第3話 もしかしたらプロローグは見る必要がないのかもしれない

「じゃあ、もう一度地球で赤ん坊からやり直させてくれ。次の人生こそ努力をして真面目に生きてみせるさ」

 俺がそう言うと女神さまはゴホンっと一度咳払いをして。

「こ、これはあまり大きな声で言うことはできないのですが、どうしても、というのなら異世界へ転生させてあげてもいいのですよ」

 私は関係ないしわかんないとはいえあなたを殺してしまった罪の一端はあるはずですから!と言いながら女神さまは顔を背けた。

「え、異世界?あのアニメとか漫画に出てくるあれか?」

「そうです!あの異世界です。アニメや漫画に出てくるあの異世界です!」

「魔法とかドラゴンとかの?」

「そうです、魔法や火を噴くドラゴンの異世界です!」

「じゃ、じゃあチート能力なんかも!?」

「は?ありませんよそんなもの」

 さっき努力して真面目に生きるって言ったばっかじゃないですか。と女神さまは俺を軽蔑した目で見ている気がする。

 ちっ、乗ってくれなかったか。

 にしても異世界転生者にチート能力を授けないとは...

 もうちょっと勉強するべきだな。この女神さまは。


「ていうか勢いで聞いちゃったところもあるけどほんとにそんな世界なんてあるのか?」

 異世界なんて本当にあるのだろうか。火を噴くドラゴン?異世界で使われている魔法?そんなもの非現実的だ。科学的根拠なんか一つもないし俺は異世界転生なんか信じちゃない。

「信じてないって顔ですね...仕方ありませんね。」

 少し離れて居てくださいと女神さまが言うので俺は大人しくいうことを聞いて少し離れた場所へ移動した。いったい何をするつもりなんだろうか。


 少し離れたところから見ていると女神さまの周りに水のようなものが集まり始めたのを感じることが出来た。

「水よ、その清らかな流れに身を任せ、純粋なる力を我に授けん。水精霊よ、我が呼びかけに応じ、我に汝の加護をもたらし給え。清めの水よ、汝が持つすべての力をここに集め、我が魔法の力となれ。氷華流麗アイシクルレイン!!!!!」

 女神さまの周りに浮かんでいた水は冷気によって瞬時に氷結され礫となって俺の方に...って

 おわああああああ!!!!あぶねぇ!!!!

 俺は超速で向かって来る氷のつぶてで死を覚悟したがつぶては俺を貫くことなく眼前で停止した。


「てんめええ!!!何してくれんだ!!!死ぬところだったろうが!!!」

 俺は顔を真っ赤にして女神さまの胸ぐらを掴み服をがしゃがしゃさせる(ラキスケ狙って前後多め)

「止めたじゃないですか!!!それに、魔法があるって信じてなさそうだったのでちょうど良かったでしょう?どうです?異世界。どうですか?魔法。わくわくしませんか?」

 こいつ...思いっきり胸ぐら引っ張って胸のひとつでも見てやろうかと思ったが女神さまの言うことにも一理あるので大人しく手を離すことにした。


「それで?結局どうするのですか?」

 女神さまは服のシワを正しながら俺に言う。

「え、何がだ?」

「何がだ?じゃないですよ。地球に赤ん坊として生まれ変わるのか、異世界へ転生するのか。どっちにするのですか?」

「そんなの...そんなの異世界へ転生って決まってんだろ!」

 俺はさっき見た女神さまの魔法で胸がドキドキでいっぱいだった。

 俺のその言葉を聞いた女神さまは待ってました。と言わんばかりの笑顔を見せて「魔法陣が完成するまで少し待っててくださいね。」と言ったので俺は大人しく魔法陣の完成を待つことにした。


 数分がたったあと「完成しました! この魔法陣の上に乗ってください。」と女神さまの声がしたので俺は女神さまの方へ向かっていった。


「なんで俺を異世界ヘ転生させることにしたんだ?本来死んだ人は天国に行くか、赤ん坊として生まれ変わるしかないんだろ?」

 魔法陣へ乗った俺はもう一度女神さまに聞いてみる。

「先程も言いましたが、元々あの場で死ぬはずだったのは他の人だったんですよ。ですが何かが起こりあなたが死んでしまった。死ぬ予定のない人が死ぬというのは我々神々の中でも結構な事件になっちゃうんですよ...」

「...要するに?」

「あなたが死んだことがバレて怒られたくないのであなたの魂を異世界へポイっ!ってところです!」

 そういった女神さまは舌を出していたずらっぽく笑った。

 こいつ...最後にガツンと一言言ってやろうかと思ったがどうやらそんなことをしている時間はないようだ。


「それでは、転生処理を始めます。

 恐らくあなたは神崎雄太としての記憶を失い、どこかのタイミングで全てを思い出す日が来ることでしょう。全てを思い出したら世界を楽しんでください。

 転生する世界には魔王やドラゴンといった怪物もいれば魔法学園やダンジョンなど、あなたの心の琴線に触れる素晴らしい世界が広がっていますよ。

 あなた、地球では息苦しかったのでしょう?この異世界ではあなたの思うがままに生きてください。私の願いはそれだけです。

 どうか、良き人生を!!!」


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 んで、俺が生まれたって訳か。

 12年後の今。俺は何をするべきなのだろうか。

 そうだ。魔法の修行をしよう。

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古き良き異世界生活を!!!!! 夜のち晴れ @toriikarasu

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