あざみの唄 🎼

上月くるを

あざみの唄 🎼





 ノアザミは生まれてこの方、自分という存在に自信をもてたことがありません。

 高速道路の真下の畦道で、だれにも見てもらえず、ただ咲いていただけなので。

 

 全身に棘があるので、たまに子連れの母親が散歩に来ても決して触れさせません。

 どこかの国では外敵から国土を守った国花とされているそうですが、それがなに?


 花言葉だって、独立はいいとしても、報復、厳格、一匹狼、反抗期と来ると……。

 ほかの花たちにはやさしく愛らしい形容がなされているのに、なぜ自分だけ。💧




      🌐




 ある日、いつものように尖って咲いていたノアザミは、おや? と思いました。

 いままで聴いたこともない美しく哀切なメロディが、少しずつ近づいて来ます。


 その声は、帽子にサングラス、マスク、日除け手袋のおんなの人のものでした。

 田んぼ道にだれもいないのをさいわい、思いきって、のびのびと歌っています。


 若いノアザミは知りませんでした、そのものずばり『あざみの歌』という楽曲。

 戦後間もなく戦地から復員した横井弘さんが作詞し、八洲秀章が作曲しました。

 


 ♪ 山には山の 愁いあり     

   海には海の 悲しみや     

   ましてこころの 花園に    

   咲きし あざみの花ならば    


   高嶺の百合の それよりも   

   秘めたる夢を ひとすじに   

   くれない燃ゆる その姿    

   あざみに深き わが想い    


   いとしき花よ はあざみ

   心の花よ 汝はあざみ     

   さだめの径は てなくも

   かおれよせめて わが胸に 



 なんと愛と慈しみに富んだ歌でしょうか、ノアザミはすっかり感激しました。

 この日から、ノアザミは自分の存在を否定したり嘆いたりしなくなりました。


 ちなみに作詞家・横井弘さんは三橋美智也さんが歌った『哀愁列車』『達者でナ』ザ・ピーナッツさんの『心の窓にともし灯を』、倍賞千恵子さんの『下町の太陽』『さよならはダンスのあとに』など日本歌謡史にあざやかな足跡を残されています。




      👒




 一年前から堪えて来たことを『幸せのパステルカラー 💐』としてついに書いたヨウコさん。二次被害を心配したようですが、最低のマナーを守れない人の意趣返しなど心ある方々は取り合わないでしょう。今日からすっきり笑顔でまいります。🤗




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あざみの唄 🎼 上月くるを @kurutan

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