第14話


 それから半年が経った。一緒に帰ってこられた二人の子どもは親の元へと帰り、セイとカイは村を出ていた。


「いやー、まさか毒があんなにヤマタに効くとはなぁ」

「確信が持てたのは、裁きを受けたみんなのお陰だけどね」

「はぁ?」

「どうせ死ぬなら、ヤマタに一矢報わないかって言ったら毒を飲んでから裁きを受けてくれたんだよ」


 セイは裁きを受けるであろう子に毒を勧め、ヤマタにどのくらい影響が出るのかを見てきた。微々たるものでも、いつかそれがプラスに働くかもしれないと仲間を利用したのだ。

 その蓄積された毒と、投げたボールに仕込まれた毒、吹き矢やセイが直接ヤマタの頭の一つに流し込んだ毒。セイの左腕、包丁、ユナの足、食べられた子どもたちにも毒が仕込まれていた。


 どの毒が一番効いたのかは分からないが、流石のヤマタも大量の毒を前には敵わなかったのだろう。


「執念の勝利だな」

「知恵の勝利と言って欲しいんだけど」


 そう言いながら、セイはユナが好きだったうす桃色の花を摘んだ。そして、リツが好きだった木の実をとりにカイと森へ入る。


「ただいま」


 カイと暮らす小さくてぼろぼろの我が家へと帰ると、セイは真っ先に部屋のテーブルにうす桃色の花と木の実を置いた。そのテーブルの上には会えなくなったみんなが描かれた絵が飾られている。


「ユナ、リツ。二人は今の私たちをどう思ってる? 私は二人に会いたくてたまらないよ」


 そう呟いたセイにカイは笑う。


「二人はまだセイには会いたくないと思うぞ。あんまり早くあっちへ行くと怒られるから、のんびり行こうぜ」

「うん。そうだね。リツ、守ってくれてありがとう。待っててね。ユナ、……大好きだよ」


 目から溢れ落ちたものは、ポタポタと床に染み込んでいく。

 瞼を閉じれば、ユナが嬉しそうに「私も! セイ大好き!!」と笑っていた。


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