第263話 王者の魔法
怯えている場合じゃない。気を取り直して情報収集をしないとな。
特にエヴィーを縛っている
エヴィーが今まで説明してくれた縛鎖荊をまとめるとこんな感じか。
・縛鎖荊は生命属性の上位魔法
・対象者の脳と心臓を魔力の荊の蔓で縛る
・対象者が術者に不快な事をすると魔力の蔓を通して対象に苦痛を与える。
・対象者が術者を喜ばせると魔力の蔓を通して対象者を気持ち良くさせる。
・対象者を魔力で縛っている為、対象者は術者から逃亡が不可能。
・下僕や
・術者と対象者の相性がある。
その他に何かあるかな?
「
「縛鎖荊は生命属性魔法じゃ。莫大な魔力量と精微な魔力操作が必須。ハイエルフ、それもエルフの王族に連ねる者にしか使えん魔法のはずなんじゃが。ご主人様が使えるのが未だに信じられんわ」
エルフの王族に連ねる者?
「あの……、エヴィーってエルフの王族なの?」
「そうじゃが? それがどうかしたか?」
あっさり肯定されたよ……。
神々しいまでの覇気はそれのせいなのか?
エルフの王族と聞いてエヴィーを改めて見ると確かに高貴な女性に感じるな。
その後エヴィーに縛鎖荊について説明された内容がこれだ。
・縛鎖荊は解除が可能。解除には術者の精密な魔力制御が必須。
・術者が対象者を殺す事が一瞬で可能。魔力の蔓で心臓と脳を潰せる。
・縛鎖荊の成功には術者が対象者と魔力の格の違いが必要である。
・対象者が術者から離れられる距離は術者の魔力制御に比例する。
「ありがとうね。それにしても酷い魔法だな。完全に奴隷製造魔法じゃん」
「何を言う、縛鎖荊は王者の魔法じゃぞ。エルフの王族の中でも選ばれた者しか扱えん。縛鎖荊を使える者が王を継ぐ資格があるのじゃ」
「じゃエヴィーは王を継ぐ予定だったの?」
「いや、王じゃったぞ」
「は? エルフの王なの?」
「そうじゃな。ハイエルフの王族でも縛鎖荊を使える者がいなくなってな。数世代、縛鎖荊を使えない王が続いていた。我が数百年ぶりに縛鎖荊を使えるハイエルフだったのじゃ。我が10歳の時に初めて縛鎖荊を発動させた時はエンシェントエルフと讃えられたのぉ。そしてそのまま女王になったぞ」
「あれ? ハイエルフって不老なんでしょ? そんなに王が変わるもんなの?」
「不老ではあるが不死ではないからな。権力争いで命を落とす者が出ておる。縛鎖荊を使えない王になってからは特にな。縛鎖荊が王者の魔法と云われるのも叛逆されにくい事が理由じゃな」
成る程、叛逆しそうな奴を縛鎖荊で縛るのね。
あ、一応確認はしとかないとな。
「エヴィーは俺が縛鎖荊を解除したら何をする?」
「解除してくれるのか? それはそれで嬉しいが、少し寂しくもあるな。【樹木の牢獄】に囚われていた時と違って、ご主人様に縛鎖荊で縛られているのは心地良いのじゃ。できればこのままでもう少し過ごしたい気持ちが生じておるわ」
「心地が良いの? 脳と心臓を魔力の荊の蔓で縛られているのに」
「これは我も知らなかったが、自分と相性が抜群で尚且つ圧倒的に屈服させられた相手に生殺与奪の権利を握られている状況は奇妙な安心感を与えてくれるわ。今の我の心は安らぎに満ちている。今暫くはこのままが良いかのぉ」
そんなもんなのか? 取り敢えずはこのままで良いか。あとはダンに任せよう。
「わかったよ。明日にはエクス帝国の帝都に戻るからエヴィーも一緒に行くよ。それと道中は生命属性魔法を教えてね。それじゃ、今日はそろそろ寝ようか」
俺のお開きの言葉を聞いても、下を向いて全く動かないエヴィー。
今日はいろいろあったからもう寝たいんだけど。早く自分の部屋に戻って欲しいな。
エヴィーが立ち上がり、何故か俺のベッドに潜り込む。
「おい! そこは俺の寝床だ。寝るなら自分の部屋に戻って寝ろ」
布団から顔だけ出すエンヴィー。
「お願いだから一緒に寝て欲しいのじゃ。ずっと一人で寂しかった……。我は人の温もりを感じたい……」
う、目に涙が溜まっている……。
女性の涙に強い男などいるはずが無い。いたとしてもそれはクズだ。
しかし女性の柔肌を一晩中感じて自重する自信など俺にあるはずも無い……。悲しい事に、それは胸を張って言える。
うん? なんかエヴィーが布団の中でモゾモゾ動いている。
あ、ヤバい!
俺は身の危険を感じ、部屋を飛び出した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
現在、俺は一人シーファの家のベッドで寝ている。
シーファにはエヴィーに添い寝をするように頼んだ。
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