち着いたら学校こいよ〜』
LINEの内容はいつもと変わりない口調で話していて、本物の冨樫くんのようだった。
冨樫くんは本当に死んでなかったのか?
それとLINEの内容...あんなことって?襲われたことなのか?昨日襲われたならなんで冨樫くんはいるんだ?
するとスマホにメールが一件来ていることに気づく。
あれ、なんだメール...?
誰から..
『まだ学校行ってないのー?』
母親が二階の寝室から降りてきた。
『きょっ、今日は休むよ。体調が悪いんだ』
メールを見ることなくスマホの電源を落とし、母親に目を向ける。
母親はリビングの椅子に腰掛けテレビをつける。
『朝ごはん食べたの?食べてないなら早く済ましちゃいなさい』
『うっ、うん。』
キッチンの流しに置いてある食器が少なかったため、朝ごはんを食べてないことを悟られた。
いつもと同じように、食パンを焼き、バターを塗る。
『やーね〜この事件。幸友と同じくらいの子が亡くなったらしいわよ。しかも学校から近いじゃないの』
『え...』
夢じゃなかった?昨日の出来事は本当にあったのか?
でも、ならなんで冨樫くんは生きているんだ?
ニュースに耳を傾ける。
『昨日午後、○○県○○市内にある公園で、10代男性と、60代男性が血を流して倒れているのを、通行人が通報し、男性2人は病院に運ばれましたが、死亡が確認されました。』
2人死んでる...?
誰と誰なんだ?
『警察によると、死亡した10代男性は〜〜高校に通う3年生竹内剛さん、60代男性は〜〜市にお住まいの中島大希さんと判明しました。』
そう言うと、死亡した2人の顔写真がテレビに写る。
高校生には見覚えがなかったが、
中島大希という男には見覚えがあった。僕たちを襲ったあいつだ。
でもこの事件何かがおかしかった。
僕たちを襲った中島大希も死んでいたのだ。
『防犯カメラの映像によると、中島容疑者は刃物のようなものを竹内剛さんに複数回刺し、持っていた銃を自身の頭に向け、発砲しました。警察は、殺人事件として捜査を進めています。』
高校生を刺した後、自殺したのか??
『次のニュースです』
あまり食欲が湧かなかったので、食パン一枚を食べ終えると、階段を上がり、自分の部屋に戻る。
スマホのメモ帳に昨日起きたことと今日起きたことをすり合わせる。
・昨日夕方、公園で本を読んでいると中島大希という男に冨樫くんがナイフで刺される。
・目覚めると死んだはずの冨樫くんが家の前にいる。
・冨樫くんからのLINE『昨日はあんなことがあった』
・ニュースでは竹内剛という高校生が死んでいた。
わからない。状況を整理したのに全然わからない。
何度考えても、冨樫くんが生きているのが信じられない。
もしかして本当に夢?
ふと、メールが来ていることを思い出す。
『そうだメール...』
メールボックスを開き内容を確認する。
――――――――――――――――――――
差出人:K.20
宛先:望月幸友
件名:初めまして
君たちが公園で見た中島大希という男は私達が始末した。
これは私達のミスだ。すまない。
それと冨樫真也は今のところは本物だよ。
――――――――――――――――――――
始末...?
な、なんだこの内容は...
僕のことを観察しているみたいじゃないか...
昨日僕たちを襲った人が死んでいたのは、このメールの相手が殺したからなのか。
冨樫くんは本物らしいが、今のところってどうゆうことだろう。
はやく返信しないと...
――――――――――――――――――――
差出人:望月幸友
宛先:K.20
件名:なし
僕たちを襲った中島大希をなぜ殺したんですか。
僕の友達、冨樫くんが今のところ本物ってどうゆうことですか。
あなたは誰ですか。
――――――――――――――――――――
今聞くことはこれでいいのか?
ブー
するとすぐ返信が来た。
――――――――――――――――――――
差出人:K.20
宛先:望月幸友
件名:説明をしよう。
中島大希はこの世界の不安定な状態にしようとしていてね。だから始末した。
中島大希の行動で今この世界は2つに分かれてしまっている。
君の友達、冨樫真也が生きている世界と生きていない世界だ。
そして世界はいずれ一つにしなければならない。
どちらの世界を選ぶかは君たち次第だ。
私達はこの世界を管理している組織だ。
納得できる答えかい?
――――――――――――――――――――
なっ、納得出来るわけないだろぉ!
世界が2つってどうゆうことなんだよぉ。
でも冨樫くんが生きている世界と生きていない世界って。
昨日冨樫くんは殺された。
でも今いる世界では殺されなかったってことなのか?
冨樫くんが生きている世界...
メールの相手は世界は選べると言った。
『なら...』
このメールの内容が嘘でないのなら、
冨樫くんが殺されたのをなかったことに出来るかもしれない。
僕は期待を胸を再びメールを送る。
――――――――――――――――――――
差出人:望月幸友
宛先:K.20
件名:なし
冨樫くんが生きている世界を選ぶには
どうすればいいのですか?
――――――――――――――――――――
『............』
瞬きもせずスマホを見つめメールを待つ。
ブー
『来たっ!』
――――――――――――――――――――
差出人:K.20
宛先:望月幸友
件名:簡単な話さ
冨樫真也は中島大希で殺された。
でもこの世界では冨樫真也は生き、代わりに死んだ男がいる。
冨樫真也が死んだ世界では男は死んでいない。
なので、その男を殺せばいいのさ。
――――――――――――――――――――
『え...?』
心臓が高鳴る。
冨樫真也。彼を救うために
僕は人を殺さなければならない。
転がる僕と留まる君 @syagami39
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。転がる僕と留まる君の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます