第7話

「おっつかれさまー」

 武藤さんの言葉に合わせて、僕らは右手を挙げた。そこには、お皿の上に様々なケーキが載っていた。

 武藤さんは打ち上げのために、ケーキバイキングを予約していたのである。断る理由はなかった。

「負けていたらどうしたんですか?」

「残念会かな。まあ、勝つと思っていたけれどね」

「私は完全な敗者です……」

 うなだれているのは棚橋さんである。

「何を言ってるんだ。棚橋さんがいなければこの企画自体がなかったんだよ。そしてAIの進化は目覚ましい。二年後には人間がかなわなくなってるはずさ」

「えーやだ! ネタ将王の座は渡さないんだから!」

 福田さんが目を光らせている。もっとも座りたくない玉座だが。

「AIのライバルもできましたし、私もネタ将王目指して精進します」

 棚橋さんの目も光った。眼光の無駄遣いである。

「僕はもうネタ将のイベントは出ないよ」

「なんてこと言うの! 美鉾ちゃんが悲しむよ」

「福田さんはいいだろうけど、僕はネタ将じゃないから」

「いいえ、立派なネタ将よ。全世界に配信されたんだから。『囲碁の会長にもなっちゃおうかなあ』って」

「そんなこと言ったらそっちはう……ここで言うのはやめよう」

「そうね……」

 ネタ将道は傷つきながら進んでいく、茨の道だ。

 断じて僕はネタ将ではない。しかし妹と妹弟子がネタ将なので、運命として今後も巻き込まれていくんだと思う。

 困ったことである。




「ネタ将対メカネタ将」 完


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ネタ将対メカネタ将 清水らくは @shimizurakuha

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