第5話 レクチャー
「いいか、ここは法治国家日本だ。銃器を使用した処理なんて目立つことはできない。それが必要なら自衛隊に任せればいい。俺たち”清掃業者”に求められるのは、静かに目立たず速やかに”アレ”を処理する事だ」
組織は”清掃業者”と呼ばれている。
ターゲットとなる怪物は”アレ”と呼ばれ、会話をたまたま聞いていた一般人が理解できないように徹底されているらしい。
簡易的なテーブルとイス、そしてホワイトボードが置かれた、会議室のような場所に連れてこられた総一郎。ヤマダと名乗った男から組織についての簡易的なレクチャーを受けていた。
「”アレ”の処理にあたり、俺たちが使用していい装備はこれだけだ」
そう言ってヤマダはテーブルの上にその”装備”を置いた。
「……ふざけているのか?」
真顔で問う総一郎に、ヤマダは肩をすくめる。
「そう思うだろ?それがマジなんだよ。俺らに許されている武装は本当にこれだけだ」
机の上に置かれたのは、淡い青色の作業服と帽子。厚手の軍手が一組。スコップが一つ。そしてモップが一つだ。
「俺たちは”清掃業者”だ。過度な武装は不自然だからな」
「いやしかし……スコップはわかるがモップで戦えるのか?」
当然と言えば当然の疑問に、ヤマダはニヤリと笑った。
「もちろん普通のモップじゃない。持ち手部分も一見木材だが芯には鋼鉄が使われているし、金具部分は特殊な合金で作られていて、ちょっとやそっとの衝撃じゃあびくともしない」
そう言いながら、ヤマダはその装備一式を総一郎に差し出した。
「さあ準備しなオッサン。レクチャーはこれで終わり……うちは慢性的な人手不足でね。あとは実践で覚えてもらうよ」
裁きの拳 武田コウ @ruku13
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