第1話-④ 私の日常

 地下へ下りると、流れるように改札へ向かい、足取りを止めずに改札を通る。

 そして駅のホームへ行くために、もっと地下へと下りた。

 電車の乗車位置は自分の中で決まっていて、毎日同じところに立っている。もちろん、今日もいつもと同じ乗車位置へ立つ。

 だが、乗る電車はいつも同じわけではない。

 私の最寄り駅の路線は、通勤・通学ラッシュになると二分に一本の間隔で来てくれるので、私はいつも、来た電車へと乗り込んでいる。

 二分に一本という短い間隔でも車内は混雑していて、今来た電車も外から見ただけで混雑しているのが分かる。

 私は、その混雑している電車へ乗り込んだ。

 そして、入ったドアの真向かいにあるドアの近くへ行き、スクールバッグを肩にかけながらも前に抱える。

 人とは密着しない程のスペースはあるので、バスに乗っているときよりも息がしやすくて楽だ。

 次の駅では、私がさっき入ったドアと同じドアが開く。

 この駅では、あまり人が乗ってこなくて、中へと追いやられることはない。

 そのまた次の駅では、私の目の前のドアが開き、私は乗り換えのホームへと向かうために電車を降りる。

 私がいつも同じ乗車位置に立っていたのは、この乗り換えのホームのことを考えてのことだった。

 電車のドアが開いたときに、ちょうど目の前が乗り換えのホームへの通路になるようにしているので、スムーズに乗り換えのホームへと向かうことができるのだ。

 私は、こちらへ向かってくる人たちをスイスイと交わし、同じ方向へ行く人たちの列へと合流する。

 自力で歩いてはいるけれど、この列はベルトコンベアに運ばれているかのように流れていく。

 私は、この列から外れることなく階段を下り、今日も無事に、乗り換えのホームへと運ばれた。

 このホームでも、私の乗車位置は決まっている。

 私は、下りてきた階段のすぐ近くの、電車の最後尾にあたる乗車位置へと立った。

 この路線は、通勤・通学ラッシュの時間帯だと、六分に一本の間隔で電車が来る。

 なので、運が良ければ早く電車に乗れるし、運が悪ければ六分近く電車を待たなければいけなくなる。

 発車時刻の書いてある電光掲示板を見ると、あと四分で電車がくるみたいだ。

 四分というと短い時間なのに、朝のこの時間だとすごく長く感じて、小学生の頃の時間感覚に戻った気がしてくる。

 私は、電車を待っている間に、乗換案内のアプリを開き、学校の最寄駅への到着時刻を確認した。

 はたして、四分もすれば私の後ろにはどんどんと人が並んだ。

 やっと電車が来たけれど、下車した人はそこそこいても、中にはかなりの人がいる。

 私はその中へと飛び込み、全方向から押され、スクールバッグを強く抱き抱えた。

 よくドラマやアニメで見る主婦のバーゲンセールって、こういう感じなのかなと私は思う。

 しばらく電車に揺れていると、次の駅でバーゲンセールはパタっと終わった。

 この駅の近くには大学があり、大学の授業前の時間になると、いつもこの調子なのだ。

 なので私は、毎朝このバーゲンセールに巻き込まれている。

 一駅でよかったなと思うけれど、できれば巻き込まれたくないものだ。

 私は、人の少なくなった車内を見渡し、やっと座席に着いてスクールバッグを膝の上に置いた。

 車内は数人立っている状態で、私が今朝乗ってきたものの中では一番混雑していない。

 私の学校の最寄り駅までは、あと八駅で着くのだが、乗車する人よりも下車する人の方が多く、車内でゆったりすることができる。

 そして私は、スマホを取り出し、メッセージアプリの「LIKE」を開いた。

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