第2話 彼女いない歴=年齢だけどなにか?

「さて、一体どうしたものか」


 先ほど、【水球の種】で床をびちゃびちゃにした俺は床に目もくれず地球での日々を思い出していた。

 小さなときの思い出。

 思い出したくないとある日のこと。

 それでもやっぱり強く思い出すのは12年前に起きたあの日のこと。


 -------------


 突然だが、俺は死んでしまったらしい。

 それも、かなり理不尽な理由で。

 平日にも関わらずさっきまで学校にも行かず人生の謳歌していた俺は珍しく外へ遊びへ出ていた。

 夕方に同じく学校のやつらが仲良く帰っているのをみて萎えてたところをトラックにひかれて死んでしまった。

 トラックにひかれて死んだのはいい(良くないけど)。

 問題はトラックの行動だ。

 明らかにほかの方向を向いていたのにドカン!って音がしたと同時に俺の方向へ方向転換をして俺をトマト缶かのように押しつぶして殺しやがった。

 あんな死に方があってたまるかってんだ。

 だから俺は今、『天国』のような場所で俺を成仏させようとする『女神さま』と呼ばれている人物と言い争っている。


「なんで俺が死ななきゃいけなかったんだ!!!死ぬ予定じゃなかったって!!!俺の人生これから(のはず)なのに(不登校だったけど)!!!こっから彼女とか作ってモテる(予定な)のに(彼女いない歴=年齢だけど)!!!地球に戻してくれぇ!!!」

 俺は涙を浮かべぎゃあぎゃあと女神さまの服をがしゃがしゃ動かして喚き散らす。

 本当にモテる予定だったんだぞ?彼女いない歴=年齢だけど本当にこれからのはず...だよな?


「だから!!!私にも分かんないんですって!本来、あの場で死ぬのはほかの人だったんですよ!それなのにどうしてあなたが巻き込まれたのか私にもわかりません!!!まるでほかの誰かがあなたが死ぬように介入したとしか、、、」

 一瞬ハッとした顔をした女神さまもいやいやそんなことありえませんね。と自分の世界に入ってどこか訝しげな顔をしていた。

 女神さまの話をまとめると要するにこういうことらしい。


 どうやら生き物というのはどこでだれが生まれ誰がどこでいつ死ぬのかというのは運命で決まっているそうだ。

 それは生き物の大小にかかわらず蟻でさえ、ミジンコでさえ、当たり前だが人間もどこでだれが死ぬというのはすべて決まっていてあの場でトラックにひかれて死ぬはずだったのは同じ年代くらいの女の子だったらしい。

 ただ、その予定に何かが起こってトラックは方向を変え、俺をひき殺した、、、というのが今回の事件の簡単な内容だ。


「改めてみると、、、理不尽だな」

 俺は深くため息をついた。

「もう死んだことはいいよ(良くないけど)。ただ、俺は今からどこへ行くんだ?地獄だけは嫌だぞ?」

 勝手に殺された挙句、地獄行きなんてまっぴらごめんだ。今までの行いで地獄に行くほど悪いことはしてなくても天国に行けるほどいい行いをした自信はなかった俺は少しびくびくしながら女神さまの返答を待っていた。


「そうですね、、、あなたのこれからには様々な選択肢があります。」

「様々な選択肢とは?」

「例えば、このまま天国へ行って何もない人生を永遠と生きるか、もう一度地球に赤ん坊として生まれ変わるかですね~」

 天国はお勧めしませんけどね~。と女神さまは言った。


 どうやら天国という場所は人間たちが思っている天使とかいる多くの人が天国を理想的な場所と考え、そこでは苦痛や悲しみがなく、永遠に幸せな時間を過ごせると信じているがどうやらそうではないらしい。

 まぁ、確かに穏やかで美しい場所で、天国には、白い雲が浮かぶ青空、美しい景色、美しい音楽が流れる空間が広がっているがどうやらそれだけしかないらしい。

 生きていた地球とは違い食べ物がないのでおいしい料理を食べることが出来ないし、運動なんかもできない。

 物がないのでゲームや漫画、アニメなんかもないし娯楽なんか一個もないようだ。

 ただただ魂として悠久の時を浮かんでいるだけらしい。

 確かにそんなところで永遠と過ごすなんてまっぴらごめんだな。

 じゃあ地球でもう一回赤ん坊からやり直すか。

 やり直せたら、、、次こそは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る