米莉アルの提案
「ボクの事を大体わかってもらったと思うから、本題に入ろう。何故君に協力を求めたのか、目的は何なのか……ボクの目的はね、自分が何者かを調べたいんだよ」
……予想に反してキレイなというか、真面目な目的だと思った。てっきり、何かの悪事の手伝いを命じられるのだとばかり思って密かに戦々恐々としていたのだ。
「それはつまり、悪魔憑き以前の記憶を取り戻したいってことですか?」
「ちょっと違うかな……別に記憶を取り戻したいとは思わない。単純に誰が、何の目的でボク等を作ったのか気になっただけ。だってベリアルなんて大仰な名前を付けられているけど、実際に自分に憑いているのは何なのかさえ分からないんだぜ? 本当に悪魔なのか、それともただのマインドコントロールなのか、はたまた遺伝子改造によって生み出された人造人間なのか……」
「ああ、やっぱり米莉アルって悪魔のベリアルをもじったものなんですね」
「元々『ベリアル』とか『レヴィアタン』、『ルシファー』って呼び合っていたんだよ。他の派閥では今でもそうしているんじゃないかな、『ベルゼブブ』とか『ウァサゴ』とか。でもうちのリーダー、
早多那エル……サタナエルか。詳しくは知らないけど結構有名な悪魔だったはず。お仲間は一体どのくらいいるのだろうか。
「目的はわかりました。でも、僕の能力が何の役に?」
「さっき教えたルールで『一般人と関わった際は記憶を消す』という項目があっただろ? ボクらは存在を広めないようにするのが基本というわけだ。つまり、ボクらの事を調べようとしても情報が全く手に入らないんだ。関わった人間は記憶を消されているからね。そこでキミの能力が活きるってわけ。キミは、ボクが消したはずの昔の記憶を取り戻し、さらにレヴィやルーシーが消したはずの記憶を友人達から引き出している」
「……ああ、そっか。じゃあ僕の周りだけじゃなくて色んな人の心霊体験を確認していけば、新たな
「そういうこと。ボク等は基本的に仲間同士の事を知らないし、調べようともしない。知っているのは同じ派閥の奴らだけで、他にどんな奴が、どれだけいるか殆どわからないんだよ。だから自分の組織について情報を集める術がなかったんだけど、キミの能力なら何か手がかりを見つけることができるかもしれないんだ」
「わかりました。ただ、1つ気になった事があります。一般人の僕に、色々と喋って大丈夫なんですか?」
「…………ああ、まあ、キミが言いふらさなきゃ大丈夫じゃない? ボク自身も組織に喧嘩を売るつもりなんてサラサラないわけだし。もし本当にダメなら何らかの警告が来ると思うし、その時やめればいいよ」
「結構いい加減なんですね」
「さあどうする? 別に断ってもいいけど」
「え、いいんですか?」
「構わないよ。そうなったらキミはボク等と関りの無い人生を送ることが出来る。本当だとも、目の前で怪異に襲われていても知らんぷりしてあげるから」
「脅迫じゃないすか」
「キミにボク等なんかと関りの無い平穏な人生を送って欲しいだけさ。その先の結果までは責任持てないな」
僕は冷めきったコーヒーを飲み干し、答えた。
「いいですよ、協力しましょう」
「お、本当かい?」
「ええ、米莉さんと一緒なら色んな心霊体験に出会えそうだ。小説のいいネタになりますよ」
「なんだ、見かけによらず結構肝が据わっているじゃないか! いや助かるよ……ああ、そうそう。大事な事を言い忘れていた」
「何でしょう?」
「さっき、ボク達悪魔憑きの中に『読心とか、未来予知のような特殊能力を持った奴もいる』って言っただろ。丁度知り合いに未来予知の能力を持っている奴がいるんだけど、ここに来る前に視てもらったんだ。その結果なんだけど……どうやらキミはボクに関わると死ぬ運命にあるらしい。これから協力していこうって時に黙っているのはアンフェアだから教えてあげようと思ってね」
「…………そうですか」
「あれ、驚かない? キミは生きる希望を持ち合わせていないのかな?」
「そういう訳ではありませんけど、どうせ米莉さんと関わらなくても死ぬ運命にあるとかそんなオチでしょう?」
「なんだ、わかってるじゃないか! まあ気にするなよ、未来なんてちょっとしたことで変わるってさ。さあ、いい時間だしご飯でも食べに行こうか──」
いつの間にか外はすっかりと暗くなっていた。
ふと、今までしていた話はどれも突拍子もない話だったのにあまり動揺していない事に気が付いた。無意識のうちにこうなる事を予測していたのか、それとも疲れて頭が回っていないだけなのか……
1つ言えることは、この先小説のネタ作りには困らないということだ。
悪魔な彼女と奇妙な日常 柏木 維音 @asbc0126
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます