第6話 リハーサル前 三 美織という人

「おはようございます」

一年生から三年生まで全員。教室中に挨拶の声が響いた。と同時に、うらら晴美はるみが走って行き、深々とお辞儀をして挨拶した。それは俳優の高橋剣に対してというよりも、その隣にいる女性に対してという感じだった。年齢は四十歳くらいだろうか、演出家の宮原一美みやはらかずみも席を立ちお辞儀をした。玲奈もお辞儀をして挨拶している。そればかりか音響の竹内、照明の青野も彼女に挨拶している『誰?』恵人けいとは思った。慈代やすよの方を見ても彼女も知らない人のようだった。が、一応聞いてみた。

「ねえ、慈代やすよちゃん。あの人は?」

「ごめんなさい。知らないわ」


~~~~~~


「集合して!」

うららが全員に声をかけた。今日のリハーサルに係わるすべての出演者、スタッフが集まった。

「今日はプロのスタッフの方。皆さんもよくご存じの、演出家の宮原一美先生、音響の竹内先生、照明の青野先生が来られています。改めてご挨拶させて頂きますね。今日はよろしくお願いします」

演劇部全員が挨拶する。

「よろしくお願いします」

うららが続ける。

「そして、今日から時間の許す限り私たちの練習を見て頂ける方が三名来れられています。皆さん、ご存じの方もいると思いますが、『劇団クローバーみつば感』に所属していらっしゃる女優の山野玲奈さん、同じく俳優の高橋剣さん。そして、こちらにいらっしゃる方が劇団の芸術監督・演出家で舞台女優もされている綾原美織あやはらみおりさんです」

宮原一美みやはらかずみが隣から補足するように、

「うちの劇団で一番偉い人で舞台演劇界の神さまの一人だから」

綾原あやはらという人は笑いながら、

「そんなんじゃないわよ。皆さんの演技を見させて頂いて、なにかアドバイスできることがあったら、アドバイスさせて頂きますね」

微笑みながら言うのだが、隣で聞いているうららと晴美、雅也たちの緊張している姿が尋常ではない。


「じゃあ二時に開始するようにしましょう」

演出家の宮原が言う。うららが宮原に促され全員に言う。

「では皆さん、いま、一時四五分です。二時開始で行きましょう」



第六章へ続く

子羊たちは眠らない 第六章

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子羊たちは眠らない 第五章 突然キャンパスに現れた衝撃 玲奈 KKモントレイユ @kkworld1983

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