第33話 エピソード⑬

結局アリサは当分の間〜

今現在、研修を受けているこのヴァンパイアハンター協会地方支部で、取りあえず

「一時お預かりの身」という裁定が下った


と言うのも

そこら中を荒らし回っているおそらく同一犯の「ハンター狩り」……!


アリサが純血種ヴァンパイアの顔を見て生き残っている、唯一の人間という事で、もしも元の地に一人で帰ったら生命の安全が保証出来ないという事になったからだ


「純血種の気に入りの者に対する執着は激しいもんねぇ♪」


〜「お前が言うな!」なベルギリウスの言が、最終的な決定打となった


有能な新人を潰してしまうのは如何にも勿体ない


それに必ず未来、獲物として襲われることがわかりきっている者をむざむざ非業の死を迎えさせるのは倫理的にも宜しくない


彼女は有能で、将来の幹部候補生としても大いに期待されている側面も有り


で、教官役であったミオの直の部下という配置に落ちついた


ミオ自身もいつまでも現場ばかりの部下無しハンターでは無く、いい加減役職を上げようという水上所長の意見もあったから、この人事は案外すんなり片がついた


目まぐるしい予想外の展開に、アリサはフゥッと息を吐いた



「じゃぁ住居は早いうちに決めて契約しないと」


研修用の寮はいつまでも居られる訳では無い


一緒に学んだゴリラたちは、意気揚々と各地に散っていってしまったし、自分一人でと言うのは忍びない


「単身者用の寮とか無いんですか?ミオ教官」


自分は料理が苦手

だから誰かに作って欲しいのだ

(出来たら美味しい方がいい)


アリサは協会食堂内での昼食時〜


大盛りカツカレーを、スプーンでガツガツかっ込みながら


ホクホクさっくさくのアジフライ定食を、上品な箸使いで戴いている目の前のミオに意見を求める



「あのねぇ、『教官』はもう止めて」

「じゃぁなんと呼べば?」

「『ミオさん』、でいいわよ」

「そんなの周囲に序列的示しがつきませんよ!?

『ミオ先輩』で如何ですか?」


アリサは骨の髄まで体育会系体質が染みこんでいる為、自分的にはこの呼び方が一番性に合っていると思ったから素直にそう言った


「そうだーミオ先輩、独身寮とかの手続きどうするんですか?」


「ああ〜その事だけれど?

『それは出来ない』ってなったわ」


「?!そんな差別です」

「でも狙われてる可能性あるし?

他の一般職種の人が巻き添えになるかも知れない」

「むむっ」


「だからーーー『上と話をつけた』

私も手が離れたばかりの教え子があっと言う間に死ぬのだけは、寝覚めが悪いもの


ヴァンパイアハンター協会から補助が私に入るから『格安で』


〜私の家の、余っている部屋に寮として住まない?


向こうとしてもシステムを新たに作っての個別の施設を作るよりも、ずっと遙かにお得って算段したみたいね


毎月の利用料金はコレ

食費は毎月変わるけど、大体コレ


部屋で使う個人用の公共料金は別途になるけど、共用部分は家賃代で要らない


食事は全部私が作るし、何もしなくっていいわ?

それに掃除洗濯はマシンが全て行う


ヴァンパイア対策の防犯ビームも設置、ハンター職の私の場合、対武器使用も認められている


地下にはジムだってある

うんと安全は確保してあげられる


『私の猟犬』とも最新型ホログラム通信システム繋がってるから、業務定時連絡としてベルギリウスとも話せるわよ?

〜どう?」


ーーーーそんなの断る理由なんて無い


毎月の利用料金は本当に安いと思った


あの綺麗な王子様とも毎晩お会い出来るのだ



「では先輩、今後ともどうぞ宜しくお願いします!」


アリサは深々と頭を下げた



<終>

2023/04/20









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黄昏を奔る 夏生めのう @natukimenou

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