第77話 深まる絆、【告知】

 結構雨が降っていたから水位は増し、流れが急になった玉川上水。

  

 俺は速いスピードで流れてゆくぷるんくんに叫びながら走り出した。


「ぷるんくん!そこは危ない!早く上がってきて!」

「ぷるぷる!んんんん!!」


 だが、ぷるんくんは興奮状態が収まってないのか、流れる水に身を委ねてはしゃいでいる。


 走るにつれてだんだん息切れが激しくなる俺は走り続ける。


 鷹の台駅付近の踏切を乗り越え、ぷるんくんを追い続ける。


「はあ……はあ……ぷるんくん……絶対逃さないからな!」


 と、いまだに興奮中のぷるんくんの姿を見ながら、俺はスピードを上げる。


 しかし、時間が経つにつれて、俺はもう走ることができなるほど疲れてしまった。


「う……あ……」


 血の匂いがする。


 息を吸っても酸素が足りない。


 だけど、


 俺は走り続けた。


 普段の俺なら絶対諦めたと思う。


 しかし、ぷるんくんの後ろ姿を見ていると力が漲ってくる。


「ぷるんくん!!」


 俺は叫びながら柵を乗り越えて玉川上水の中に入る。


 流れが速い。


 下手をしたら躓いてしまうだろう。


 水位は膝くらいで、流れをうまいこと利用すればぷるんくんを追い越すことができそうだ。


 と、俺は微かに残っている力を絞り出してぷるんくんに手を伸ばした。


 もうちょっと


 あともうちょっと


 だが、


「っ!」


 俺はステップを踏み外して躓いてしまう。


 岩に頭をぶつかってしまいそうだ。


 またか……


 また……


 俺の力じゃまだ無理なのか。


 だが、


「ぷる!?」


 倒れようとする俺に気がついたぷるんくんがいきなり空気を吸い始める。


 膨らんだぷるんくん。


 これはクッション(最上)だ。


 俺は硬い岩にぶつかることなく、ぷるんクッションによって守られた。


 そして


「ぷううううう!!」


 ぷるんクッションは俺を乗せてスライム大砲を使い、空を飛んだ。


 そして、玉川上水の緑道に着地する。


「はあ……ああ……うう……うえええ……」


 緊張が解けたことで、俺は吐きそうになった。


 とりあえず、目の前のベンチに腰をかけようではないか。


 と、俺は重い足を動かしてベンチに座った。


 すると、ぷるんクッションから元の姿に戻ったぷるんくんが申し訳なさそうに地面を這ってベンチの方へジャンプする。


「んんん……んんんんん」


 ぷるんくんは疲れている俺を見ては俯き、俺を見ては俯くことを繰り返している。


「ぷるんくん……はあ……はあ……」

「んんん……」


 俺がぷるんくんを呼んでみたが、ぷるんくんは目を潤ませて頭を下げる。


 ぷるんくん……


 まるで自分を責めるようにぷるんくんはやるせない表情を浮かべていた。

 

 いや、


 むしろ俺の方が……


 俺は落ち込んでいるぷるんくんを思いっきりぎゅっと抱きしめた。


「ぷる!?」

 

 俺はぷるんくんに顔を近づけて笑いながら言う。


「捕まえた!はああ……ああはあ……あははは!」

「……」


 驚くぷるんくんに俺は語る。


「ごめんよぷるんくん。最近はずっと忙しかったから、あまり体動かす機会もなかったよな」


 そう。


 ぷるんくんはずっと広々としたSSランクのダンジョンでつよつよモンスターを狩りながら生きていたはずだ。

 

 ぷるんくんのことを考えてダンジョンにでも行くべきだったな。


 きっとぷるんくんは窮屈だったのだろう。


 牧羊犬であるボーダー・コリーを小さな家で飼ってはならないように、最強スライムであるぷるんくんにも活躍できる場を設けないといけない。


 その意味では異世界は最適の場所だ。


 燃えるミミズは元々魔界に住む上位モンスターだ。


 なのにレベルは595。

  

 きっと、異世界ではぷるんくんが見たことのない強いモンスターもいっぱいいるはずだ。


 そして、俺もいずれ……


 俺はもっとぎゅっとぷるんくんを抱きしめて言う。


「ぷるんくん、これからは旅をするよ。ずっと旅をするよ。異世界に行ってバイクに乗って移動したり、見たことのない強いモンスターを倒したり、美味しいものをいっぱい食べたり、いろんな人たちにあったり、そして……」

「ん?」

 

 ぷるんくんがはてなと小首を傾げて続きを促す。


「そして……俺も強くなって、ちゃんとぷるんくんと会話したりね……やっぱり俺、気になるんだ。ぷるんくんの過去が。なぜ十字傷ができてしまったのか」


 俺の話を聞いたぷるんくんが何か嫌なことでも思い出したのか、目を瞑ってブルブル震える。


 俺はいつものように、ぷるんくんを撫でながら言う。


「大丈夫。怖がらなくていい。俺がそばにいるから」

 

 心が痛くなる。


 俺は玉川上水でぷるんくんを逃してしまった。


 それだけじゃない。


 俺はこれまでぷるんくんのそばにいてあげられなかった。


 本当に、俺の言葉には重みがない。


 神様の瞬きに消えてしまう泡沫のように軽くて儚い。


 だが、


 ぷるんくんの表情がだんだん明るくなり、俺をまっすぐ見つめる。


 そして目を『^^』にして答えた。


「ぷるん!」


 俺はそんなぷるんくんをまたなでなでしながら口を開く。


「花凛と一緒に頑張ろうな」




X X X


数日後



 俺と花凛とぷるんくんは異世界へと旅立った。










追記



これで一章が終わりました。


こんなに長く書けるとは思いませんでした。


単行本二冊の分量です。


今まで書いたどの作品よりもエネルギーを使ったなって感じですね(書きながら感極まって泣いたことも……)。

 

現在、この作品『昔助けた弱々スライムが最強スライムになって俺に懐く件』はアルファポリスの第3回次世代ファンタジーカップに応募中でございます。


意外なことにアルファポリスでもたくさんの評価をいただくことができました(ぷるんくんはかわいかった)。


落ちることになっても、他のコンテストに応募するつもりです。


ぷるんくんの過去を描いたストーリーは既に頭の中にあります(とても悲しい物語です)。


今のところはちょっと疲れたので一旦休んで、インプットをしまくってから次回の話とか他の作品などを書きたいと思います。



やるべきこと


①今までご指摘をいただいた誤字脱字を修正する

②休みながらインプットもしながらファンタジーカップの結果を待つ

③いろんなサイトにもあげて、ぷるんくんをより多くの読者たちに知っていただく



 くらいでしょうかね。

 

 これまでついてきてくれた読者の方々には本当に感謝しかありません。


 ありがとうございます。


 いつもコメント読んでおります。


 それと、今回のカクヨムコンテスト8にて私が書いた『悪役がいっぱい出てくるエロゲのキモデブ悪役貴族に転生した。痩せて、破滅回避し悪役達による犯罪を未然に防いでスローライフを目指す』が漫画賞を受賞しました。


 もしよろしければご一読お願いいたします。


 私の読者には学生さんも社会人も自営業者も主婦もフリーランスの人もニートさんも病気にかかった人も既婚者も未婚者も人に言えない事情を抱えている人も鬱になった人もいると思います。


 どうか私の小説を読んでくれる読者様にいいことがありますように。


 長くなってすみません。



 

ーなるとしー

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昔助けた弱々スライムが最強スライムになって俺に懐く件 なるとし @narutoshi

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