第2話 ブランコ
清掃会社代表Kさんよりお聞きした話
彼の若かりし頃、オフィスビルの屋上から、命綱と座面だけのブランコ、左右にロープが付けられているアレですね。
それを使い、12階建ての屋上から順番に窓掃除をしていた。
思いの外、汚れているもので、「完了してさ、自分が映り込むあの時が一番好き」と笑顔で話されていた。
そんなある日のこと、曇りなく仕上げた窓に反射して、自分の背後より少し高い位置に、
白いビニールの袋の様なモノが浮いていた。
風で巻き上がる事もあるので、(ゴミか)と特に気に留めなかった。
一つ下へ移動する時、チラリと見えたソレは、一緒についてきていた。
気にしつつも作業をし、映り込みを確認したら居なくなっていた。
(やっぱり、袋なんだろうな)と思い、下まで窓拭きを終え、その日は作業を終了。
会社へ報告の際に、見かけた袋の話をしたら、報告を聞いていた全員の顔が強張った。
(え?)
会社の皆が、騒ぎ出す。
所長が「Kくん、今から知り合いのところへ行くから、すぐ準備しなさい」
(は?)
会社から1時間ほど車を走らせて、とあるビルへ入る、そこは道場みたいな場所だった。
看板や表札は無かった
事前に話を聞いていたようで、和室へ案内され祈祷をされたとか。
個人的には、特に肩が重いとか、祈祷されてスッキリとかは無いんですよ。
正味30分くらいかな、祈祷されてた方はヘトヘトになっていましたね。
「今は彼から離れているが、次も同じ場所へ行ったら、私でも無理です」
と、言いお弟子さんに支えられ退出していった。
所長に聞こうと思ったら、「帰りながら話す」と告げられた。
帰りの車内
「これで暫くは安全だろう、今日の現場は他の社員に行かせるから、君は内勤に回れ」
(そんなにか!?)
「アレ見てな、二人死んでんだ、そう言う事だ、判るよな」
翌日から内勤になり、現場は他の社員に引き継ぎ、警戒をしたおかげか、例のモノは出なかった。
それから10年程で、代表Kさんは自分の会社を興した。
新規のお客様の、所有物件に打ち合わせに伺った時のこと。
記憶が蘇ったよ、若かりし頃のあのビルだったよ。
「悪いけど、同じ轍を踏む事はしたくないし、俺には当て(霊能者)は居ないからね」
息を呑み
「断ったよ、死にたくは無いしね」
これがKさんの最初の話、会社興してから怪異に憑かれている気がすると薄ら笑う。
まだ、話があるから、次のイベントで話させて貰うよ。
02 ブランコ
了
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