第2話 二人がいいよ?

 雨の降る中、お互いに傘を差して隣を歩く。やや沈黙のまま家に着いた。私の家は学校から歩いて15分くらい。


 真央を部屋に通すと、タオルを渡して温かい紅茶を入れた。


「はい、冷えたでしょ?温かいの飲んで?」


「ん、ありがとー」


 おとなしく紅茶に集中してカップに口をつける真央。やっぱりどこか、そういう雰囲気にならないようにしたい風にも見える。


 がっかり、、いや、うん。がっかりはしている。2回目のエッチができないことはそう、それはがっかりしている。だけど、、できなくたって別に良い。ただ拒否されることが辛いなって。そういう行為がしたくないって、イコール私自身のことも好きじゃないような。。そう考えると辛い。


「ね、映画でも観る?」


 今日は、なにもしてはいけない。これ以上拒否されたら別れることだってあり得るのだから。


「あ、うん。なんかコメディ系とかいいな。」


 適当にネット配信の映画を選んで、二人横並びでベッドに背をもたれてスクリーンに向いた。映画が始まれば当然会話はほとんどしなくなる。


 急に距離が開いてしまったような気持ちになった。このままあやふやに避けられているままで良いのだろうか、、。そう思うと妙な焦燥感が湧いてきて、せめて物理的な距離だけでも近づきたいと、自分の体を少し真央の方へと移動させた。


 びくっ!と真央の体が反応して、よく見ると真央の耳が真っ赤になっていることに気づく。このまま黙ってやり過ごすなんてキツい。私は真央に身をさらに寄せると、そっと真央の唇にキスを落とした。静かに唇を合わせて3秒くらいたったころ、顔をゆっくりと離してこう言った。


「ね、真央が嫌ならこれ以上したりしないから、安心して欲しい。」


「え?・・・なにを言っているの??」


「だから、、もし真央がキス以上のことをまだしたくないなら、したくなるまで待つから、、だから、二人になるのを嫌がったりしないでよ。」


「え、、嫌がってない・・・。なんでそんなこと言うの・・・?」


「だって、今日ずっと二人にならないようにしてた。」


「あ、ああ、いや、それは・・・。ちがくて。別に二人になりたくないとかじゃないから。」


 紅茶のマグカップを両手で持ったまま、俯いている真央。


「ねぇ、私と、、ああいうことをして、それでもうしたくなくて避けているんじゃなくて? ちゃんと言って欲しい。嫌なことなんてしないよ・・・。」


「な、なんでそんなこと・・・、そう思ってたの?ちがう、、ちがうよ、、。二人でいたくないわけないよ・・・。」


 少し傷ついたみたいな顔をして真央の目元が潤っている。そんな、泣きたいのは私の方。


「じゃあ、今からできるの?」


「へ?あ、そのっ、うん。でもちょっと待って、、少し待って欲しいの!」


「ほら。イヤなんでしょ?大丈夫だから。本当に。ちゃんと言ってくれなきゃわからないよ。。私、、真央と別れる方が、辛い・・・。」


 先に泣いてしまったのは私。自分で言ったくせに、別れるの単語が重く響いて決壊した。


「あ、あ、ああっ!違うの、違う違う違うよ!お願い、聞いて話すからっ!」


「あのね、したくないとかじゃない。」

「ただ、私はなにもできなくて・・・晴にしてもらうばかりだったからそれじゃダメって思って・・・」

「でもわからないの、、どうやればいいのかとか、一人で考えたけどまだ自信がなくて、、だからもう少し後でって思ってて、それでそのっ、」

「ごめん。私まだ晴を気持ちよくできないけど、晴がしてくれるだけなら今からだってしたい!私も!」


 黙って泣く私にまくし立てるように良いわけを並べる真央。少しびっくりした。え、じゃあ、避けてたのは私に触るのが自信がなかったから・・・?


「ああっ、、恥ずかしくて死にそう。。でも、でもでも、晴がそれじゃイヤじゃないかって。私だけ、、ああ、もう恥ずかしいっ、、私だけ気持ちよくなるのに私が誘うって、できるわけないじゃん!」


 やぁぁぁぁっ!今日はもう無理っ!!と叫ぶと真央は絨毯の上に倒れ込んで両手で顔を隠したまま動かなくなってしまった。


 ああ、どうしよう、、この空気。。私だって勘違いしてイライラして落ち込んで泣いて、、。笑ってじゃあ、私がするからしよ?なんて、、言えるかー!


「・・・ねぇ、、ちょっと聞いて欲しいんだけど、、。」


 倒れたままの真央の肩を軽く掴んで揺らしながら話しかけた。


「あのね、真央をさわるとき、私すごい気持ちが良いの。知ってた?」


「・・・・・・え、なにそれ、、もう恥ずかしいから今日はこの話やめたい。。」


「わかった、わかったから。でもね、真央を触ってるとき、私すごく気持ちが良くて、頭の中パニックなのと幸せなのとすごかった。」


「まじ恥ずかしくて無理なんだけど!」


「あはは、ごめん、ほんとごめん。だけど、無理して私に真央がしなくたって大丈夫だから。だからこれからはちゃんと思ってることはなして欲しいよ。ホント、別れるかも知れないかと思ってキツかったからさ。」


「それは、、ごめん。そんな風に思ってると思わなかった。。」



 もそもそと起き上がった真央が、私に向き合って、でも顔を赤らめて俯いたままで、



「き、きょ、今日は・・・?」


「うっ、、こ、この空気で私、いや、したいけど、、」


「「今日は、やめとこっか !」」


 ふふっ、ハモってしまった以上、今日はもう無理だね。ホントいうと、すっごく触りたかったけど。。



真央「あのさ、晴は気持ちよかったの?」


晴「う、うん。ま、真央は?」


真央「あ、っと、気持ちよかった、すごく。////」


晴「そっか、、あはは。」


真央「つぎっ、次ね?」


晴「うん。次ね。」


真央「好きだからね?ちゃんと。」


晴「私だって、好きだからそういうこともしたいってだけだよ。」



晴「・・・ねぇ、、?」


真央「なに?」


晴「やっぱり・・・」


 「していーい?」


真央「き、聞かないでいいからっ!////」




 二人でいていいみたい。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【GL】二人がいいの2 晴と真央スクールラブ 葉っぱ @gibeon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ