私の日常。

私はひいらぎ鈴音すずね

娘の鈴波すずなみ千代ちよの母だ。



「なにをやっているの。さっさとこっちに来なさい」

私はそう千代に声をかけるところから朝が始まる。

「ごめんなさい、お母さん」

…またごめんなさい…何回目なのよ、まったく。

謝らなくても良いでしょうに。

「大丈夫って言っているでしょう。…そこに立ち止まってないで、早く来なさい」

立ち止まっていると誰かがぶつかってくる可能性があるわ。

「……うん」


このやりとりが、朝のルーティン。





いつも思うけれど、気まずいわね……。






千代は、私に目を向けてくれたことがない。


鈴音の見た限りで、一度も。




柊鈴音お母さんになったの時から、ずっと。





『うん。わかった』

といって、目を背ける。




『お母さん、どうしたの?』

といって、私の目…の上の髪の毛を見てくる。






『いってらっしゃい』

といって、貼り付けたような笑顔を見せる。





私の目を見てくれたことは、"お母さん"という存在を見てくれたことは、見た限りでないと思っている。




そう、私の中では断言できる。





"外"では私も貼り付けた笑みをして"完璧カンペキ"な""を演じているけれど…。それは"あの人"が望んだからであり、私の…柊 鈴音としての私は完璧でもない。


ただの一介の"お母さん"なだけ。





"あの人"の見ていない鈴音としては完璧でもない、ただのお母さん。


それだけは、言える。


でもあの人の前だけでは…"完璧カンペキ"でなくてはならない。

も、千代も。



その為に千代という存在は生徒会長で優等生…そして友達にも優しく、小学生から全国模試で一位を取り続ける完璧な少女鈴波千代でなくてはならない。


その為に鈴音という存在は家事と育児も出来、千代の勉強を教え続ける千代と同じ様に賢く優しく知識のある完璧な女性柊鈴音でなくてはならない。


"あの人"も同じだ。

"あの人"も同じで、全て完璧な賢い柊家の"  "でなくてはならない。

貼り付けた笑みを浮かべて、完璧な人でなくてはならない。

それは、相当な覚悟でなくては背負えないだろう。

しかし、それを背負う…それが"あの人"の"役割"だから、やらなくてはならない。





それが、"  "であるあの人の役割なのだから。



それが、私の…柊家この家全体の宿命定めなのだから。






ーーーー

あとがき。


"あの人"とは、一体誰なのでしょうか?

まだ出てくる予定はありませんので、ぜひ考察してみてください。

次回は千代の近くにいる、副生徒会長視点を視ていきましょう。

さて、どうなることやら。







































ヒント

Q.

前回セリフを追加したのですが、そのセリフがふたりとも『いってきます』ではない。それは、どうしてでしょうか?

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〈私は、お母さんに嫌われている。〉[私は、娘に嫌われている。] 春さん @Haruryu

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