転がる僕と留まる君

@syagami39

第1話

望月 幸友、それが僕の名前。


無口、いや人と話す勇気がないだけの臆病者。


少しでも不安な要素があるとすぐに逃げ出す臆病者。


中学では孤立していたし、友達は一人もいなかった。


自分を知っている人から逃げるように遠くの高校に進学した。


高校に入学しても変わることなく独り、と思っていたが一人、話しかけてくる人がいた。


名を富樫真也という。なんと同じ中学で家も近いときた。僕は中学の頃の自分を知られるのを恐れたが、彼は僕のことを知らなかったようだ。


しかもあまりにしつこく話しかけてくるので、しだいに僕も心を開いていき、彼と話が出来るようになった。


1年が経ち、高校2年生になった4月19日。


『おい幸友〜帰り本屋寄ってこうぜ』


『う、うん。今日lolo9部の発売日だもんね』


『そうだよ!どんな展開になるのか楽しみだよな!』


毎月19日に発売するウルトラジャンプを買いに学校を出る。


『あ、そういえばさ〜昨日女子から告られてさ〜』


『え、す、すごいよ冨樫くん。相手は誰なの?』


僕らはそんな他愛もない話をしながら本屋に行き、目的の本を購入する。


『めっちゃ気になるから公園で読んでこうぜ』


僕は静かに頷く。


いつも小学生の笑いで絶えない公園が、今日はやけに静かだった。

周りを見渡すと一組のカップルとみずほらしい格好のおじいさんしかいなかった。


『今日なんか静かだな』


『ま、まぁ集中して、読めるし、いっいいよね』


ベンチに座り僕らは本を読む。


ページが半分に差し掛かった所、


『うぅ』


僕は突然の頭痛に頭を抑えた。


すると、その数秒後に公園にいたおじいさんがポケットに手を入れたまま冨樫くんの目の前に立っていた。


『え、なんですか?』


突然の出来事に僕も冨樫くんも戸惑いを隠せなかった。


すると男はポケットから手を出し、銀色に光る何かを強く握った。

パンッ

何かの音と同時に冨樫くんへと近づき

『..え』

グサッ

『っっ!ぐあああああぁ』


大きな悲鳴な響き渡った。

数秒後にはさすがの僕にも冨樫くんが刺されたと理解出来た。


『う、うわぁぁぁぁぁあ』


刺された箇所を手で抑え込んでいる冨樫くんを置いて全力で走って逃げる。


買ったジャンプを持つ余裕もなく、

『助けて』

そう叫ぶ

冨樫くんの声なんて気に留めず


無我夢中に最寄り駅に向かい電車に乗り込んだ。


僕は悪くなかったはずだ。誰だってあんなの逃げるに決まっている。僕は臆病なんだ。立ち向かったところで何も出来やしない。なんで急に襲われなくちゃならないんだ。おかしい絶対おかしいよ。


こんな世界おかしい!


そう心で現実逃避していると自宅の最寄り駅に到着する。


走って家に帰る。幸い駅から家は歩いて3分の距離だ。走るとすぐに着く。


家に着くとすぐに家の鍵を閉め、窓も閉める。


怖かった。あの男が次は自分を襲ってくると思った。


ベッドに入り布団に身を包める。


するとすこしの余裕が出来たのか頭が冴えてくる。


と、冨樫くんは....


絶対に死んでしまったと思う。


逃げている時に冨樫くんは何発も撃たれていたのだから。


『うぅ、く、ううう』


僕は友人を亡くした悲しさに泣いてしまった。


30分ほど泣き、落ち着いたのか眠くなってきた。


僕は瞳を閉じた。


ブー  ブー

その夜一件のメールが届いていた。


ピンポーン ピンポーン


『!?』


インターフォンで目が覚める。

4月20日。

時刻は6時30分。


脳が覚醒すると、すぐに恐怖が巻き戻ってきた。


昨日の男ではないのか。次は僕を殺しにきたのか。


そう思うと足が動かなかった。


『だ、だれなんだよお』


ピンポーン ピンポーン


『う、うぅ』


泣きそうになりながら


モニター付きインターフォンのあるリビングへ向かう


恐る恐るインターフォンの画面を見ると


そこには冨樫くんが立っていた。

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