まんず咲く(^.^) 🟡 

上月くるを

まんず咲く(^.^) 🟡





 春の朝、出勤のおとうさん、学校のおねえちゃん&おとうとちゃん、そしてパートのおかあさんを送った万作の花たちが玄関先でにぎやかにおしゃべりをしています。


 マンサク、満作とも金縷梅とも書き、まるで太陽の光の糸を散らせたような紐状の花弁が実った稲穂を連想させるというので、新築に贈られることが多い縁起樹です。 


 万年豊作、「まず咲く」「真っ先」、枝一杯に花が付く「満作」や「満咲き」。

 それに、花ことばが「パワーアップ」ですから、いやでもがんばらねば。(笑)




      💰




 ま、それはともかく、春一番に、というよりまだ寒いうちから咲き始めた万作は、ほかの花たちがようやく開花するころには、さんざんに咲き飽いてしまっています。


「ねえ、うちらって、どうしてむかしから縁起がいい木って言われているのかしら」

「あれよきっと、ずばり木いっぱいに金貨が咲いているように見えるからでしょう」


「かもね、寒風に吹かれて一枚も葉っぱがないところに、いきなり黄金の花だもの」

「このうちのじいちゃんも、息子さんちの新築祝いに贈ってくれたのよ、うちらを」


「やっぱり人間、金貨だもんね、玄関先にうちらがいたら、とりあえず安心だよね」

「だよね~、気まぐれに入りかけた貧乏神も、すたこらさっさと退散するだろうし」




      🌞




 他愛もないおしゃべりに、とつぜん割って入ったのは北の国訛りのひと房でした。

「それじゃ、あんまり夢がないっぺさ、あたしゃ、春一番に『まんず咲く』説だね」


「なにそれ? っていうか急にどうしちゃったの、イントネーションorアクセント」

「だって『まず咲く』じゃマンサクにならないじゃん、だからお国言葉を借りたの」


「あ、そういうことか……だよね、だよね、わたしも可愛い『まんず咲く』に一票」

「異議なし!! じゃあ、うちらの語源は『まんず咲く』で決定だよ」( ^^) _U~~


 お日さまポカポカ、犬ワンワン、猫はミャーミャー、アヒルはえっちらおっちら。

 あちこちの庭や玄関先に春がわらわらあふれ出て、みんなを仕合せにしています。



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まんず咲く(^.^) 🟡  上月くるを @kurutan

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