第19話
それから色々あった。
屋上で昼寝をしようしていただけなのに、衝撃的な事実を聞いてしまった。
失恋した。
偽物の恋人が出来た。
非日常を過ごし、少し日が経った。
「なんだあの2人……」
次の授業が移動教室であることを忘れ、貫之はすっかり
1人は見知らぬ女子生徒だったが、もう1人は七尾瀬里奈だった。
どうしてこんな時間に教室ではない方向に、しかも人目を気にしながら歩いているのか。
貫之は好奇心に釣られ、授業のことなどすっかり忘れて2人を追うことにした。
辿り着いたのは、何に使われているかも分からない空き教室。扉の上にあるはずの案内板すら真っ白だ。
『あっ……ふぅ………んぅ…………』
何の要件だと考え込んでいたら、空き教室から聞こえて来た声に思わず動揺する。
学びやでは到底聞き及ばないような、卑猥な喘ぎ声。
貫之は気づかれないようにひっそりと教室の扉を開けた。そして、眼前に広がる光景に思わず瞳孔が開いた。
「ふぅ……ひぃ……ひぁ…………んっ…………」
女子生徒は溶けた表情で、瀬里奈のキスをねだるように口を半開きにしていた。瀬里奈は女子生徒に微笑みかけると、顎を優しく持ち上げ自身の口で蓋をした。
貫之は、蜘蛛の巣に絡めとられた蝶のように、すっかり目が離せなくなっていた。
だが、その瞬間——。
「―—ッ!」
瀬里奈の視線が動き、確実に目が合った。だが彼女は何事も無いように、見せつけるように身体を弄り合う。
……そして、何時間経ったのか。腕時計に目を遣るが、長針は五度すら傾いていなかった。
『そ、そろそろ行かなきゃ……』
女子生徒が息も絶え絶えに離れる。
『ん。そだね。じゃあまた今度』
2人がこちらに向かってくる。
大慌てで隣の教室に入ろうとするが、鍵が閉まっていては開けられない。猛ダッシュでもうひとつ隣の教室へ駆け込むと、幸いなことに扉が開いた。深い安堵と共に教室へ駆け込む。それと同時に2人のいた教室の扉が開いた。
ギリギリセーフ。
いまの出来事をあの子に報告しなくては。スマホを取り出してあの子とのメッセージ画面まで来て指が止った。
——報告してどうする?
彼氏がいるのにあんなことをしていた理由も不透明。
いたずらに不安を煽るだけではないか。もう少し彼女の身辺を調べる必要があるのではなかろうか。
思考を巡らせていると、教室の扉がガラガラと勢いよく開いた。
そこにいたのは彼女だった。
「熱い視線に気づかない訳ないでしょ」
「っ……」
視線をスマホに向ける。
「あれ、もしかして動画撮ってたの?」
「い、いや……」
「消せとは言わないけどネットに流すのだけは止めてね。それ以外なら煮るなり焼くなりオカズにするなり、好きに使ってくれて構わないから」
「撮ってないよ」
「……ふーん。ま、どっちでもいいけどキミの見たことは他言無用で。もし言いふらしたら……分かるよね? それじゃ」
「ちょっと!」
「何?」
「キミは爽助と付き合っているんじゃないのか?」
「え、なに、爽助の友達?」
半笑いで尋ねる。
「そんなとこ」
「付き合ってるよ。でも私、女の子もイケる口なの。理由なんてソレでいいでしょ」
心底面倒そうに言った。
「じゃ」
「ちょっと!」
「しつこい男は嫌われるよ~」
これ以上の質問は受け付けないとばかりに、しっしと手を払って行ってしまった。
私の彼女はカノジョだけ〜好きな人に恋人ができたので偽物の恋人を作って対抗してみた〜 四志・零御・フォーファウンド @lalvandad123
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