ねらー、勇者になるってよ

上野蒼良@作家になる

勝ったな。風呂にでも入るか→あ、あれ?

 この異世界に転生して、もう何年経ったのだろうか。前世は、ネットにハマって永遠とネットサーフィンをしていたわいだったが、この世界にやって来てからのわいは、毎日毎日忙しかった。こっちの世界に来たと思ったらすぐに世界を救わなきゃならなくなった。毎日毎日、幼少期から修行を積んで、頑張ったわいは、ついに冒険者として旅に出たんや。当然、可愛い女の子達と一緒に。回復術師、魔法使い、剣士。術師と魔法使いの違いは未だに分からないけど、それでもわいのパーティーは強かった。





 そして、とうとうわいは、ラスボスの元へ辿り着いたんや。




「……ついにここまで来たぞ! 魔王!」





「かかって来るがいい……勇者!」




 わいは、仲間の力を借りながら果敢に巨大な体を持つ魔王へ挑む。わいの剣技が魔王に炸裂し、魔王にダメージを蓄積していく……。



 しかし、魔王もやられっぱなしではない! 奴は、手の中から炎を出現させて、それをわいと仲間達に飛ばして来た。





「……危ない!」



 しかし、わいが攻撃を受けそうになる直前で魔法使いの女の子がわいの周りにバリアを張ってくれたんや。その強力なバリアにわいは、守られ……そして魔王の炎が止んだ後にわいは、再び剣を握りしめて斬りかかった。





「なんだと!? 我の地獄の業火が効かない!?」




 こういう時のテンプレともいえるセリフを吐く魔王にわいは、魔法攻撃を返しつつ剣による斬撃で魔王に着実にダメージを与える。




「くらえ! 究極炎アルティメットファイヤー! からの究極雷アルティメットサンダー!」




 わいは、この世界に来て魔法を極めているため、魔法のレベルも最大……99や。だから、名前には必ず”究極”の文字が付く。




 そして、わいの究極魔法をくらって致命傷を負う魔王。ついに魔王は、巨大な魔王上の中で膝をつく。城の岩がどんどん崩れていき、城の形も崩れ出す。大ダメージを負った魔王は、膝をついて苦しそうにしだした。




 そんな魔王の様子を見てわいは、確信した。




「……よし」




 魔王の残りライフは、少ない。このまま攻撃し続ければ時間と共に自分達の勝利も決まる。わいのパーティーは全員レベルMAX。この調子でいけば……。





 勝ちを確信したわいは、剣を納刀。そして立ち上がり、魔王に背を向け歩き出す。





「「……え?」」




 わいのパーティーメンバー達が一斉に意味が分からない様子でわいを見てくる。そんな中で魔法使いの女の子がわいに話しかけてきた。




「……ちょ、ちょっと……何処に行くつもり?」




「え? 風呂だけど」



 わいは、逆に何か? と堂々とした態度でそう告げた。すると、魔法使いの子は、仰天した顔で言ってきた。




「はぁ!? 風呂!? こんな時に何を言って……」





「……いや、勝ったし。風呂にでも入るかって……」





「アンタ、バカなの!? 自分が今何をしようとしているのか分かってるの? 世界終わるよ!?」






「……いや、俺が前いた世界では常識だったし……」




「アンタの前いた世界、大丈夫!?」




 すると、そんな言い争いをしている俺と魔法使いに魔王は呆れた声で言ってきた。




「……おい。貴様ら……戦いの途中じゃぞ! この我を倒してからイチャイチャするんじゃな!」





「誰が、こんなのとイチャイチャするか!」





「ええええええええええええええええええ!?」




 悲報:わい、パーティーメンバーに”こんなの”扱い……。少し悲しい。





 魔法使いの子は、言った。




「……今すぐに貴様を倒してやるから黙ってそこで待ってて!」




 そう言うと彼女は、わいの方を見て言ってきた。



「行くわよ! 勇者!」




「……いや、本当に行かないと湯が冷めちゃう……」




「アンタ、いつまでそんな事言ってるの!」




「だって、この辺は……魔王上付近って事で火山に近いし……温かくて気持ちいい温泉が有名で……魔王城前温泉広場とか有名じゃん!」






「……雰囲気ぶち壊すのやめてくれる!?」





「しかも、あの温泉広場……確か混浴で、露天風呂だし…………さっきもなんか、チラッと温泉の方見たら……すっごく綺麗な魔族の女性の方がいて、お胸も大きくて……たまらなくて…………」





「こっ、コラあああああああああああああ!」



 魔法使いの子の飛び蹴りが炸裂。わいの頬っぺたに強烈なダメージがヒットした。そこで、わいの意識は途切れそうになるが、しかしここで思わぬ展開へ事態は発展する。







「ただいま~」




 突如、魔王城のドアがガチャっと開かれて外から1人の女性が入って来る。その女性にわいは、見覚えがあった。





「……はっ!?」



 わいは、この大きなおっぱいをしている。そう、彼女こそ……。






「あの時の……魔王城前温泉広場の露天風呂に使っていた魔族のお姉さん!」






「あら?」



 俺の反応に魔族のお姉さんは、色気たっぷりのお風呂上りで若干汗もかいているその姿でキョトンと俺の事を見ていた。そして、彼女は魔王に告げた。




「……パパ? この人が勇者さん?」






「……あっ、あぁ…………」



 魔王は、困った声でそう告げる。しかし、俺はそんな魔王の事なんて無視してお姉さんに話しかける。




「なんて、お綺麗な方なんだ! ぜひ私とこれから……一緒にらーm……ゲホゲホ……ディナーでも!」






「……あぁ、いえ結構です」




「そっそんな!?」




 わいは、諦めない。この世界に来てわいは、諦めない事の素晴らしさを学んだのだから……。すると、魔族のお姉さんは急に思い出した顔でわいに言ってきた。





「あっ、あぁ! そういえば……さっき、あそこの温泉広場に若い魔族のピチピチの女の子達が、入りに行ってましたよ!」








 それを聞くや否やわいは、走り出す――!





「……ありがとうございます!」




 そうして、わいは温泉広場に向かおうとした。その様子に魔法使いの子は呆れて何も言えない様子……。




 ふふふっ、もうわいを止められるものは誰もいない! わいは、勝ったんや! 完全にこの戦いに勝利したんや!














 ――と、その時。








「……待て。勇者。……貴様、我の娘の裸を除いたようじゃな?」





 そのあまりに恐ろしい声にわいは、つい足を止めて振り返ってしまう。そこには、さっきまで傷だらけでボロボロだったはずの魔王が自分の回復魔法で完全復活している姿があった。






「あ、あれ……?」
















「このサルがああああああああああああああ! 人類なんぞ皆、くたばれえええええええええええええええええええええええええええええええええ!」





 その瞬間、魔王はこの世界の全てを破壊しつくす最強の魔法を発動させて、人類もろとも消し去ってしまうのだった……。

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