第3話 お参り
今回も清掃会社代表Kさんよりお聞きした話
会社を興した頃の話
本人は特に意識はしていなかった。
付き合いの長い、顧客に対してのサービスのつもりだった。
忙しい頃だったのと、大半が都会へ出てきて、成長している時代だった。
Mさんは田舎へ帰って、親や親族への墓参りが出来ないのが悩みだと聞いていた。
親族もいるので、墓参りは任せてあるが里帰りはしていなかったが、特に気にする事がなかったのだと言う。
そんなKさんが、思い付きで返事をにした事を、後に後悔することになる。
お得意様の顧客Mさんから、いつもの愚痴で「田舎」「里帰り」「墓参り」のワードを聞く。
「サービスでは無く、依頼としてなら請けますよ」と応えた。
Mさんも目を見開き、しばし考えた後に、「じゃお願いするよ」と応える。
Mさんの実家の住所、墓の場所、親戚や縁戚の有無を聞いて、料金の相談になった。
会社の車で行く事にする、清掃道具を持参しなければ作業ができないから。
基本料金+出張費+交通費等など、お互いに譲れない付近を相談し、折り合いのつく値段が決まった。
もう10年帰っていない墓所は、酷い有様だろう。
一応お寺の所有する山にある、山深い道を進んだ先に、Mさんの家の墓所のみあるとのこと。
三日後に行くことに決まり、Kさんと若い従業員2人を連れていく。
日帰り出来なくは無いが、折角だから若手と温泉も良いなと思っていた。
基本の清掃道具、枝払い等の道具、墓参りのセットもだ。
必要なものを詰め込み、早朝から出発をした。
昼過ぎに、Mさんの菩提寺を訪れ、住職さんへ話を聞きに行くと同時に、墓所の場所を聞く。
山登りを覚悟していたが、墓所前まで車で行けるとの朗報。
ただ変な事も言われた。
お参りの時間は、朝6時から昼まで、その時間に村内放送で鐘が鳴るから、その間に済ませる事。
時間外は、決して山に近づかない事。
既に登れる時間は過ぎていた為、今日はダメだとなり、宿を探そうと思ったら、住職さんから宿坊を案内されたので、お願いした。
翌朝、村内放送を聞き、住職さんから了解を得たので車で山に登る。
アスファルト敷きのしっかりした道路だった。
目的の墓所傍の駐車場に車を寄せて作業開始。
塀も無く墓石が12個並んでいる風景、草むしりから始まり、周りの樹木の枝払い等、2時間弱で終了する、さすが第一線で働く清掃員達だ。
最後にMさんから渡された墓前へ供える品を置き、線香と酒を祀り終了。
だが、その時、何か異質なものを感じた。
若手は気にしていなかった、Kさんは周りを見回すが、目に入るものは無い。
気付くと若手が居ない、車も無い。
山に響くように鐘の音が鳴る。
道の方を見て、墓所に背を向けていたのだが、背後に何人かの気配がする、これはヤバい。
振り返りもせずに、走って下山した。
寺へ行くと、車が止まっていて、住職さんが待っていた。
「あなた方は何をされた、若い人達が貴方が消えたと言っているが」
怒りを隠せぬ顔で住職が言う。
「清掃の後に、お客様から預かった品とお線香、お酒を供えただけですが」
ピクリと反応する住職
「預かった品とは何か?献花と線香なら構わないが、場所が山ゆえに他のモノは困る、中身は見ていないのか?」
「開封しないで墓にあげるのが条件でしたので、そのままご両親のお墓へ供えさせてもらいました」
山の方を見つつ、しばし考える住職
「それしか無いか、ふむ、本堂へお越しください、もちろん三人で、お祓いしておくから」
本堂でお祓いしてもらってから帰ることにした。
後日、住職から電話を貰う
「あんたが供えた箱な、あれはMに突き返した。今後来るな、何もするなとも伝えた、だがあんたらは違う、今後何かあれば相談には乗るから、遠慮なく電話をしてくれ」
とても意味深な電話だった。
Mさんにも聞いてみたが、言葉を濁して多くは語らない。
それでも、箱の中身だけは聞いたが、知識が無くて判らなかった。
座談会の席で、Kさんが参加者へ向けて、「いくら得意先であれ、ノータイムで請けてはいけないね、若い頃だったが、考えて動かないとって実感したよ」
「中身は何ですか?」と参加者が促す
一息ついて
「呪物ってのは、怖いもんだね、無差別攻撃するんだからさ」
Mさんの事を調べたら、ある宗教団体の幹部だった、両親が亡くなり実家も無く為っている原因こそ、その団体への寄付だったとか。
つまり、Kさんは厄介なモノの運び屋になった、あれ(呪物)は、田舎にある何かを壊すためだとか。
こんな話があった座談会
まだまだ、続きますが、今回はこれにて終了。
03 お参り
了
ある清掃業者の話 工務店さん @s_meito
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