[企画]マツリカ大反省会 その3 感想分析(1)
茉莉禍 ―マツリカ―
https://kakuyomu.jp/works/16817330660280121722
さて、ここからはネタバレ全開ゾーンです。
まだ未読の方は、上記リンクからご確認を。
ちょっと行間を設けておきましょうか。
……はい。それでは始めますね。
まず感想分析の前に、今作を書いた際の作者の意図について書いておきます。
振り返ると一人よがりな部分もあって恥ずかしいのですが、「こんな狙いがあった」という点を箇条書きにて。感想と照らし合わせると、伝わった点、伝わらなかった点がわかりやすいかと。
・前半ホラーから後半サスペンスへの転調で新機軸
・キーワードはジャスミン。結末も毒ジャスミン
・ヘアピンが消えることで、夢や幻覚を否定する
・後半は少女再来と見せて、マリカの狂気が主眼
・不倫女は少女ではないが、どちらとも読める
・読者が途中で気付くくらいが理想
この時点ではこれで「行ける」と判断して、今でもあながち間違いではないと思ってもいるんですが……まあ、何かしらミスってるのは反応から明らかなわけで。
改めて、寄せられた感想を読み返しつつ、反省してみたいと思います。
■応援コメントの感想
「茉莉禍」への応援コメントはこちら。
https://kakuyomu.jp/works/16817330660280121722/comments
現時点(23/12/21)で十一名。長文が多いので引用はしません。
感想のお返事はすでにしてありますので、ここでは新たな受け止め方、時間の経過で得られた別の視点を中心に書いていきます。
ちなみに感想返しはお礼をかねて丁重に書いていますが、この本文ではまるまる本音です。「正直感想返し」なので、ご注意を。失礼はないよう心がけますが。
お礼ついでにコメントいただいた方の人となりにも触れておきます。感想はくれた人の目線を知るのも大事なので。あくまで私の主観ですけど。
感想の内容は、箇条書きで簡潔にまとめました。
統計を取るため、類似の指摘は同じカテゴリ名にしてあります。詳細について知りたければ、是非リンク先を見に行ってください。そりゃもう、力作ぞろいですよw
文頭の記号は以下の通り。
〇:好評 ✕:否定 □:提案 ・:その他
それでは、ぼちぼち始めていきましょう。
▼湾多珠巳さん:
https://kakuyomu.jp/users/wonder_tamami
・ホラーと言うよりはサスペンス(寄り)
✕ボリューム不足
□繰り返し展開にしてみては?
✕展開にロジックが欲しい(ヘアピンなど)
✕旦那の処遇など、その後が中途半端
湾多さんは、カクヨムでは一番つきあい長い方ですね。梶野と同年代で、小説塾に通っておられたゴリゴリの書き手です。
雑食でジャンルを問わないのは梶野と共通ですが、趣味の音楽、SF系が一番の強みかと。正直感想を送って、一番打って響く方です。長編指向なのが短編の多い梶野と逆ですが、よきライバルだと勝手に思っておりますw
感想分析:
ホラーからサスペンスという展開には意外に違和感ない感じ。
ボリューム不足については、まあ湾多さんは短編読むと大抵増量希望する人なので、今回もそのパターンだろうと思っていたんですが、他でも指摘されたんで気になってきました。短編スタイルにこだわらず、もう少し文字数増やしてもよかったかなーとか。再生や繰り返し展開は、テーマがぶれるのでどうかと思いますが。
展開にロジック、は他でも指摘ありましたが、これは明確に反対です。少なくともヘアピンはいじらない方が吉。退魔小説に近づけると、やはり恐怖は減ると思うんですよね。経験則。
結末についてはぼかすのがベストだと今でも思いますが、文字数増やすなら、もう少し踏み込んだ描写をしてもよさそうですね。旦那の処遇をどう考えているかとか。
▼島本 葉さん:
https://kakuyomu.jp/users/shimapon
✕怖さより混乱。誰が誰かよくわからない
✕前半の独白形式が悪い。感情が見えない
✕彼女は旦那を殺す気だった?
✕ジャスミン茶の管理が不可解
✕即死性はないので、目的が見えない
✕サブタイトルが謎
✕調理法を間違えたような印象
島本さんも同年代。最近になって男性だと知りました。日常の一コマを切り取ったような短編が得意で、清流のような文章は梶野が女性だと勘違いするのも仕方がないと思いますw 趣味の囲碁題材の小説は外れなし。
凝ったストーリーより雰囲気重視の作風ですが、いただく感想では誰も気づかなかった穴を指摘されたり、侮れない読み手だと思っております。毎度、率直な感想をいただき感謝しきりです。
感想分析:
独白形式については、今は抑えた三人称が正解だったと思えます。
この詩的な文調の違和感に突っ込んだのは、後輩を除けば島本さんだけですが、おそらく正解かなと。前半と後半で文調を変えることで時の流れを強調していたんですが、絶対必要でもないですし。
旦那については、書き直したら別の結論に至るのもアリな気がしてきました。こんなのと幸せな家庭を築けるのかと考えるとねえ。共働きなので自分で稼げるし。何なら実は母親も殺してた的な過去を追加するのもオツかも。
ジャスミンの賞味期限は、完全に想定外でした。お茶って何年でも保存効くイメージあったんですが、ジャスミン茶は香りがあるから期限短いんですね。ここは逆に、ボリューム増やす際のネタになりそうです。家にジャスミンの花壇があるとか、毎年収穫してるのに何故かお茶は出て来ないとか。毎年毒を用意してるのも、偏執的でいいかなと。同時に「本来のカロライナジャスミンは弱毒だが、猛毒レベルまで濃度を上げた」とか説明入れれば、殺意の問題も解決できますし。
サブタイトルの改善は、アイデア浮かびました。前半を「十五年前のあの日」、後半を「あの日の十五年後」にすれば、どうでしょう。主体がないから謎なわけで、「あの日」を加えれば解決するはず。
▼月ノ瀬 静流さん:
✕毒を用意する主人公を理解できない
✕幼少時の恐怖は忘れてしまうものでは?
✕毒殺に至るほど追い詰められていない
✕終盤、恐怖より疑問が先に立つ
〇マリカの狂気に気付いた
〇ジャスミンがキーワードなのがよい
□小道具の色を話に絡めてみては?
月ノ瀬さんは、この雑話の「梶野カメムシって、誰?」にて、十年前に梶野が原作を務めた作品を読んでいたと名乗り出てくださった方です。
当時から執筆を続けておられて、ライフワークのSFファンタジー長編は20万字ものストックがあるとか。私が読んだのは恋愛ものの短編でしたが、積み上げた文字数に恥じない巧みな筆致は流石の一言。ご本人は大のホラー嫌いとのことですが、がんばって読んでいただいたそうで、本当にありがとうございます。
感想分析:
月ノ瀬さんの感情分析、とくに女性のそれは毎回参考になりますが、今回はホラーだからか、時間が経っても納得できないところです。展開的に狂気が必須ということもありますが。
ただ「毒殺に至るほど追い詰められていない」というご指摘については、前回以上に描写を怠っていた自覚が出ました。後の主人公に芽生える狂気を、読者に納得してもらうには、全てではないにせよ、その萌芽を描写する必要があったと今は思えます。多勢が訴える転調時の違和感は、それも一因ではないかなと。
幼いマリカが見た地獄について、もう少しばかり紙幅を割けば、後の疑問は解消され、よりスムーズに恐怖を感じられるようになる……といいのですが。
あと、冷蔵庫トラブルも、無事に解決していればいいですがw
▼SSSS.SLOTMANさん:
https://kakuyomu.jp/users/SSSS_Slotman
〇ヘアピンの使い方が上手い
✕前半がボリューム不足
〇マリカの狂気に気付いた
〇復讐譚は好き
✕生理的な恐怖、肌感覚が欲しい
数少ない「神風VS」の読者、というか自作はあらかた読んでいただけてますね。読書量とジャンルの幅広さは随一なのに、作風も感想もとらえどころのない「天才的くだらなさ」は、私程度では模倣すらできない領域。冗談交じりに適当言ってるようで、実は芯を食ってる感想には毎回うならされます。
感想分析:
当時も言いましたが、「魔少年BTの屋敷乗っ取り家族の話」の圧倒的説得力w
あれから様々な感想に触れ、今作に足りなかったのは「じらし」と、生理的な恐怖描写だと確信するに至りました。それこそ荒木の「ゴゴゴ」みたいな。その方向にボリュームアップするのが正解だったなと。
短編続きで、削ることに意識が向きすぎていたなと、今は反省しています。
「マリカの狂気こそホラー」という作者の意図に途中で気付かれる感じ、月ノ瀬さんもそうでしたが、読んでてニヤリとしました。こうでなくては。
▼双町マチノスケさん:
https://kakuyomu.jp/users/machi52310
〇前半、すごく怖くて良かった
〇消えたヘアピンが現実の証拠に残る
✕謎の少女と不倫女の関係がわかりにくい
□二人が別人ということにしては?
〇マリカの狂気に気付いた
〇ジャスミンがキーワードなのがよい
双町さんはホラー専門の書き手です。執筆歴は知りませんが、重厚かつ斬新な作風で、最近の注目株です。毎回、感想で細かく突っ込んでいる私ですが、センスは学ばせてもらっています。今作の評価にはまさにうってつけ。改めて、感想を寄せておただけたことに感謝します。
感想分析:
ホラージャンルで一目置いてる方に褒められて、当時、かなり復活した記憶があります。まさに地獄に垂れた蜘蛛の糸。ありがたやありがたや。
ご指摘はほぼ一点、「少女と不倫女は別人と明記すべき」で、当時の私の解答は曖昧でしたが、今は「明記する」方が正しいと結論しました。
ここを曖昧にするより、途中まで少女の再来と見せて、最後に別人と判明する方が衝撃的かなと。例えば毒を盛った後、不倫女のバッグをマリカが漁り、「私のヘアピンがない」ことに憤るとか。少女の正体はともかく、不倫女の正体は秘めておく必要ありませんでしたね。
この二重底の部分については、感想の中でも褒められていた部分なので、ここをより強調して結末まで持って行くのがベストだと、今は考えております。
それともう一つ。これは感想ではないのですが、双町さんの作品を読んで、ホラーにおけるねっとりとした描写の重要性を再認識したというのはあります。これも「茉莉禍」を振り返る際、大いに参考になりました。重ねてありがとうございます。
▼ここプロさん:
https://kakuyomu.jp/users/kokopuro
〇凄い作品。読後に震えた。
〇この前半から後半は想像はできない
〇マリカの狂気に気付いた
〇タイトル回収
「マインスイーパ」を投稿した十年前からフォローいただいてたここプロさんとは、偶然、カクヨムで再会した仲です。ゲーム小説からホラーまで幅広く手掛けられ、どれも人気というすごい方です。双町さんが本格派なら、ここプロさんはライトホラーの名手というイメージ。どちらも得難い指南役です。
感想分析:
過剰な誉め殺しで、参考になりません!w
いや、ホラー作品が何度も動画にされてる方に言われるのは嬉しい限りですが、額面通り受け取っていいものかどうか。「ここプロさんは何でも褒める」って後輩も言ってたしなあw このお人柄あればこその人気だと言われれば納得ですが。
ただ、ホラー書き二人が、前後の転調に異を唱えなかったのは、意外と言うか不思議で、まだ解明できない部分だったりします。ホラーに詳しい人の方が、そういう部分にうるさいかなと想像していたので。
あれから色々考えて、私が出した結論の一つは「ホラーは感覚的なジャンルで、エロに近い。好みは千差万別」なんですが、ホラー書きのお二人に通ったということは、ここを許せる共通点はあるわけで。
今はまだわかりませんが、この謎についても、いつか解き明かしてみたいと思っています。ホラー書き以外にも受け入れられる書き方を模索する意味でも。
──長くなりましたので、続きます。
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