第5話 始まり

「僕の異能は動物系ビースト島梟シマフクロウだよ~」


島梟シマフクロウ フクロウ科ワシミミズク属

静寂に包まれる闇の中、一切の音を立てずに背後に迫りくる影

無音で縦横無尽に飛ぶ姿は時に神業のごとし

それこそが夜の狩人 島梟…!


「なるほど、梟エネルギーを熱に変えて音を消す能力を銃に使っているのか!」


「正解~、博識だねぇ。ほんとに高校生?」


「異能の勉強だけはしてきたんで、」


不知火しらぬいが一歩前に出る


「動かないでもらおうか。」


もう一発、猪宮いのみやから放たれる。


「お、あたったぁ~」


いや、当たってない。僕の異能は不知火さんの場所がすぐに分かる。

猪宮さんが撃ったのは不知火さんじゃなくて不知火さんに見えるものだ。


「残念☆そっちは外れだよ!」


不知火が猪宮の背後から掴みかかろうとする

が、猪宮の首がグルリと回転する。


「やぁ、初めて目が合ったね~」


不知火は驚いて引き下がる


もはやふくろうの代表的な能力である。

本来、人間の首は70度しか回らない。

それに対して梟は実に3倍!

270度の回線角度を誇る…!


「いやぁ~、すごいね。流石現象系ディザスター、簡単には行かないね。

もう少しで君の脳みそは飛び散ってたよ~」


「君こそ異能の使い方をよく知ってるね。

動物系ビーストを使いこなせてるよ。」


「そう言ってもらえるとありがたいよ〜」


すぐさま銃弾が一発、二発と打ち込まれる

しかし、当たっているように見えるが全て不知火のようなものに当たる。


「お前の異能は何だ?さっきから当たっているだろう?」


「私の異能?現象系ディザスター 蜃気楼しんきろう だよ。」


蜃気楼しんきろう

それは熱気・冷気による光の異常な屈折で、空中や地平線近くに遠方の風物などが見える現象…!!今でも数多くの伝説あり、奇怪な現象を起こすと言い伝えられている!

それはまさに神の悪戯いたずら…!!


「だから、君の撃ってるのは私じゃないよ。

私に見える何か、物体Xだよ」


「へぇ~、俺馬鹿だからわかんねぇや。」


残りの弾数たまかずは二発

余力は一発か、、、その間に何か掴まねぇと


「シンキングタイムかなぁ??

そんなことしてる暇ないよ!」


不知火のハイキックが顔面に直撃する

が、グルリと回転しては戻ってくる。


「つ、つかまえたよ、、、」


「ちょっとそれはきついかなぁ…!」


低く甲高かんだかい銃声が不知火に直撃する

が、しかし腹はえぐれたものの致命傷には至らない


「残念、ナンセンスだよ、、、

足をつかんで頭を打つのはナンセンスだよ、、、」


「…!」


「それにもう余力もないよね。音も消えてないしもう面白くない、何も面白くないよ…」


猪宮はすぐにつかんだ足に最後の一発を撃ち込む。それと同時に手を放してしまう


「もう手遅れだよ、、」


不知火の腰元から銃声が鳴り響く。


「あんまり使わないから慣れないなぁ」


不知火の弾丸が猪宮の太ももを貫通する。


「さ、今からはお楽しみだね!!!」


足を前に出すとガクンと倒れ込む 

だが、どろっと不知火の足から血が流れる


「あちゃぁ、腱が行かれちゃったかぁ、」


「不知火さん!!」


黒崎くろさきは直ぐに駆けつけ治療を始める。


「ごめんねぇ…」


「僕のことなんか気にしないでくだ…さ、い」


相変わらずこの痛みには慣れない


「あ」


不知火の目の先には飛んで逃げる猪宮が映っていた。


「逃がしちゃった、大丈夫かな。あの子。あの体力でアレしちゃったら人間に戻れなくなるよ。」


力を振り絞って飛ぶ猪宮は翼が生え、くちばしが尖り、羽毛に包まれ、何の音を立てずに飛び去って行く。


「それで、いいんです…。」


「改めて、助けに来たよ、

お う じ さ ま ☆」


「王子様…?」


「そう!私のことを一途に愛する王子様!お姫様がピンチの時は助けに来て~お姫様をエスコートするの!今みたいに体を張って守ってくれたり、今日もこうやってお姫様のことを気を引いてくれるんでしょ?かわいいなぁ…!!」


この人はあれだけ警察に囲まれて気を引くで済むのか…

本当は、

『いつでも警察に居場所をリークできる』

って脅して一緒にいるつもりだったんだけど…


「ねぇ、それよりこの後何処に行く?

初めてのデートだよ!!」


「すみません、それどころじゃないくらい体が…」


「は?私のことより自分のこと優先するんだ、へぇそーなんだ。私のことなんてどうでもいいんだ。」


「あ、僕の体なんてどうでもいいんだね。そっか、不知火さんにとっての僕ってそこまで価値がないんだ、、大事にもしてくれないし、捨てゴマだと思ってるんだ。」


「ごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめん。そんなつもりじゃなかったの!許して!ね?ね?ほらおんぶするからお家に帰ろう!」


「ありがとうございます。けど、なんで突然僕のこと好きになったんですか?」


「さっき言ったじゃん。私がお姫様なら、君が王子様だからだよ。

同じ匂いがするんだぁ、、、私たちって似たもの同士だよ」


「ですね、?今からどこに行くんですか?」


「そーだねぇ、ホテルにでも行く?」


「ほ、ホテルですか!?!?」


「焦りすぎだよ!そんな背中で暴れないでよ!」


そう言っている不知火さんには笑みが見えた

その時見た不知火さんの笑顔は初めて見た顔だった。


「不知火さん。大好きです」


「ありがとう」


「好きって言ってくれないんですね、、、」


「言わなくてもわかるでしょ。

これじゃ私が王子様で君がお姫様だよ…」


「だめですか?」


「んーん、そっちのが好き」


「ならよかったです。」


「とりあえず今日は泊まれるところに行こっか」


「はい!」


そう言って二人は血塗られた横浜Bブリッジをゆっくりと笑顔で進んでいく。。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

最弱能力に愛をこめて 紫央 翔 @kakeru_siou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ