第1話-⑥ 私の日常
私は電車から降りると、下車したドアの近くにあるベンチに座り、スクールバッグを膝の上に乗せる。
そして、ゆめかちゃんを待っている間、頭を働かせるために、スマホを操作する。
メッセージ投稿アプリのツウィターを開き、トレンド欄を見ることで日々私はリアルタイムで起きている物事を把握している。
芸能人の名前が書いてあったので、気になり、そこをタップすると数分前に投稿されたものがすぐ目に入り、その投稿には芸能人の名前の横に「死去」という文字が書いてある。
最近までテレビで観ていた人だったので、一瞬にしてズーンと重心が下がった感覚がし、自分の息が止まっていることに気がついた。
こういうときは、死去の理由に想像がついてしまう。
一度目に入った物事の内容について理解しないとモヤモヤするタイプなので、心がどんどん沈んでいくと分かりながらも、見出しとして書かれていた芸能人の名前の下にあるリンクを押し、記事を開く。
記事の中では、その芸能人の身にどういうことが起きたのか詳細は書かれていなかったが、一番下には自ら命を絶たないために相談ができる電話番号が書かれている。
以前であれば、自殺であることが大きく報じられ、かなり詳細に様子が書かれていることもあったが、最近は自殺という言葉を使わず、詳細には書かれていない。だが、相談ができる電話番号が最後に書かれており、テレビでも報じた最後にその番号が紹介されるため、書かなくても、言わなくても、分かってしまう。
報道機関は、最後にそれを書けば、言えば済むとでも思っているのではないかと最近は思ってしまう。
芸能人が亡くなったら報じなければならないとは分かっていながらも、なんだか引っかかってしまうのだ。
記事だけではなく、ツウィター上の人たちの反応もたくさん見てしまい、案の定、心がズーンと深く沈んでいってしまった。こうなると分かっていたのに、いつも同じことをしてしまう。
アプリの使用時間のほとんどを、ツウィターが占めている私のスマホが、いつの間にか「8:42」という数字を表示していた。
その数字を目にしてから数秒後に、向かいのホームの電車が到着した。
私は、スマホをポケットの中へ入れると、電車が着くと同時にベンチから立ち上がり、ホームの階段を上る。
夢を喰べるバク 大岫千河貢 @komato5manoma5
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