キーウィ

まっすぐに一点を見つめる曇りのないつぶらな瞳をし、退化しすっかり本来の機能を失った翼をもつ、ずんぐりむっくり・コロンコロンの怠惰な生物、キーウィ。


キーウィは周囲の様子も見て取れない、鬱蒼としたジャングルの中を堂々と進む。


キーウィは翼が欲しいと思っていた。 頭上に無限に広がるもう一つの海。 足の届かないあの場所で、自由に飛び回ってみたいと思っていた。


このジャングルに『敵』なんてものは存在しない。 平和ボケしたここの住人たちはそんな言葉を当然知る由もないし、実のところ彼らの中にはその概念すら存在しえない、かもしれない。


キーウィは立ち止まり、落ちていた赤い木のみを食べた。 ゆっくりと地面に顔を寄せ、これまたゆっくりと口へ入れる。 その食事を最後に、キーウィは大好きなヤシの木を眺めることができなくなった。 敵がない、それに準ずるあらゆるストレスもない。 キーウィはただ波の流れとともに生き、潮の引き際になれば死ぬ。 


多くは見ないはずの鳥、キーウィ。

彼はこの島で唯一、空を知っている鳥だった。


木々の甘美なささやきの中で、かすかに漏れる光にやさしく包まれて、キーウィは静かにあの大きな空へはばたいていった。

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モノ語り あさまだき @Flash_kinben

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