第32話 エピソード⑫
トンッ
揃えられた軽い二つの靴音が、随分離れた場所で降りた
『タップダンスのダンサーみたいだ』
アリサは霞む脳裏でボンヤリ、そんな事を思い浮かべる
「じゃーーーねぇ〜 ベルギリウ〜ス!
猟犬君とは又今度遊んであげるねぇ〜
ぁ ハンターのご主人様によろしくね〜」
あーーーはっっはっはーーー……
夜風に乗り
〜切れ切れに
奇妙なほど愉しげに、愉快そうに笑う声がドップラー効果みたく歪みながら遠方に去って行く
フワリとズッシリ重苦しい空気感が急速に消え失せ、体が軽くなる
*******
「大丈夫?
起きられるかい?」
聞き覚えの無い柔らかな優しい声色
まろやかな声が労るようにかけられる
「大丈夫です」
「〜無理しないで」
手を貸され
〜ぼろっぼろの、ギシギシ音をたてそうな体を、アリサは必死に叱咤激励した
ぎくしゃくしながらも、全力で気合いを入れつつヨッと起き上がる
『え……
ええええええええ?!
誰ーーーーー?!』
目の前にサラッサラの腰まである、夜目にも眩い金の髪を持つ長身の美男子
ーーーー息をのむ王子様が立っていた
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