第1話 コミュニケーションって難しい①

朝は嫌いだ。

でもレイラと付き合ってから一緒に朝を迎える時は朝も悪くないと感じる。

肩を持ちユサユサとレイラが俺の体を揺らす。

朝目を開けて、愛する妻を前にするこの瞬間すら幸せに感じる。

レイラってマジでかわいい。


「アキト、朝ですよ。起きてください。」

「んんっ...。」

「早く起きないと...キ...キス...しちゃいますよ?」

「んんっ...んわああああああああああああ」

「お、おはようございます」


レイラがびっくりしながらも挨拶をしてくれる。

朝起きた時って伸びして『んんんん』って叫んじゃうのって俺だけ?

レイラが起きた時とかは『はぁ~』ってあくびしながら起きるんだけど、貴族すぎて背景が変わって見える。ただの寝室なんだけど...。


「おはよ~レイラ。今何時?」

「今は朝の九時ですね。ご飯食べますか?」

「え、朝ご飯作ってくれてるの?まじで?」

「今日は早く起きすぎたので作っちゃいました。」


えっへんとした顔を見せた後、ほめてほめてとキラキラした目で訴えてくる。

うちの妻めっちゃかわいい。


「偉いな~レイラは、ご褒美に撫でちゃう。」

「やった。終わったら朝ご飯すぐ食べましょ」


数十分イチャイチャした後、魔法で軽く温めたエッグベネディクトとパンを食べ始める。

レイラが作るご飯はとても美味しい。

公爵令嬢、しかも第一令嬢であるレイラは料理なんて当然のようにしたことがない。

それこそ【はじめてのりょうり】はうまくできず俗に言うダークマターができた。

この時は申し訳なさそうに涙目で『食べなくてもいいので』なんか言うもんだから、こっちも涙目になりながらダークマターを平らげた。

本当にダークマターなんてできるんだなと思った。

食べた後に魔法で味を消すことができるって言われた。

先に言ってくれ、次の日はトイレから出れなかったっての。

まあそれも今思うといい思い出だし、それからどんどん料理が美味しくなっていって友人には毎日食べにくるとか言ってる。

絶対ダメだからな、毎日食べられるのは俺の特権だ。


「顔が七変化してますけど、どうかしたんですか?」

「いいや、今日もレイラのご飯が美味しいなぁ~と思って」

「あ…ありがとうございます。な...なんかいつ言われても照れますね。」

「あとはじめて料理したときのダークマターを思い出してた」

「な...わ...忘れてください」

「さてごちそうさまでした。」

「ごちそうさまでした。いつも綺麗に食べてくれて嬉しいです。」


さて朝食を食べ終えた俺ら夫婦は一緒にコーヒーを飲む。

こういった時間もお互いの会話につながり、夫婦円満の秘訣だと思う。

まだ結婚して2年経ってないくらいの若造が言ってますが。


「アキトは学園時代から他の学生よりも一段と大人びていましたよね。まあ学生時代というのはみんながみんな子どもでいられる最後の時間ですし、ある意味異質だったとも言えますね。」

「そういうレイラ様は学園時代なんて今でも思い出したくないくらい大変な時期でしたもんね~」

「レイラ様ってなんだか懐かしい響きですね。」

「学園時代では今みたいな関係になってるなんて想像できないよな」

「ホントそうですよね。私は自分のことで精一杯でしたし、自分に尻尾を振る人たちは私...ではなくロレーヌ公爵家へのゴマ擦り。もちろん公爵家へ尻尾を振るのはしても文句は言えないし、むしろこの時代では当たり前でもあります。ですが、その当時の私にはかなり応えるものがありました。」

「そうだよね~。なかなか厳しい時間だったなぁ~。」


学生時代の話は俺たちの会話の大半を占める。

昔話をするかのように今では笑って楽しい学園時代なのだが、公爵家のレイラ・ロレーヌと下級貴族の俺・アキト。

決して交わらなさそうな距離感・階級差であり、学園の中でも大変奇妙なカップルであったと思う。

奇妙なカップルは俺ら以外にも1?2?めんどくさいから1.5カップルいたわけだが、これはおいおい伝えていけたらと思う。

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妻は元・悪役令嬢...って思われているだけで本当は世界で一番平和主義なんです 葉山詠雄 @hayamaeiyu

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