[企画]マツリカ大反省会 その5 感想分析(3)



茉莉禍 ―マツリカ―

https://kakuyomu.jp/works/16817330660280121722



 さて、五回目です。

 今回はリアル友人による感想を紹介します。

 

 梶野には、小説に感想をもらえる友人が五人ばかりいます。ほぼほぼ大学時代の文芸部からの繋がりです。


 今回紹介する三名はその中でも常連組で、ここ数年、毎回のように感想をいただいてる相手です。好みや傾向はバラバラですが、それを含め参考にしております。何より、身内ならではの忌憚ない意見が魅力です。


 とくに後輩N──逆ハー小説の続きを梶野に任せた「例の後輩」は、的確かつ容赦ないのでいつも助かっています。いつかギャフンと言わせたいです。

 

 前回同様、今回も後輩たちのミニ紹介つきです。

 感想は直接もらったので全文を引用。少し長いですがご容赦を。

 紹介、引用、分析の順で並べます。


 おっと、その前に。

 後輩コンペ中に、Nに送ってOKもらった「茉莉禍」のあらすじを発掘してきたので、前もって引用しておきます。このあらすじを読んだ前提で感想書いてる後輩もいるので。

 本編と大筋は同じですが、なぜ本編では不評を買ったのか。考えてみるのも一興かもしれません。


 以下、「茉莉禍」プロットです。

 3なのは、すでに二つ没にされてるから。

 ちなみに四つ目が「娘の拾ってきた猫~」です。

        ▼▽▼▽▼


3.オトモダチ(仮)

ショートショートくらいで。



ヒロインには奇妙な思い出がある。


小学校の帰り道、知らない女の子に話しかけられ、仲良くなった。すごく綺麗で人懐こい子で、しきりにヒロインの話を知りたがる。


母親が料理上手なこと。生意気なだがかわいい弟がいること。家族の話をすると不思議なほど誉めてくれるので、嬉しくなったヒロインは、知らない相手ながら家においでよと誘う。


だが、家に上がった少女は、すぐに奇妙な行動を取り始める。ヒロインより先に靴を脱いで玄関を上がる。自分のベッドに断りもなく飛び込み、漫画を読み始める。


ヒロインは少女の豹変ぶりに眉をひそめ、軽率な判断を少し後悔する。こんなに行儀が悪いなんて。


ドアの外から母の声。

「おかえり。お友達来てるの?」「そうだよー」

ヒロインより先に応える少女。たぶん母も驚いたに違いないとヒロインは思う。お茶が済んだら早めにかえってもらおう。

その後、お茶とケーキが運ばれてくる。先に自分に置かれた皿にかすかな違和感を覚えながら、少女について母に説明しようとする。

「この子は〇〇。今日、友達になったの」

そう言ったのは、またしても少女のほうだった。

信じられないことに母もそれを受け入れ、自分によろしくと頭を下げてくる。

それからは和気藹藹と、母と少女は親子のように話し始め、ヒロインは客の扱いをされる。ショックで口を挟むこともできないヒロインは、玄関で少女と母親に見送られる。

「じゃあまたね」

「これからも〇〇と仲良くしてあげてね」と言い添えられ、家を出るヒロイン。思わず表札を確かめるが、もはやそれが自分の名前かどうかすら自信がない。

家の前にいるのに、迷子になったようだ。


帰る場所もなく、泣きじゃくり歩いていると、警官に保護された。迎えに来た母は少女のことも、自分を送り出したことも記憶になく、それきり少女はいなくなった。



現代。

社会人になったヒロインは、帰り道で年下の美人にこえをかけられる。女はヒロインの夫の部下だと名乗り、お茶に誘ってくる。

話し上手な部下に聞かれるまま、ヒロインは夫のことを話す。優しい性格で卒業後に籍を入れたこと。結婚生活に不満はないが、最近はお互い忙しくすれ違いが続いていること。部下も夫が愛妻家で知られていると言い、ヒロインを喜ばせる。


軽く酒を入れた二人は帰り道でにわか雨に襲われ、ヒロインは部下を家に誘う。すでに夫は帰宅しており、突然の部下の来訪に驚きながらも、風呂を入れてくれる。


譲り合いの末、先に風呂に入る事になったヒロインは、二人が抱きしめ合い、唇を合わせるのを物陰から確認する。

そんな気はしていた。夫に浮気の気配があったからだ。


あの事件のことを思い出すヒロイン。

でも私はもう、泣きじゃくる子供じゃない。

また来た時のために準備しておいた。

家族を奪われるのも、帰り道がなくなるのももうごめんだ。


これで体を温めておいて、と二人にお茶を出すヒロイン。

夫にはジャスミン茶。

部下にはカロライナジャスミンのお茶。

匂いは似ているが二つは別種で、後者は猛毒をもつ。


散りばめた花に喜ぶ部下に「あなたにお似合いだと思って」と笑うと、ヒロインは部屋を後にする。


おわり


        ▲△▲△▲


 ふむふむ。

 この段階では、まだヘアピンなかったんですね。

 読み比べると面白いかも。



 次に紹介するのは、「茉莉禍」投稿直後の後輩Nとのやりとりです。コンペ失敗の瞬間ですね。ラインコピペは本人が嫌がりそうですが、これが一番生々しいので。本音120%ですし。

 ちなみにNがこの企画用に書き下ろした感想は、最後に用意しました。お楽しみに。



        ▼▽▼▽▼


N:一人称よりの三人称はやめとけと言ったはずだけど…

梶野:無理じゃー!

梶野:一人称入れずの三人称で、怖くなるイメージがまるでない。

N:はあー?


N:最初のあらすじがいちばん良かったな…

N:迷走が出まくってるわ

梶野:やはり悩みすぎてもいかんな

N:あんた怖い話そもそも読んでないな

梶野:まあ、あんまし

N:ホラー好きでもないし興味も無い

梶野:そんなことはないが、積極的に摂取せんなあ。ホラー映画も見ないし

N:あかん…(スタンプ)

梶野:まあ読まねばとは思ったよ今回


N:怖い話にわくわくする、あの実感を感じないもんな

梶野:わくわく……確かにあんましないかも。リングとかは読んだけど、わくわくはなかったなあ


梶野:しかしこの話を三人称で書いたら、ニュース記事と大差なくならん?

梶野:まあ今回は言われた通りサスペンスに寄せて、ホラーはあきらめた感じだったが

N:この話のモチーフ、すでに恐怖ではなく不安に刷り変わっちゃってる

N:怪談ではもはや無い

N:ニュース記事だろーと不気味で怖ければ良い

梶野:ニュース記事でホラー感じたことないからなあ。

N:逆に何でニュース記事じゃダメなのよ


N:下手くらいが文章としてはちょうど、って言っただろうが

梶野:そこら辺は俺には無理! 特に今回のネタは。

N:やっぱりホラー向いてなかったってことで。

梶野:まあそれは前提としてだ>向いてない


梶野:完全三人称がよかったてのはようわからん。梶野:あらすじの段階でも一人称気味だったろ

梶野:これでも当初硬めの一人称で書き直してたのを、三人称に直したからなあ

N:完成版は極端だ

梶野:極端?

N:詩みたい

梶野:確かに色々実験的な書き方してるのはマイナスかもだが

N:怖いワケない

梶野:むーーん、そうか。ミスったか


        ▲△▲△▲


 おおう(苦悶)。

 まあいつもこんな感じですが。

 ニュース記事というのは、「この話を三人称で書いたら、ニュース記事と大差ない」という私の反論に被せたものですが、今読むとごもっともですね。

 

 まだ前菜なので細かい分析は後に回しますが、「ホラーにおける文章は、むしろ稚拙な方がよい」という話は、唸るものがありました。


 短編を幾つも手掛け、無駄のない洗練された文章を心がけていた私ですが、それはホラーにおいては正解ではない、という点には考えが及んでいませんでした。まあ稚拙なら何でもいいってわけでもないでしょうが、臨場感が出るのは間違いないかと。詩的表現を用いた前篇のやらかしを、正面からぶった斬られた気分です。


 この惨殺事件の翌日から「じっくり感想企画」でした。史上最悪のテンションでスタートを切ったことは言うまでもありません。まあ気合でもって、企画は最後までやり抜きましたけど。


 それでは、いよいよ本編です。

 ここからの感想は、このあらすじ反応や感想(応援コメント含む)を見た上でされている、という点はご留意ください。



▼後輩T


 後輩Tは後輩中一番の年下です。それでも十分におっさんなんですが。

 特徴としては、なろう系やきららアニメなどの「癒し系作品」を好むこと。小説はノーストレスで読みたいタイプで、謎めいた話や消化不良のオチが大嫌いです。梶野はなろう系を読まないので、議論になることも多々ありますが、異なる視点で感想をもらえるのでありがたい存在です。ちなみにこないだ書いた「翠雨」(百合もの)は、絶賛もらえました。

 以下、感想を引用。


        ▼▽▼▽▼


お疲れ様です、茉莉禍、感想です。


私もホラーとしては弱いと感じました。

第一話はたしかに怖いですが、どちらかと言うと胸糞悪い話になってしまっていて、そちらの感情の方が勝ってしまいました。

大事なヘアピンが結局見つからなかったのも、なんだか理不尽感が強かったです。(せめてこれが伏線になってたらまだ良かったのですが。例えば2話の女がそれを付けていたとか。)


続きの第二話があるのは良かったのですが、他の方の指摘同様、こちらはサスペンスの味がしました。

浮気相手の女の超常性を匂わせる描写が薄いからですかね。ホラーではなく、サスペンスの犯行シーンを読んだような印象でした。


あと、毒を入れた犯人がバレバレなので、ちょっと犯行が杜撰かなぁという印象もあります。


浮気相手が実は一話のような超常的な存在で、うまく撃退できた、とかならまだ救われる話なのですが、そういう救いがあるかどうか分からず(というか救い無さそう)なのは少し残念に感じました。


ちなみにタイトルの「禍」は上手いなと感じました。

主人公の名前から、禍々しさやジャスミンの毒まで話が拡がった点は、良かったと感じます。


        ▲△▲△▲


感想分析:

✕一話は怖いより胸糞悪い

✕ヘアピンが再登場しないのは理不尽

✕怪奇譚からサスペンスへの変化が不自然

✕犯行が杜撰

✕救いがないのが残念

〇タイトルの「禍」は上手い

〇ジャスミンがキーワードなのがよい


 後輩Tは私以上に不条理系アレルギーがあるので、この手のホラーとは相性悪いとは思っていましたが、予想以上の反応でした。おそらくはカクヨムでの感想を見た後に書いたものだと思われますが、およそ不評を踏襲した内容ですね。


 サスペンスについては内容の変化というより、サスペンスそのものに魅力を感じていない様子。これは後半のボリューム不足が原因と見ます。後半は後半で面白ければ、ある程度は不満をカバーできるはずですから。


 とはいえ、前篇の期待を受けていないという指摘は対処しようがないところ。そこの転調こそやりたい部分なので。美味く食えるように細部に気を回すしかないですかね。犯行の杜撰さは、まあ狂気の末の犯罪なので、完全犯罪狙うよりらしいかなと判断します。後のこと考えたら、そもそも殺すのが悪手ですしね。


 

▼後輩IS

 「I」だと目立たないので「S」もつけました。

 「一日三十時間のアニメ視聴」を豪語するマルチオタク。格闘技や野球、サッカーも詳しく、「神風VS」初期からの熱心なファンです。(何故かリアルの方がファンが多い) 

 一行ごとに感想を書くスタイルは彼が最初で、それを真似て始めた「じっくり感想企画」の生みの親とも言えます。自分でやるとどれだけ時間をかけてるのかわかり、毎回頭が下がる思いです。改めて感謝しておきます。

 基本褒めるスタイルなので、当時、ここまでケチョンケチョンな感想が来たことに驚きつつも安心しました。常に褒める感想とか信用なりませんから。

 以下、感想を引用。


        ▼▽▼▽▼


茉莉禍 ―マツリカ― 感想


“「十五年後」の「夫の不倫という事象」が「十五年前」の「茉莉花を騙る見知らぬ美少女」という形で怪異として出現した”


という解釈で良いのでしょうか?


「茉莉花を騙る美少女怪異」=「夫の部下である不倫相手の女が生霊的に過去へ出現した」じゃないですよね?

つか不倫相手の女は別に怪異じゃないですよね?

過去に現れた怪異が今度も「茉莉花を騙る怪異」として再来訪してきたのなら

主人公がお茶入れてるのおかしいし(過去と同じ怪異なら部下女の方が茉莉花としてお茶を入れて夫もそれを普通に受け入れてないといけない)。


>「最初のあらすじが一番よかった」「完成度は高いが、怖くはないw」


は確かに的確な評価だと思いました。

あらすじを読んで呼び起こされた「期待」に応えられていない。

「十五年前と十五年後がリンクする構成」と「ジャスミン縛り」という「型」に捕らわれて肝心の「恐怖」の部分が調理されてないというかそもそも「恐怖」という食材入れ忘れてるというか。


「十五年前」でせっかく提示された「非日常的な得体のしれない怪異」感が

「十五年後」で「ダンナの不倫」「毒盛り妻」という「現実的で日常的な俗っぽさ」に落着してしまってるというか。

前半怪談話だったのに後半昼ドラサスペンスになってるというか。


消えた「ジャスミンの花のヘアピン」って結局なんなの?とか


>追憶 ―十五年後―


「追憶」って事は主人公の茉莉花は更に未来の視点で語ってるの?とか


>私は見知らぬ女性に話しかけられた。


なんでこの女わざわざ不倫相手の男の妻である主人公に近づいて来たの?とか


>土間には夫の靴。この時間の帰宅は珍しい。


「珍しい」のになぜこの日に限っておあつらえに帰宅してるの?これも怪異パワーなの?とか


>冷え切った体を温めるため、シャワーの温度を上げた。


うん、これ怪談じゃなくてサスペンスのシメだよねとか


話の本筋とマッチしてるようでマッチしてない「それっぽい」だけの要素があちこち差し込まれてたりとか確かに迷走感があります。


一番の問題はやはり「ホラー」の肝である「恐怖」がはっきり提示されていないというか「どういう怖さの話なのか判らない」点でしょうか。


「コインロッカー」や「赤い部屋」なんて今や古すぎるネタ化した怪談でもオチが示された瞬間にそれまでの語りで振りまかれた「薄気味の悪さ」が一気に全て繋がって「恐怖を引き起こされる」に落着する形になってますが、この話はそれが無いんですよね。


最期の「毒盛りジャスミンティー」見ても「うわーそーだったのか怖っ」ってならないで「え?あ、はい。何か体裁は整ってるけど“あらすじ”見て期待したのじゃない」ってなるという。

こうなると茉莉「禍」というタイトルもハードル上げた結果名前負けしてる感が出てしまったという…。


        ▲△▲△▲


感想分析:

✕サブタイトルが謎

〇マリカの狂気に気付いた

✕あらすじを読んだ「期待」に応えていない

✕前後のリンクとジャスミン縛りに捕らわれすぎ

✕怖くない

✕怪奇譚からサスペンスへの変化が不自然

✕どういう怖さの話なのか判らない

✕タイトルも名前負け


 うむ、滅多切りですね。(吐血)

 サブタイトルの疑問については、島本さんも触れてましたが、ここまで誤解されるなら、謎めかせるよりシンプルな方がよほどマシだな、と思ったり。


 ヘアピンはともかく、不倫女が何故家に来たのか?とか、旦那は何故家にいたの?については、作者的には想定内なのですが、短くまとめるために端折ったのが見事に裏目に出てる感じですね、この場合。まあここは、ボリューム増やして描写すれば問題ないと思いますが、サスペンス部分の盛り上がりが全く通用していないのは……ああでも、ISはドラマとか見ない口なので、ここは多少評価を差し引いて考えるべきかも。とはいえ、最後にパンチが届いていないのは悔しいので、何かしら強化すべきだなとは思います。


 後はTとも共通する部分ですが、「ホラー➡サスペンス」が良し悪し以前に全く受け付けられていない、という部分が一番の問題ですね。この二人の感想が揃うことはあまりないのですが、今回そこは見事に一致してました。「ホラーで始めた話はホラーで終わらせろ」という圧を感じます。ホラーにここまでこだわりがあることを、今回初めて知りましたw

 

 改善で納得してもらえるか、かなり怪しいラインに思えますが、まあ万人が楽しめる作品というのは、ことホラーでは難しいのではないか、と今は思えます。作者のエゴを捨てることなく、最大限まで読者に配慮する。それ以上は高望みというものでしょうか。創作には諦めも肝心です。



▼後輩N(例の後輩)


 いよいよ最後の感想。

 ラスボスは当然、例の後輩こと後輩Nです。

 後輩Nについては、雑話の最初に書いた「梶野カメムシって、誰?」を読んでいただくのが一番ではないかと思います。

https://kakuyomu.jp/works/16817330654869504941/episodes/16817330654869701627


 後輩Nも、大学文芸部から続く腐れ縁です。

 外面はいいのでサイト活動時は人気あったようですが、梶野に突っ込む時は一片の容赦もない鬼、いやもっとタチの悪い悪魔のような上位存在です。「辛辣だが的確」という最悪なNの罵倒に耐えた日々が梶野を育てた……とは考えたくありませんが、その一面がないとは言い切れません。それこそ、忠告されたことを数年経ってようやく理解する、なんてことがあるくらい卓越した読み手なのは間違いなく。「神眼」とかほざくのはどうかと思いますが。エンタメに限れば、私の方が上手い自信あるし。(小声)


 ともあれ、Nの得意ジャンルは文学とホラーで、特にホラーについては一家言ある人間です。そこを盗みたいからこそ始めた後輩コンペですし、こんな反省会をするはめになったのもこやつのせい。始まりにして終わり。締めくくりはやはり、この人の感想が相応しいかと。

 ということで、後輩Nの感想です。

 あ、最近のもの除いて、応援コメントはあらかた読んだ後に書かれたものと思われます。そのつもりで読んでいただければ。



        ▼▽▼▽▼


ヒロインの名前がマリカなのにタイトルはマツリカなのはなんで?私なら揃えるし、そもそもルビも振らんな。初読で?と思わせて、後でああの方が良い。


あんたの感想への返信見るに、ヒロインは復讐心を秘めて毒の茶を隠し持ってる。なのに部下を名乗る女が現れた時、まったく警戒心を抱いてないような心理描写が続くのは、直後に夫と女の不倫場面を目の当たりにしても驚いてない様子からして違和感。この描き方だと、出会いの時点で薄々予想してたことになるし、なのに家に誘うって行動からは「罠にかかりやがった!」ぐらいの感情を読み取らざるを得ない。ヒロインの行動が一人称にもかかわらず矛盾して見えてしまって、共感出来ないって問題以上に真実に近寄れない感が読んでてもやもやする。


あんたの感想への返信読むと、ヒロインは過去の体験について「トラウマ化していて普段は忘れてる」と書いてるけど、なら毒を常備してるのは何故?

結婚が過去のトラウマを呼び覚ましてヒロインの人格を変えた(実は謎の女の怪異よりもそっちの方が実際にあるだけに怖いよなとも読ませられる。ドールハウスの怪談の作者、ロバート・エイクマンは、怪異現象そのものではなくそれを体験する前と後で登場人物の考え方が明らかに変わっているそのリアリティの巧みさをこそ評価されてるし)のなら、その辺りをうまく描写しないと話全体に矛盾が漂う。読む人読む人から突っ込みがあるのは、やっぱりその矛盾に引っ掛かるからじゃないかと。まあこの長さの話で説明臭させずに書くのはかなり難しいけど。


前半の、ある種の超常現象的な怪談から、後半の地に足の着いたヒューマンホラーって展開は、本来悪くないとは思うよ。物語としてはキレイだし、現に橘さんの評価は悪くなかった。今挙げた点を整理して磨きこめばかなりハイレベルの奇談にはなるだろ。


ただ、あらすじや前半読んで期待してたベクトルのホラーにはならないな。それはもう、仕方がない。


「復讐心により誰も飲まない茶をまめに取り替えるほど復讐に手間をかけてる」ヒロインは、常時復讐が心にあるはずなのに、部下女に会った時に身構えないのは(そう見えない描写)ロジック的に破綻してる。

ヒロインが二度目?に女に会った時の本心を、そもそも作者自身は正確に想定してる?想定が曖昧だった=肝心なとこの煮詰め方が足りなかったのでは?


いや俺は想定してんで!っていうなら、筆力不足で伝わってこないと断じざるを得ない。


        ▲△▲△▲


感想分析:

✕マリカなのにタイトルはマツリカで変

✕後半、ヒロインの行動が矛盾している

✕一人称なのに本心が見えずもやもやする

✕「トラウマは普段は忘れてる」のに毒常備は謎

・「ホラー➡サスペンス」は間違ってはいない

〇物語としては綺麗

✕期待したベクトルのホラーではない

✕ヒロインに復讐心が見えないのは破綻

✕ヒロインの心理の煮詰め方が足りない


 ぐはッッ!(喀血)

 五カ月ぶりに読んでも抉られますね……これが怖くて、年末まで反省会やれなかった気がします。とはいえ、この禍いは今年で終わらせねば。


 正直なところ、私が反論できる点は最初の「マツリカ」のタイトルくらいですね。ここは納得しているので変える気なしです。Nとはあらすじ段階でも名前でもめて、当初は茉莉(まつり)だったヒロイン名を茉莉花(まりか)に変えた経緯がありますから、まあ好みの違いということで。


 それ以外は、全弾急所に命中していますね。

 特に後半ヒロインの作り込みの甘さについては、「精神が壊れてるから」という言い訳の盾を貫通された気分です。確かに一人称であの言動はなしでした。ヒロインの心を隠すなら三人称にすべきでした。


 応援コメントを見た上での推理も、おそらく正しいと思われます。狂気の中にあるキャラクターの描写がぞんざいだったと認めざるをえません。手を加える時は、まずはここを一から見直したいと思います。狂気に甘えることなく、キャラクターを生かす方向で。


 あ、文中の「橘さん」というのは、梶野の数少ないX(旧ツイッター)フレさんで、Nも認めるホラーの実力派です。「茉莉禍」にも感想いただいたのですが、わりと褒められてたのが不思議だったので。


 Nもここまでの応援コメを読んでいるので、それ以外で言及すべき部分にコメントを絞っているのだと思いますが、それらを総括した上で、問題の本質を見抜いているあたり、流石と思わずにはいられません。よく読めば褒めてる部分もあるし。

 

 「期待したベクトルのホラー」については、改めて考えると、それ自体が高すぎるハードルだったのだな、と今は思えます。

 ホラーの好みは多種多様で、Nの好みすら私は知りませんでした。それでいて根拠のない自信の元、「何度か書き直せばいずれ満足いくはず」という甘い考えで後輩コンペを始めてしまった。

 問題の大元が、このホラーへの認識の甘さにあったことは間違いありません。調子に乗り過ぎていました。全読者に謝りたい。ホラーの穴とかで修行したい。



 ──以上で、読者感想の分析は終了です。

 次回、「総括と改訂」にて、このクソ長い反省会を締めくくりたいと思います。

 そしてリアル後輩たちには最大の感謝を。彼らの感想なしに、梶野作品は成立していないと、心の底から思っています。

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カメムシの小説雑話 梶野カメムシ @kamemushi_kazino

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