生命仲介人

@ugou

第1話 生命仲介人とその仕事内容について

 精神的な問題により、二度と目を覚ますことができない難病がこの世には存在する。過去のトラウマ、今抱えている問題、未来への不安。その精神的不安を減らし、生へと導き、現実に繋げようとする者を人は


生命仲介人 という。



「というわけで国正君にはその生命仲介人である橋渡さんの監視役になってもらいたい。」

生命仲介人という仕事をしているらしい橋渡家についてのパワポ資料とともに上司にそう言い渡された。どういうことですかね。状況が呑み込めないんですが。

「混乱するのも無理はない。こちらとしても橋渡家が病院と提携するなんて急に言い出すものだから混乱しているんだ。」

目の前にいる上司は頭を抱えてながらそう言った。奇遇ですね、俺もおんなじ気持ちです。

 橋渡家。昔から国や警察の一部では知られており、その血筋を引くものは人間の精神世界?に入ることができるとかなんとか。精神的ストレスで一度寝ると意識を覚ませなくなってしまう難病、シャット病を直すことができる唯一の行為であるらしい。そんなことがつらつらと資料に書かれていた。

「まあ、そういう力を持つ人たちがいるというのは理解できましたが、なぜ我々警察が監視役をするのでしょうか。」

「橋渡家の人間は精神世界に入ることはできても、私達にはできない。そこで何が行われているのかも。今までもずっと寝たきりの患者の親族などが橋渡家に個人的に相談するといった事例があったらしいがそれは個人の自由だ。しかし病院と協力すると言ってきたとなると、このよくわからない医療行為が公の場にさらされるだろう。それが本当に大丈夫なのか、犯罪に加担していないかを監視してほしいんだ。」

今まで黙認してたのに公の場に出る可能性が出たら動くとは…まあ何とも言えんな。

「あともう一つ。その協力するという優月総合病院では立て続けにシャット病と思われる患者が現れた。その患者たちを治すために病院は橋渡家に頼った。そしてなぜか橋渡家は我々警察に病院の調査をお願いしてきたというわけだ。」

「つまり、橋渡家はこの患者たちは何かしらの事件に巻き込まれた可能性があると推測したと。」

「そういうことだ。普通なら調査を行うかはもう少し話し合うべきだが、なにしろ初めてのことが多すぎる。とりあえず君に様子を監視してもらいたい。橋渡家はすぐに話をしたいそうだ。」

もうそれ拒否権ないってことでよろしいですかね。



 そんなこんなで今俺は優月総合病院の院長室ににいます。そして目の前にはこの病院の院長である高木院長さん、そして胡散臭い顔をしたイケメンが立っていますね、ええ。

「よく来てくれた、国正さん。私が院長の高木健だ。そしてこちらが…」

「橋渡透です。これからよろしくお願いしますね。」

そういってイケメン君もとい橋渡君は手を差し伸べてきた。

「国正啓二です。こちらこそよろしくお願いいたします。」

「わぁ、名前まで刑事って感じ、いいですね~」

あー言っちゃうタイプですか、そーですか。おい後ろでうなずくんじゃないよ院長も

「ははは、よく言われます…」

そういいつつとりあえず握手を交わした。

「では早速ですが患者のもとへ向かいましょうか。ただ、今回の患者は元々このシャット病にかかっていた人です。捜査とはおそらく無関係になるでしょう。元々この患者さんを見ることが目的だったんですが、まあなぜか急に同じ症状の患者が増えてしまいまして。」

「なるほど、大丈夫ですよ。どちらもしっかり監視しますので。」

「はい、監視、お願いしますね?」

笑みを浮かべながら橋渡はそう言った。



そして病室の前にいるわけで。

「この部屋にいる患者は沙月美緒さんと言います。小学2年生の女の子です。」

「そしてその子の主治医、救仁郷くにごう先生です。」

「救仁郷賢人です。よろしくお願いいたしますね。」

「国正啓二です。」

「いいですね~その名前。国正刑事くにまさデカって呼んでいいですか?」

直球に言われてもむかつくなこれ。というか話がすいすい進むが…

「俺が監視することは、親は了承しているのか?」

「もちろん、それが約束ですし。親御さんも警察がいることで逆に安心していました。リンクしているときに患者の関係者は立ち会えない約束になっているので。」

・・・リンクとは?よくわからん専門用語をだしてきやがった。

「あ~ごめんなさい。リンクはですね、まあ精神世界を覗くことなんですけど…。まあ、体験すれば分かりますよ。」

「習うより慣れろってやつですか。」

「いや、状況呑み込むの速すぎませんか救仁郷先生。橋渡さん、もう少しなんというか、注意事項みたいな…」

「じゃあ端的に説明します。今から僕が行うことは、患者沙月さんの精神世界に繋がり、今の沙月さんが起きない原因を探りにいきます。注意事項はなにかあればその都度。その他にもいろいろしますがとりあえず説明終わりです。」

「ははは、端的な説明どうもありがとうございます。」

だめだこれ、多分経験しないとわかんないやつだ。多分あっちもそうなるように説明してやがる。もうどうにでもなってくれ。いや駄目なんだけどさ。


「ということで、救仁郷さん、国正さん。私の手を握っていてもらえますか?」

ということで俺はよく分からないままと病室に入り、手をつなぐわけですが。

「一応聞くけど俺の介入で患者の体調に影響はきたさないよな?」

だって俺は医療について何も知らない。そして目の前で眠っている子供のことも。

「体調ではなく、精神ですね。まあ悪くなるかどうかは私達の努力次第ですが。私たちもまだ精神世界については分かっていないことが多いんです。でも死ぬことはおそらくないと思います。」

はっきりとは言わないと。まあ精神と言っても命とは変わらないってことか。

「わかった。だがあくまであんたを完全に信用したわけじゃない。ちゃんと監視するかr」


例えるなら立ち眩みのようなものだろうか、視界が、いや世界がぐらっとして、気づいたらそこはさっきまでいた病室ではなく、知らない家の中だった。

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