第1話-⑤ 私の日常
LIKEの中の、「ゆめか」と書かれているところをタップする。
開かれたトーク画面に、私は「おはよう! 35分に着くよ!」と、学校の最寄駅への到着時刻を打ち込んで送信した後、画面を閉じた。
そして、スマホを手に持ったまま、目を閉じ、体の力を抜く。
テレビだったかお母さんだったか、どこからの情報かは忘れてしまったけれど、目を閉じるだけでも睡眠と同じような効果があると聞いてから、私は少しでも時間があれば目を閉じるようにしている。
電車の揺れは心地よくて、たまに本当に眠ってしまうときがあるけれど、私も、日本人の特技“目的地の駅で目が覚める”を獲得しているみたいで、学校の最寄駅を通り過ぎたことはない。
目を閉じた状態でしばらく電車に揺られていると、手に持っていたスマホがブブッと鳴った。
ロック画面に表示されている通知を見ると、ゆめかちゃんからのLIKEの返信だった。
再びトーク画面を表示させると、「おはよう! 私は43分に着くよ!」と書かれていた。
私はその文章に目を通すと、キャラクターのとなりに「OK」と書かれたスタンプを送信して、通知がくる前と同じ状態へと戻った。
ゆめかちゃんとは、一年生のときから同じクラスと部活で、高校では一番仲のいい友だちだ。
私とは逆方向の電車で、大体私の到着時刻の方が早いけれど、毎朝一緒に登校している。
ここまで黙々と移動してきているし、今も目を閉じている状態なためか、自分のギアが入り切っていない感じがする。
学校の最寄駅から学校までそんなに遠くはないけれど、まあまあ距離があって、その間も一人で黙々と登校するよりかは、ゆめかちゃんと喋りながら登校することで、自分にギアが入れられる気がする。
どちらかがギリギリに着きそうな場合は、一人で登校するけれど、いつからかこれが、登校する際の日課となっていた。
今日もいつも通りに、私が座ってから電車は混雑することなく、平和な状態で学校の最寄駅へと着いた。
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