[企画]マツリカ大反省会 その4 感想分析(2)



茉莉禍 ―マツリカ―

https://kakuyomu.jp/works/16817330660280121722


 前回に引き続き、応援コメントにいただいた感想分析です。

 引用しませんので、詳しく読みたい方はこちらからどうぞ。


茉莉禍 ―マツリカ― 感想コメント

https://kakuyomu.jp/works/16817330660280121722/comments


 

▼島流しにされた男爵イモさん:

https://kakuyomu.jp/users/Nagashi-Potato


〇綺麗に収まったサイコホラー短編

〇マリカの狂気に気付いた

✕十五年前の出来事が謎

✕怪奇譚からサスペンスへの変化が不自然

□作者側で過去の解釈を定めるべき

□過去はトラウマによる幻覚にすべき

✕不倫女が大胆過ぎる


 どう呼べば失礼でないか毎回悩ましい男爵イモさんは、今年の「じっくり感想企画」からのご縁です。批評企画の主催も数多く、企画参加のお礼としてご批評いただきました。参加作は純文学・ナンセンス・SFと梶野とは畑違いなのですが、見識と文章力は確かな方という認識です。特にレビューは絶品で、まさにプロレベル。私もあんなレビュー書けるようになりたいものです。


 感想分析:

 全体的なまとまり、人間の歪みに焦点を変える二重底を評価いただいた上で、前後のジャンルの変化の違和感へのご指摘と改善案。当時もお返事したように、サイコホラーに統一して考えれば申し分ないものですが、やはり私は今でも、ホラー➡サスペンスの構造に可能性があると考えています。私がS・キングに嵌ったきっかけである映画「ペットセメタリー」が、まさにそうだったので。怪奇現象の説明がなされなくても、人間の狂気で物語を締めることは可能だと思います。


 ただ、それを違和感なく繋ぐ方法を当時は見出せず。あれからずっと悩んでいました。いただいた感想を何度も読み返し、リアル読者を質問責めにしたりした結果、ようやくある程度、「こうではないか」という答えに辿り着きました。


 その結論は、後程まとめたいと思いますので、ここではちょっとだけ。


 異なるジャンルを繋げる以上、読者に違和感が生じるのは当然のことです。これを完全に除去するのは不可能です。何より、ここの転調は意外性というプラスも含んでいます。評価を受けている部分でもあるので、そのプラスが減じない方法で、マイナスを減らしたいわけです。

 

 今作の問題点は、ボリューム。

 前後篇合わせて、ようやく一本の短編になるという分量が、不評の根本的な原因だったのではないか? というのが私の仮説です。

 前篇と後篇、それぞれが別の物語として、単独で読者を満足させられるなら、少なくとも物足りなさという不満は消えるはず。各話の完成度を高めて、どちらでも満足させれば、繋ぎへの違和感を、満足度が上回るのではないかと。マイナスをなくすのではなく、プラスを高めて補う発想です。


 その観点から見直すと、前篇はともかく、後篇はもっと踏み込んで物語を描くべきだったと思えます。男爵イモさんの二つ目の指摘である、不倫女の極端な行動はまさにその例で、短編だからと手を抜かず、物語に組み込むのが正解でした。舌足らずということは、書くべきものが残されていたということですから。

 何が足りていなかったのか、ようやくにして思い至った次第です。アドバイスありがとうございました。



▼さこゼロさん:

https://kakuyomu.jp/users/sakozero


✕やりたいことはわかるが、一歩足りない

✕前後の関連性がわかりづらい

□後半、マリカが女を殺し、夫は記憶喪失とか


 さこゼロさんはここプロさんのレビューから訪れたそうです。じつは去年の「じっくり感想企画」の参加者だったりします。当時、反応がなかったので印象薄いですが、拙作「異世界転生殺人事件」は、さこゼロさんの参加作から着想したもので、その意味では恩人ですね。


 感想分析:

 提案については、改めて読み返してみても響きません。

 ただ、前後の関連性については、もう少し補強の余地があるかもな、とは今思いました。具体的には、他の方から疑問が多かった「何故、マリカは少女が再び来ると思っていたのか」など。作者的にはマリカの恐怖が頭にあり、そこから自然に出た行動でしたが、読者に伝えきれていませんでした。ここは前篇の方で、再来の予兆的なフックを残しておくべきだったかもしれません。ヘアピンを「借りた」ことにして、「後で返すね」と言わせるとか。



▼白雪工房さん:

https://kakuyomu.jp/users/yukiyukitsukumo


✕前後の関連性がわかりづらい

✕前編の期待に後編が応えていない

✕怪奇譚からサスペンスへの変化が不自然

✕後編は妻、前編は自分を奪われ、論点が異なる

✕少女の正体の解答が欲しい

✕ジャスミン茶の管理が不可解

✕後編で現実に戻る点がホラーらしくない

□正体がわからないなりに理屈があるべき


 白雪工房さんは、これがお初ですね。どなたかのレビューを見て興味を持たれたそうで、細かな長文感想をいただきました。作品は読めていないので作風はわかりませんが、察するに一般小説寄りなのかなと。主催されてる感想企画を見かけた覚えはあります。


 感想分析:

 長いわりに具体性に欠けるので、読み取るのが大変ですが、他の方の不評点に被る部分が多いと見て取れます。

 「前篇で出た謎が後篇で明かされることを期待」は、読者としては当然の心理ですが、「答えが出ないのもホラー」という結論は今でも変わりません。「解らない話なりの理解のさせ方」の部分も、ルールが見えるほど怖くなくなるのがホラーだというのが私の考えです。恐怖の本質は未知なので。


 ただ、「だからあきらめろ」ではなく、前後篇で個別の満足感を高めることで、「謎は明かされなかったけど、これはこれで満足した」に持って行くのが最適解だったのではないかな、と今は思えます。


 ジャスミン茶の管理については、具体的な説明がやはり必要でしょうね。全体的に後篇の文字数を増やして、その辺りの設定の説明も作中でする方向で直すべきだと。


 改めて読み返すと、思いついた改善案で大方フォローが出来ると思えると同時に、当時はそこまで考えが及んでいなかった気がします。ご指摘に感謝です。


 

▼磨己途さん:

https://kakuyomu.jp/users/VvXxXvV


〇ちゃんと怖かった

〇短い尺の中で、底知れない怖さを表現した佳作


 最近改名された磨己途さんは、地球上にまだ数人しか確認されていない「神風VS」の読者ですw 正直感想、真摯な作風などが梶野的に同志な感じで、交流が続いています。ハードSFにラノベの皮を被せて呑ませるのが得意と見受けましたが、どうでしょう? 隙のない文章力と作品へのこだわりは、さすがのプロ志向です。


 感想分析:

 この感想は、ごく最近いただいたものですね。

 不評多数であることを踏まえた上でのお褒めの言葉、ありがたい限りです。納得いかなければ、はっきり「イマイチ」と言う方だと知っているので、この言葉には有難味があります。狙いどころが上手く伝わってるというか。

 

 ただ、磨己途さん他、通じる人と通じない人の違いはどこから生じているのか……ここはいまだに疑問で、解明したい部分ではありますね。ホラーへの先入観なのか、何かしらの嗜好の偏りなのか…… 


 高評価が並ぶ作品に低評価がつけにくいのと同様に、低評価が並ぶ作品には高評価がつけにくいものです。そこら辺も含めて、己を曲げない、とても磨己途さんらしい感想だな、とも思いましたw



▼ゆげさん:

https://kakuyomu.jp/users/-75mtk


〇前半は引き込まれた

✕前後の関連性がわかりづらい

✕前編の期待に後編が応えていない


 去年と今年、二度の「じっくり感想企画」参加者です。素直で真面目な人柄をそのまま文章にしたような、素朴な作風が持ち味。断筆を経て復活した参加作「夜宵 〜トマトと卵のラーメン〜(旧題:深夜放毒)」は、万人にお勧めできる名作です。今回はとかく遠慮しがちなゆげさんを焚き付けて、追加で正直感想をいただきました。私相手にオブラートは無用ですからね!

 

 感想分析:

 こちらもごく最近いただいた感想。というかせっついて本音を書いてもらったやつです。そうそう、こんな感じの本音が聞きたいのですよ。


 こちらの感想でも、やはり「前篇を受けての後篇」を求められるが故の違和感だと読めますね。あと、前後の関連性は、追加が必要だとはっきり悟りました。特に少女の再来については、読者にそれとわかるようにした上で、後篇に進んだ方がいいかな、と。場合によってはヘアピンの解釈を変えるのもやむなし。もちろん関連性を高めると、読者はより後篇にホラー展開を求めるようになると思われますが、むしろそれを逆利用する展開にしてみたら……? 

 ここら辺、最後のまとめで披露したいと思います。


 ゆげさん相手なので感想の書き方に軽く触れておくと、「自分ならどう書くか」を考えて改善策を提案するのは、とてもいい練習になります。仮に思いつかなくても、「自分ならどうする」と考える癖をつけておくのは、創作を続ける上で絶対に損にはなりません。


 改善案に自信がないなら私への感想だけでもどうでしょう? もちろん改善案についての感想は、ばっちり返しますけどねw



 ──以上、応援コメントの感想でした。

 皆様にご意見いただけたこと、改めて感謝申し上げます。

 

 さて、次回はリアル後輩たちの感想と分析です。

 こちらは全文引用、例の後輩Nは大トリです。

 最後は総括にて、この反省会を締めくくります。

 あと二回、もう少しだけおつきあい下さいませ。


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