久々に物語に囚われる感覚を味わいました。
キャッチコピーと紹介文を読み、どんな作品なんだろうと第一部に足を踏み入れると、二人の会話にまず惹きつけられます。きっと、その時点で虜になっていたのだと、今こうしてこの文章を書きながらようやく気がつきました。
読めば読むほど、物語の中に漂う爽やかでありながら、どこか漂う仄暗い雰囲気に引き込まれていく感覚。
頭の中に残っているキャッチコピーと紹介文に、気が付けばこの会話に、この行動にはどんな意味があるのかと、どうしても考えてしまいます。
そして第三部で言葉を失い、第四部を読み終えた時、無意識に「あぁ」と呟いていました。
読んでいないときも、気が付けばあれはどう言う意味だろう。二人は次にどんな場所で、どんな話をするんだろう。そんな風にこの物語のことばかりを考えてしまう。そんな読書体験は久々でした。
最後までとても魅力的な作品でした。
気になった方は是非読んでみてください。
ステキな作品をありがとうございました。
純文学の趣を感じさせる作品でした。日常を淡々と書き連ね、そこにちょっとした非現実や小さな発見を見出す。それを「ここの場面が大事!」と全面に押し出さずに、読者に委ねる雰囲気が心に刺さりました。尚且つ、そこにもう一工夫されているのもいいですね。
また、前述したような婉曲的な物語の作り方もさることながら、考察の余地があるのも素晴らしい点かと思います。作者様としては自分なりに作品に込めたメッセージがあるのだと思いますが、読者目線ではその核心部分が上手く隠されている。それゆえに、なにをどう感じるのかや、そこに内在する意味を無限に解釈できるのも本作の醍醐味といえます。
耽美な物語を楽しみたい方は、是非とも読んでみてください。