夜が消えた日~Don't Wanna Sleep!~
ケーエス
夜が消えた日×ラジオ
『Gooooood Morrrning! おはようございます! 時刻は朝0:00を回りました! お元気でしょうか! DJのマキシマム尾田でございます!』
今日も1日が始まった。ボクはいつもラジオと共にある。
ポットで湯を沸かす。ポットから出るもくもくとした水蒸気を見ながらDJの話に耳を傾ける。
『いやあ昨日は歴史的な勝利ということで、みなさんもうお疲れだと思いますけども、今日も頑張っていきましょう!』
そうだ、確かに昨日は試合だった。全然見ていなかったなあ。見てしまうと興奮しすぎて寝てしまいそうになるから。
『さあ1曲目は No Bed Monstersで行きましょう、Don't Wanna Sleep!』
眠らないでいてくれよ 眠ったらいけないよ
24時間踊り続けるのさ Yeah
ゴリゴリのロックが流れてきた。いいね。足が自然と動きだす。このラジオは元気な曲をたくさん流してくれるから眠らずに済むんだよね。
チン! トースターがジングルを奏でる。パンが焼けた。香ばしい香り。今日はメロンパンとホットドッグ、大好物の組み合わせ。
パンの熱さに顔をしかめながら取り出していると曲が終わった。
『さあ聞いていただきましたけども、ふわああ』
あくび!? 思わずメロンパンを落としてしまった。慌てて口を抑える。
『ええ大変失礼しました。昨日の興奮疲れですかね。ええ、大丈夫です。大丈夫ですよ、心配なさらずに』
そう言いながらもだいぶ慌てた様子。ざわざわと胸にノイズが走る。
『えー昨日は夕方の9時に試合が始まりましてですね、11時にですね終わったんですね。ちょうどなんだ1時間前ですね。ええ、えーブットバー選手がものすごいHRを打ちましてええ。すごかったですね。ええ』
ああ。そうか。彼はもうこれで。
『えー、では2曲目に参りましょう! The Heart Beast で Forever Day Time !』
朝昼夕毎日過ぎてく 日常がとっても好きさ
再びロックが流れだした。曲はアゲアゲだけど、メロンパンを拾い上げることもせず、僕の足は止まったまま。
やがて曲が止まり、その予感は現実のものとなった。
『番組をお聞きの皆様、アナウンサーの小牧です。お知らせいたします。たった今マキシマム尾田さんが夜の世界に旅立たれました。今まで番組を聞いてくださった皆様ありがとうございました。本人に代わりましてお礼申し上げます』
アナウンサーが喋る後ろでいびきの音がした。
夜が消えた日~Don't Wanna Sleep!~ ケーエス @ks_bazz
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます