終わりの始まり


 誰もいなくなったヤマタのお屋敷。そこにはたくさんの亡骸なきがらが今もまだそのままだった。


 ユナの亡骸もまた、お屋敷に置き去りにされている。頭と体がバラバラのまま。

 そんなユナの亡骸に異変があった。異様なほどにお腹が膨らんでおり、時々もぞもぞと動いたり、窮屈そうに何度もお腹を内側から押している。


 何度も何度も何かが内側から押すうちに、遂にユナのお腹を小さな手が押し破った。そして、出てくるや否や、それはユナの体を食べ尽くした。

 生まれたてのはずなのに首はすわっており、当たり前のように歩くそれは小さなユナであった。いや、正確にはユナではない。ユナの見た目をした何かは背中から四つの白い蛇が生えていた。


 ユナに似たそれは、屋敷を歩き回った。何かを探すかのように。そして、見つからないことが分かると地面に座り込み、真っ赤な月を見上げた。


「セイ……」


 それは真っ赤な月を瞳に映し、そう呟いた。


 屋敷の外では鮮やかな血のような色をした鳥居が暗闇に浮かんでいた。




──終──

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【完結】私と神とある村と うり北 うりこ @u-Riko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ